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第1章‐第4話:モード転換、デビルモード

「事情が変わった。レグオズ、返してもらうぜ」

 そう言ったベゴンの表情は真剣そのものだった。

「知らないよ、そんなやつは」

 と、サラは知らないフリをした。

 が……

「嘘ついても無駄だ。その結界の内側に隠してるんだろ? “(ペスティア)”」

 そのベゴンの言葉にサラは目を丸くした。

「! なんで知ってるの……」

「調査済みだ。俺らのことをかぎまわってるのもな。前に会った時から全ては分かっていた」

 ベゴンはグレミオへの任務の際に出会ったサラのことを知らない振りをしていただけで、実は何かも全て知っていたのだ。

「“(テネブラ)”。どうして礎を破壊するの。宇宙のバランスが崩れてあなたたちへの被害も大きいはず……」

「はぁ。敵にそんな事、べらべら喋ると思うか?」

「……」

 痛いところをつくベゴンにサラはただ黙って、ベゴンを見つめている。

「ま、はっきり言ってどうでもいいんだけどね、君達なんて……」

「?」

「あたしたちの目的はあくまでゴールドシルンと大監獄レクルゾーリオにあるの」

 大監獄レクルゾーリオというのは、タイラントの次に大きいとされる、世界全てが監獄になっている世界のことだ。そこには大量の犯罪者が収容され、釈放と言う事例は過去に一度も無い。ここは、宇宙全体を警備している、宇宙刑務組織“臨”だ。

「大監獄……。あそこは地獄だぞ? 何の用があるんだ?」

「敵にそんな事、べらべら喋ると思う?」

 サラはベゴンのお株を奪うように、さっきと全く同じセリフをそっくりそのまま返した。 

 それに対してベゴンは目の鋭さを増し、サラを睨みつけた。

「悪いけど、ここから先には進ませないよ。あたしが君をとっ捕まえて……終わり!!!」

 と、サラはその場から瞬間移動しベゴンの正面に現れ、頬を殴りつけた。

 瞬時にバク転でかわしたベゴンは間合いを取るためにそのまま何mか後ろに下がった。


「時間がねぇんだ。本気で片付けるぞ! ―――舞い踊り飛沫(しぶき)をあげろ、我に水の魂を……」

 ガロンが両拳を握ってそう言霊を言うと、その両拳に水のような光が纏わり付いた。その光は姿を変えて、6本のナイフに変化した。

 そのナイフは両手の指の間にそれぞれ3本ずつ挟まれ、ナイフ自身は特長的な形をした水色のナイフだ。

「さっきのはそれか……」

 と、サラは頬に付いた傷に手を当てる。

 そしてサラもその武器の特徴を見て後ろに下がる。

(形状から見て近距離でも遠距離でもいけるタイプね……。厳しいな、苦手なタイプだ)

 サラはそう考えると、ポリポリと頭を掻いた。


「行くぜ」

 ベゴンはまず、右手のナイフを3本とも投げつける。

 ナイフは強烈な速さでサラに向かって突き進んでいく。

 サラは高くジャンプしてそのナイフを全てかわした。

 が、ベゴンは残りの左手のナイフを全て空中のサラに投げた。空中で身動きが出来ないところを狙ったのだ。

 だがサラもそう簡単にやられるわけはなく、空中で体をねじって全てのナイフをかわした。

 そしてそのまま急降下し、ベゴンに拳をつきおろす。

「!」

 激しい砂煙が舞い上がる。

「感触が……」

 サラにはベゴンを殴った感触が無かった。というよりかは、何か別のものを殴ったという感じがした。

 サラは地面に降り立つと、自分の拳を見つめる。

 その拳には、水が付着していた。

「水?」

 すると……その水は徐々に拡大していき、サラの周囲に広がり、纏わり付いていく。

「くっ」

 サラは水を殴るが、何の効果も無い。そもそも水には打撃は効かないのだ。

 そして水は鋭いベゴンのナイフに変化した。そして、サラの体を切り刻んでいく。

「痛っ!」

 サラはジャンプしてかわそうとするが、そんな隙はなく、その場で身構えるしか出来なかった。

「このままじゃ……死んじゃうじゃん。―――モード転換! デビルモード!」

 サラの体から大量の気、オーラが噴き出す。サラの髪の毛は上昇するオーラと共に少しだけ逆立っている。

「ダァ!!!!!」

 サラが両拳に力を入れると、周囲のオーラと共に水が遠くにはじけ飛ぶ。

 そして徐々にサラが姿を変え始める。

 サラの体は大きな獣に変化し、胴体からは2つの頭が生えた。それはまるで三ツ首の番犬ケルベロスのようだ。だが、サラの場合は犬ではなかった。中央の顔は額に星印が入っている。

