−17話〜?(3):記憶
「なぁ、ベゴン。エイグスはどこに行ったんだ? さっきからいないだろ?」
「それが分からないんだ。でもアイツはいつもあんな感じだから気にするこたぁねえ」
グレミオを出て、さらに北へ北へと進んでいた俺たちは、エイグスの所在について何も分からなかった。
でも今は任務が優先らしい。
エイグスは一体どこに行ったんだ?
それから数時間歩いていたらようやく次の町が見えてきた。
道はいつの間にか、芝生のような緑ではなく、小砂漠のような感じだった。でも砂嵐が起こったりはしていないから、砂漠の中でも本当に安全な所なんだろう。
「よし、見えてきたぞ。あれがホリドマだ」
ベゴンは町を指差してそういった。
「……なぁ、人がいないぞ?」
俺はいち早くその異変に気づいた。
町からは賑やかな雰囲気はもちろん、明かりなどが全くなかった。
「不気味ね。依然来た時は賑やかの町だったのに」
オゴットは昔任務でここに来たことがあるらしい。
俺は、でもそれさえ信じられなかった。ガロンが教えてくれた真相。それを思い出すたびにオゴットやベゴンのことが信じられなくなっていく。
「とにかく、どこかの家に入るぞ」
ベゴンは町に入ってすぐにあった、レンガで出来たような家に入っていった。
俺もそれに続いて入っていく。
「誰もいない」
この家はもう随分使われていないみたいだ。埃が舞っていて、くもの巣も所々に張ってる。
すると、オゴットが家の中にようやく入ってきた。
「他の家もこんな感じだったわ」
他の家を見てきたようだ。
「なぁ、こんな所に守護獣なんているのか? 絶対いるわけないよ」
俺は率直にそう思った。こんな潰れかけの町に守り神がいるってことだけで違和感がある。
「とにかく守護獣がいそうなところを探すぞ」
ベゴンは俺の話を軽く流して、この家を出て行った。
「?」
俺はそのベゴンの反応に強い違和感を感じた。前までならそんなことはなかったと思うけど、今は違う。ベゴンも悪いやつだって分かってるからこそ言動に違和感を感じる。
でも今はガロンに従うしかない。徐々に組織の目的を暴いていかないといけない。
俺もベゴン、オゴットに続いて家から出ると、町の奥に向かって歩いていった。
やっぱり人は誰一人としていない。
その時、突然ベゴンが歩くのを止めて俺たちの前に手を出した。
「待て。……何か来るぞ!」
俺たちに緊迫な空気が流れる。俺はゴクリと唾を飲んで周りに注意を払った。
そして、何かがひび割れるような音と一緒に、俺の背後から巨大なムカデの化け物が出てきた。
「! ムカデ!?」
「守護獣だ!!! よけろ、レグオズ!」
巨大なムカデは体から生えてる触手を俺に向かって数本伸ばしてきた。
俺はいつの間にか体から消えていた武器をもう一度出す暇もなく、触手に体を叩きつけられた。
「くっ!」
俺はムカデの出現と共に砂場と化した地面に体を打ちつけた。
「ちっ、やるぞオゴット!」
「えぇ!」
俺はかすかに意識が残っているみたいで、2人に目を向けた。2人はそれぞれ武器を出す動作をしていた。
するとその時、ムカデのいる方向で大きな爆発音が鳴り響いた。
俺は体をビクつかせて、そこに目を向けた。
「グガガガガッガア!!!!」
ムカデは体に大きな穴を開けて、そこから緑の血を噴出し、大きな動作で倒れた。その衝撃で建物が、瓦礫となって崩れている。
「何だ?」
「……誰かいるわよ!」
オゴットがムカデの奥を指差してる。
俺もそこに目を向けた。そこには女の子が1人立っていた。
「あなたたち! ここで何してるの!?」
その女の子には見た目からの強そうなイメージを持ってたけど、まさにその通りだった。
「それはこっちの台詞だ。お前はなんでこんなところにいる。この町の住人か?」
「はぁ? 違うわよ。なんでこんな廃墟に住まなくちゃいけないのよ?」
「そのムカデは守護獣だろ。お前は何が目的なんだ」
「助けてあげたのに何?」
俺を挟んでベゴンと女の子が言い争っている。
何か気まずいというかなんと言うか……。
「と・に・か・く! あなたたちには話を聞かせてもらうわ! でもまずは…………」
女の子はまたムカデに体を向けると、拳をぎゅっと握りムカデに向かって飛びあがった。
「ダァァァァァァァッ!!!」
