−17話〜?(2):意識の変化
グレミオを歩き回っていた俺たちは、町で一番目に付いた十字架マークの建物の前に立った。
町の人たちは俺たちの異様な服装を見ても、不思議がることはない。そういう世界なんだろう。
「ここからチカラを感じる。ここに眠ってんだろうな、守護獣は」
ベゴンはそういうと、両開きの大きなドアを開けた。
中はまるで教会みたいだった。教会は昔にも見たことがあるようだ。そのおかげでここがどのような場所かを理解することが出来た。
見る限りでは中にはほとんど人がいないようだ。
俺たちが中に入ると、喪服のような服を着た40歳くらいの大人の男が近寄ってきた。神父だろうか?
「なんのようでございましょうか。大天導獅様なら不在でございますが……」
「大天導獅になどには興味がない。俺たちが聞きたいのは、守護獣の事だ」
エイグスがすっとベゴン前に出て、男にそういった。
「我々の守護獣様はヴリトラ様でございます」
「どこにいる?」
「今はこの清らかな聖堂の奥・清めの石像にて眠っております事でしょう。何とも近く災いが起きるそうで……」
「……すまんな。その災いは、近くじゃないな。今からだ」
「?」
エイグスは突然鬼のような形相になると、神父を右手で思い切り殴り飛ばした。
神父は吹き飛び、立ち並ぶ椅子に体をぶつけた。
凄く痛そうな顔をしている。
「キャーー」
中にいた、人たちが悲鳴を上げてる。
俺は、その悲鳴を上げる顔を見て、頭が混乱し始めた。
「はぁ……はぁ……。まただ……」
俺の頭にまたアノ映像が流れる。
嫌だったのに、また見ることになるなんて……
幸い今回は頭痛はない。俺は強く目を瞑り、必死で違うことを考えようとしたけど無理だった。
ちょっとしたらあの映像は突然流れなくなった。
「出て来い、守護獣!」
エイグスが石像に向かってそう叫んでいる。
すると、女神の姿の石像から浮き出てくるように何かが出てきた。
出てきた何かは大きく長い体をくねっている。見た目は完全に蛇だ。赤い目とチョロチョロと舌を出している。みためは守り神って言うよりかは悪魔っぽい事に、俺は違和感を感じた。
「キサマラ、何者ダ! 我ニナンノヨウダ!」
「レグオズ、倒せ。こいつは見たところ、完全の起きていないようだ。叩くなら今のうち……」
そうは言われて俺は武器の出し方を知らない。
俺は大人に頼る子供みたいに、ベゴンを見た。
そしたらベゴンは、
「解放の仕方はお前の心が知ってる。聞いてみな」
とだけ言った。
「心…………ガロンか!」
俺は目を閉じてガロンとの対話を始めた。
『久しぶりだなレグオズ。早速戦闘だな……』
(早く解放の仕方を教えてくれよ。)
『叫べ。「煌めけ、光の魂を」とな。…………ヴリトラ……』
(え? 最後なんか言ったか?)
『いや、なんでもない』
(じゃあ、また後で話しかけるよ)
静かに目を開けた俺は、ガロンの言うとおりに叫んだ。
「煌めけ、光の魂を!」
俺の言葉と共に、俺の手と腰に光が灯った。
そして2つの光は何かを形作っていく。
そして光は収束し、俺の剣と銃に変わった。
「出た……」
俺はまず、剣を両手で握った。
「キサマ、サッキ、ガロント言ッタナ?」
蛇が長い体をくねらせて俺の元へと近づいてきた。
咄嗟に俺は数歩後ろに下がった。
(この蛇、ガロンのことを知ってくるのか?)