 見た目は……猫だ。

 世にも珍しい三つ首の猫だ。

 そして手には、炎の灯った三叉の矛が握られている。


「フシュゥゥゥゥゥゥ……」

 サラ?は静かに唸り声を上げて、周りを見渡している。

「痛ぇな……」

 その時、吹き飛ばされた水が一箇所に集合し、ベゴンへと姿を変えた。 

 ベゴンはわずかに体に傷を追っているのが分かる。

「猫か? いや……ケルベロス? でも顔は猫……だよな」

 ベゴンは顎に手を当てて考え込む。

「フシュゥゥ。燃やし尽くしてやるニャ」

 真ん中の首がそう話す。

「ニャ? やっぱ猫だな……。ってより、お前は別の生物なのか?それともさっきの……サラだっけか? どっちなんだ?」

「サラの心の中の存在だニャ。我が名はハボリュム」

「へぇ」

 と、ベゴンは興味深そうな顔でハボリュムを見つめている。


―――その頃、廃墟の中では……

「なんや、外が騒がしいな」

 カイムとTVゲームをしていたワァプラが3階から外の方角を見つめる。

「この感じ……アイムか。何かあったのか」

 カイムが神妙な顔つきになっていく。

 すると、

「“鏡”と戦っている」

 階段をガミジンが上ってくる。

「“鏡”!? 手助けしないでいいのか?」

 カイムがコントローラーから思わず手を離してしまう。

「今ここの結界を解いたら敵は間違いなく、結界の術式を解析するだろう。そうなれば危険だ。それに……アイムはもうあの状態だ。生け捕りにしてくるだろうな」

 ガミジンの言葉に納得したカイムとワァプラは何度か頷いた。

「でも……相手は相当なやり手だ。簡単にはいかないはずだ」

 ガミジンがそういうと、1回TVの画面を見て下へと降りていく。


「……! あっ! てめぇ、いつの間に!」

 カイムがゲームの場面に顔を向けたら、すでにカイムの操作するキャラはワァプラのキャラにやられていた。

 カイムが話してる内に、ワァプラは倒していたのだ。

「奢り決定やで、カイム」

「くそっ」

 ふてくされたカイムは足を組み、その場に強く座り込んだ。



―――そして、外では……

「はぁ、はぁ……。なんて強さだ、この猫野郎」

 ベゴンの体は火傷のような跡がたくさんついている。他にも引っ掻かれた様な傷も付いている。

 逆にサラの心の存在・ハボリュムにはいっさいの傷が付いていない。

「いくら水でも我の炎を消すことは出来にゃいニャ」

 中央の顔がそう言う。どうやら、左右の顔は話さないようで、ただの飾りのようだ。

「それじゃ、止めニャ〜」

 ハボリュムは鋭い切っ先の三叉の矛を持ち上げる。


 だが、危機を察知したベゴンは闇の渦を出現させると、急いでその中へと消えて言った。

「ニャ……」

 少し、落ち込んだような表情になったハボリュムは体から赤いオーラを噴出して、サラの姿に戻った。


「ふわぁぁぁぁ〜。疲れた……。あいつ、強いな。猫ちゃんでも一撃しとめられないなんて……」

 サラのいう猫ちゃんとは、ハボリュムのことだ。

 その言動から、ハボリュムの強さが理解できる。



―――“鏡”のアジトに戻ったベゴンは痛む傷口を押さえながら、ある一室に入っていく。

「戻ったか、ベゴン」

 その部屋にはどうどうと足を組んで椅子に座ったグノウがいた。

「……」

 ベゴンは無言のまま部屋をドアを閉めた。

「何か成果はあったか……?」

「はい……。どうやら“(ペスティア)”の目的は、ゴールドシルンと大監獄レクルゾーリオにあるようです」

「なるほど……やはり復讐か……。―――ベゴン、下がっていいぞ。しばらくはその傷を癒すことだな」

 グノウはニヤリと笑うと、少し間を空けてベゴンにそう言った。

 ベゴンは無言のまま、部屋を出て行く。


 部屋を出たベゴンは傷を抑えながら、自室に戻っていった。

「くそっ!」

 どこかイライラしているベゴンは、ベッドに思い切り拳をたたきつけた。

「あんな、猫に負けるのか……。俺もまだまだだな」

 ベゴンの瞳には、少し悔しさがにじみ出ている。

「もっと強くなってやる。例の計画のためにもな……」

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