女の子はその拳でムカデの顔を殴り飛ばした。
ムカデの顔は爆発音をあげて無残に飛び散った。
「ふぅ。完了!」
女の子は凄いたくましかった。ガッツポーズをすると、また俺たちに近づいてきた。
「で、この弱い男は誰? あなたたちも武器も持ってないじゃない!」
「とにかくどこか家に入るぞ……」
ベゴンはそう言うと負傷してる俺を肩に乗せて、近くの家に入っていった。
――――
「ニールス・サラ・アルハンゲリスク」
「…………」
ベッドに寝かされた俺、椅子に座ったオゴット、壁にもたれてるベゴン、全員が無言で女の子を見つめた。
「な、何よ。な・ま・え! あたしの名前!」
「長ぇな……」
「長いわ」
「長い」
ベゴン、オゴット、俺がそれぞれ言葉を漏らした。全員同じ感想だった。
「ふん! ……ところであなた達のその服装、何かの組織?」
「……いや、ただの趣味だ」
「ふ〜ん。……怪しい……」
女の子、いや、ニールス・サラ・アルハンゲリスクさんは顎に手を当てて俺たちを怪しい目で見てる。
一通りニールス・サラ・アルハンゲリスクさんは俺たちの顔を見ると、今度は腕につけてる時計を見た。
「ぁ! やばっ!」
口を押さえて小さくそう漏らした。
「ごめんだけどもう行かなくちゃ! 色んな事情はまた聞くわ。……あ! 最後に一つ。あたしは“鏡”って極悪組織に関して調査してるの。何か分かったら連絡よろしく!」
ニールス・サラ・アルハンゲリスクさんは猛烈な勢いで家を出て行った。
そして俺たちが顔を見合わせる。
「なんで俺たちの組織名を知ってるんだ。誰かが漏らしたのか……」
「とにかく一旦、戻りましょ。グノウに伝えないと」
「そうだな。レグオズも怪我してるしな。―――ハッ!」
ベゴンが家に闇の渦を出現させた。ベゴンはベッドから俺を簡単に背負って闇の渦の中に入っていく。
――― 一方その頃、ニールス・サラ・アルハンゲリスクは猛烈なスピードで小砂漠を駆け抜けていた。
「あいつらの事聞けなかったな……。でもアイツに怒られるよりマシだぁぁぁ!!!」
サラは今よりさらにスピードを上げて駆け抜けていった。
―――グノウの部屋ではベゴンとオゴットが今日のコレまでの出来事を全て伝えていた。
「そうか。ベゴン、オゴット、先の任務に関しては一時保留だ。まずはそのニールス・サラ・アルハンゲリスクという女の調査を始めろ。エイグスの行方については他のやつに任せる」
「レグオズは?」
「やつはもう役に立たんだろうな。無視しておけ」
「……暫く任務を与えないと言うことですか?」
オゴットのその問いに対してグノウは、瞬時に一言で返した。
「そうだ」
――― レグオズはあの後部屋に戻り、ベッドに横たわっていた。
「もう分からない。何もかも……」
俺は一人でこれまでのことを考えていたら疑問しか思い浮かんでこなかった。
(なぁガロン。お前、今は“鏡”に従えって言ったよな? いつかは裏切れって事か?)
「え?」
ガロンからの反応がない。いつもなら心の中で対話できるのに……
(ガロン? なぁ、ガロン!)
…………やっぱり返事がない。よく心を落ち着かせてみると、ガロンが俺から消えたような感覚になった。
「……っ!」
俺は痛む体を堪えながらベッドから起き上がった。
ガロンがいないのなら、武器は出ないはず。武器が出るならただガロンが俺を無視してるってことだ。
「煌めけ、光の魂を……………………」
反応が何もない。
「ガロン、どうしたんだ」
俺はもう一度ベッドに横になった。そして俺は目を閉じ、イロイロ考えた。
このまま組織にいてもいいのか。
いっそ逃げたほうが楽なんじゃないか。
記憶が戻る気配はないし、“鏡”は悪いやつらって知った。
あのサラって女の子も極悪組織って言っていた。
もうそれは確実だ……。
「どうしたらいいか分からないよ、フィング……。―――!!!?」
俺は今無意識のうちに言葉を漏らした。
フィング。どこかで聞いたような名前だ。
もしかしたら本当は記憶が戻りつつあるのかもしれない。過去の記憶が……
さぁ、ここから一気にショートカットに入るかもしれませんよwww
今、−17話ですから一気に進む可能性があります。
個人的に一番好きなキャラが出来ました!
サラです!
名前を覚えるのは大変ですねwww