表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/20

第1章‐第2話:強襲の追っ手

「れ、連行?」

 レグオズはサラの顔を丸い目で見つめている。

「君、“(テネブラ)”の一員だよね。服は前と違うみたいだけど……」

 サラは落ちた赤い眼鏡を拾い、服に付いた砂を振り払いながら立ち上がった。

「でも俺はもう“(テネブラ)”は抜けたんだ! 俺にはもう関係ないんだ」

 レグオズも服を払いながら立ち上がり、サラに背を向けた。

「つまり君はもう“(テネブラ)”の敵ってワケだ。なら別に情報をくれてもいいんじゃないの?」

 レグオズは痛いところを付くサラに何も返せなかった。サラの言っていることは最もだ。

「分かったよ……。でも、どこに行けばいいんだ?」

 これはもしかすると、どこかに住み着くチャンスかもしれないと思ったレグオズは、素直にサラに従うことにした。

「ゴールドシルンってとこ。宇宙列車に乗らないといけないけど……君はここに何で来たの?」

「闇の渦で来た」

「やみの……うず?」

「知らないのか?」

 そもそも闇の渦は“(テネブラ)”専用の移動術だ。外部者のサラが知るはずが無い。

「知らないよ。じゃあやって見せてよ。タイラントの場所は分かってるんでしょ?」

「タイラントって……」

「前、わたし達があった場所!」

 その言葉でタイラントの場所は思い出したが、闇の渦は自分で出した経験が無い。やり方もわからないから出来るはずが無い。

「そ、それが今はもう出来ないんだ!」

「ん? 組織を抜けたから?」

「そ、そう」

 レグオズはとっさに嘘をついた。でもそれは本当かもしれない。組織を抜けたことで組織専用の技が使えなくなる。それは十分に考えられることだ。

「まぁいいや。着いてきて、宇宙列車に向かうからさ」

 レグオズはコクリと頷いた。

 そしてレグオズはサラの少し後ろを歩き、宇宙列車のある北方面へと向かっていった。

 

 暫く無言のまま歩いていると、サラが横目でレグオズを見ながら話を切り出した。

「ねぇ、君名前なんていうんだっけ……」

「レグオズ……。でも、本名は知らないんだ」

「? どういうこと?」

 サラは一旦その場で立ち止まり、レグオズに体を向けた。

「俺には……過去の記憶が無いんだ。あるのは1ヶ月前、“(テネブラ)”に入った時からのことだけ」

「全く何も覚えてないってワケ?」

「最近になって……ちょっとだけ思い出し始めた。頭に嫌なイメージとか、知らないはず単語が出てきたりしてる……」

 するとサラは顎に手を当て、目を右下に下げると少し何かを考え込むように俯いた。

(もしかすると……)

「ねぇ君。その嫌なイメージについて詳しく教えて。それと、その単語も」

 サラは顔を上げると、そう言った。

 サラは何かが引っかかっていた。その、「もしかすると」という言葉を決定付けるには本人に確認するしかない。

「わ、分かった。―――――」

 レグオズは、誰かが親であろう人に刃向かっていたということと、フィングという単語が出てきたということをサラに全て話した。


(こりゃ、大変なことになってきたぁ……)

「フィングって何か知ってるのか?」

「……知ってる。全てはゴールドシルンに行けば分かるわ」

 サラの脳内で全ての点と点が繋がった。そして理解した。レグオズの正体も……

「でも……。やっぱいいわ。タイラントにはわたし一人で行く。君はもう帰っていいよ」

 サラの突然の心変わりにレグオズは驚きを隠せなかった。

「何でだよ!?」

「気が変わったの……。じゃあね」

 そう言うとサラはレグオズに背を向け、猛烈なスピードでその場から去っていった。

 レグオズは引きとめようと手を伸ばしたが、そのスピードには触れることすら出来なかった。


(一旦、戻らないと……。まさかあの子が……)

 サラは猛烈なスピードのまま、遥か彼方に消え去っていった。



「行っちゃったな。でもアイツ、俺のこと知ってるんじゃないのか? 表情も変わってたしな……」

(なぁガロン、お前もそろそろ教えてくれたらいいんじゃないのか?)

『―――』

「ん? まただ……また俺が心を閉ざしてるのか?」

『―――ろ……』

(え?)

『逃げろ、レグオズ!』

「!」

 ガロンの苦しそうな叫び声を聞いて、レグオズは心を驚かせた。

 そして、ふと何か威圧感を感じ後ろを振り向くと―――

「ティーゴスト……と、誰だ?」

「ここにいましたか、レグオズ」

「俺と話すのは初めてだな、元組織員……。俺は第5の組織員ニグゲクだ」

「何だよ、俺はもう“(テネブラ)”は抜けたんだ!」

「そんなこと知ってますよ。今日は少し話がありまして……」

 ティーゴストは何やら神妙な顔つきに変わって、

「死んでください、レグオズ」

 そう言い放った。

 レグオズはとっさに危機感を感じ、後ろに下がった。

「指令が出たんだ……裏切り者は排除せよってなぁ!」

 エグゲクは驚異的なスピードでレグオズの前まで移動すると、握った拳でレグオズの顔を殴った。

 レグオズは突然の出来事に動くことが出来ずに、なす術なくその場に倒れこんだ。

「っつ……」

 レグオズは殴られた右頬を押さえながら、ゆっくりと立ち上がった。


「くそっ! 煌めけ、光の魂を……。――――え?」

 武器が出ない。

 という以前に、光の一筋さえ現れない。

「ふふふ。無駄ですよ……。あなたの武器は封印されています」

「!? 封印? だからガロンの反応が鈍かったのか……」

 元々レグオズの武器はガロンが核となって出来ている。武器が封印されているということはガロン自体も封印されているということと同意なのだ。

「では、無残に殺してあげますよ。―――進む針に戻る針、我に時の魂を……」

 ティーゴストのかざした両手が紫色に輝きだす。

「俺も行くぜ。―――沈め、そして堕ちろ、我に影の魂を……」

 もう一度レグオズと間合いを取ったニグゲクは、右腕を前に突き出しそう呟いた。するとその右手に、灰色の薄い光が纏わり付く。

 そして、ティーゴストの手には鏡、ニグゲクの手には大鎌がそれぞれ現れた。

「まずは俺からだぁ! シャドウ・シックル!!!」

 ニグゲクは灰色で見るものを恐怖させるような大鎌を頭上で振り回し、体の前で一閃。振り切った。

 鎌からは黒い斬撃が飛び出し、レグオズを襲う。

「!」

 レグイズは何とか横っ飛びでかわしたが、そのかわした先にはすでニグゲクが死神のような表情で待ち構えていた。

「死ね」

 ニグゲクはその場に座り込んでいるレグオズに鎌を振り下ろした。

「!!!」

 鎌は何とかもう一度横っ飛びで逃げたレグオズの左肩を切り刻んだ。 

「っつ……」  

 レグオズは痛む左肩を抑えながら、その場にしゃがみこみ、ニグゲクに体を向けた。

 レグオズの顔は汗でまみれ、その汗からはレグオズの焦りが確認できる。

「相手は……ニグゲクだけじゃありませんよ」

「!」

 レグオズが後ろに体を向けると、そこには両手で鏡を体の前に持ったティーゴストの姿。

 レグオズは間合いを取るために後ろへ下がったが、またその後ろにはニグゲクが待ち構えていた。

(くそっ。挟み撃ちになった……)

「ジェネラル・ミラー!」

 そう唱えたティーゴストの鏡から紫色の不気味な光がレグオズに放たれた。レグオズはまた横っ飛びでかわそうとしたが、左肩の傷が思ったよりも深く、痛みでその場から動けず光に直撃してしまった。

「!」

 だがレグオズの体には傷など何も出来ず、何も変化は無かった。

(不発?)

 そう思ったレグオズは今のうちと、この場から回避しようとした。

 が、動かない。髪の一本さえ動かない。声も出ない。

 レグオズは完全にまるで石のように固まってしまった。

(……な、何だよコレ……)

「へっ、ジ・エンドだ」

 ニグゲクが思い切り鎌を振り上げる。

 そして―――

 非情にもレグオズに鎌が振り下ろされた。

 鎌はレグオズの左首部分から腰まで斬り下ろされた。

 そして、その時ようやくレグオズの体が動くようになった。

「ぐはっぁ!」

 レグオズは動くようになったと同時に体に、耐え切れない激痛が襲った。

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 あまりの痛さに絶叫し、その場へ倒れこんだ。

 レグオズの体は左半身のさらに半分が腰まで切られている状態。左腕は胴体から切り離され、無残にもそれは地面に落ちている。

 レグオズの額から信じられないほどの汗、口からは大量の血、斬られた部分からも真っ赤な血が溢れ出ている。

「はぁはぁ……うっ、くっ、ぐはっ……くっそ……」

 レグオズの言葉はもう言葉でなくなっている。

 そんな無残な姿になったレグオズをティーゴストとニグゲクの二人は、哀れみの目で見つめている。

 


――― 一方その頃サラは、宇宙列車の乗り場をあっという間に通り過ぎ、この世界の外れにまで来ていた。

「ふぅ」

 サラは急停止し、額の汗を服でぬぐった。

「はっ!」

 サラは空間に右手を突き出すと、徐々に空間が歪み、何やら大きな建物が現れた。

 サラはその廃墟のような建物の扉を開けると、中に入っていった。

「あっ、お帰りアイム!」

 緑色のショートの髪で、サラと同じくらいの年の少女が、高いところから飛び降り、サラに歩み寄ってきた。

「今はサラって言ってよ、ベリト。ところでガミジンはいる?」

「んー、さっき出てったよ。何か新しい仲間、って言ってたかなー」

「新しい仲間なんて久しぶり……。面白い奴だったらいいけど。他の皆は?」

「シトリーは2階で寝てて、マルコは暇つぶしってどこかに行っちゃた。シャックスは晩御飯の買出しに行ってて、カイムはワァプラと3階でゲームしてるー」

「そう、じゃあガミジンが戻ってくるまで待つわ……」

 サラは疲れきった体をほぐしながら、少し古くなったソファに腰をかけた。

 緑髪の少女ベリトは楽しそうにスキップしながら2階への階段を上っていった。

「はぁ、あとちょっと……あとちょっとで……」

 サラは、そうため息を漏らした。

 


 この廃墟は未知の場所。誰にも知られることの無い、ある組織のアジト。



 

さぁ、個人的にはここらへんの話が今後の重要な鍵になってくると思います!


≪次回予告≫

ついに解き放たれる心の力

覚醒したレグオズの前に現れたのは……



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