でもガロンは俺の中の存在。ガロンを知っているはずがない。と、俺は心に言い聞かせた。
「ガロンサマをドコニヤッタ!!!」
「!」
蛇は大きな体でジャンプし、鋭い牙をむき出して、俺に向かって突っ込んできた。
俺は剣を体の前に構えたが、大きな蛇の体をとめきることが出来ずに、扉へと吹き飛んだ。俺はそのまま扉を突き破り、町の中に倒れた。
町の住人がこの出来事に驚いてるのか、口々に叫んだりしてる。
「くっ……」
俺は、右腕全体を地面で擦ってしまって、その痛みで剣を持つことが出来なかった。
でもそんなことは関係なしに蛇は俺へと再び突っ込んできた。今度はさっきより大きく口を開け、そこからは鋭い牙がむき出しになってる。
「くそっ! やばい!」
俺は動かない右腕とは反対の左手で地面に落ちた剣を拾い、体の前に構えた。
だけど結果はさっきと同じだった。ただ今回は、蛇がさっきより力を入れてきたのと、俺が左手1本だけだったことが影響して、被害は大きかった。
吹き飛んだ俺は、普通の民家であろう家に突っ込んでいった。
幸い民家には誰もいなくて、他の人に被害は出なかった。
俺はそのことに心が安心した。自分が怪我したのに他の人を気遣ってしまった。なんでだろう。
「フシャァァァァァァァー!!!!!」
外で蛇が激しく鳴き声をもらしているのが聞こえる。
「くそっ。剣じゃダメなのか……。なら……」
俺は剣を背中に差して、腰にある2挺の拳銃を手に取った。この拳銃はそこまで重くないから負傷してる右手でも何とか持てる。
俺は穴の開いた民家から出て、蛇に近づいた。
「弱イ……。ソレヨリ、ガロンハドコダ!」
「ガロンは俺自身でもあるんだ! お前の言うガロンは別人じゃないのか!?」
「ナラ聞コウ。貴様ノ知ルガロンはドノヨウナ姿カタチヲシテイル?」
「……髑髏」
「!!! ソレハ、私ノ知ル男の名ダ!」
「え……」
蛇は大きく口を開けると、激しい炎を俺に向けて吹き出した。
その頃、ベゴンたちは、その戦況をまじまじと見つめていた。
「ピンチね……行くわよ」
「待て、オゴット。ここはレグオズに任せてみよう」
一歩前に出たオゴットの前にベゴンが手を出して、止めた。
「あのままじゃ死ぬわよ? 思った以上にあの守護獣は強いわ」
「いいから……。? おい、エイグスはどこに行ったんだ?」
ベゴンとオゴットがエイグスがいるはずの教会を見渡したが、どこにもいない。そして町も見渡すがどこにもいない。
「あいつ……どこ行きやがったんだ」
―――
「火!?」
俺は火を止める技とか武器は何も持っていない。剣で火は切れないし、銃でも火を貫くだけだ。
「あっ……」
その時、俺はあることに気づいた。まだ、この2挺の銃は一度も使っていないということに……。
「ダメもとでやってみるしか……」
俺は痛みをこらえながら、右手で白いほうの銃を思い切り握り、炎と蛇に向かって引き金を引いた。
拳銃だから、弾丸が出ると思っていたけど、この武器はそうじゃなかった。
拳銃からは、白いレーザーのようなものが銃口から吹き出して、炎と蛇に向かって放たれた。白いレーザーは炎に触れると瞬時に炎を吹き消し、蛇の口の中へ直撃した。
「フシャァァァァァァァー!!!!!」
蛇はその場に倒れ、のた打ち回っている。その声から、痛みがあるということが分かった。
「効いた……」
ふと、教会のほうに目を向けると、ベゴンもオゴットも驚いた顔をしている。俺はそれを見て、ちょっと嬉しかった。俺は皆がそこまで期待していなかったと言うことは分かっていた。だからこそ、それを覆した時が余計に嬉しかった。
「フシュゥ……小僧、キサマ何者ダ」
「レグオズ」
「名ナドドウデモイイ。オ前ト一緒ニイタ3人カラハ邪悪ナル者ノ心ガ感ジ取レタガ、オ前は更ニ邪悪ナ心が感ジ取レタ。一体、キサマハ何者……ダ―――」
蛇はその言葉を最後にその場で息絶えた。よく見ると後頭部に穴が開いてる。俺の放ったレーザーは口も貫通してたようだ。
「我らが守護獣に何たる事を……」
さっきエイグスに殴られていた神父がよろめきながら外へ出てきた。
「レグオズ行くぞ、目的は果たしたからな……」
ベゴンはオゴットと一緒に俺に近づきそういって、町の出口へ向かっていった。
俺は若干神父の事が気になってたけど、その場を離れて、ベゴンたちの後ろについていった。
もう一つ、蛇の言うことも気になっていた。俺が邪悪な心を持ってる。ベゴンやオゴット、エイグスよりも……
(!!? “鏡”のしてることはまさか悪いことなのか? 俺は記憶がないからわかんないけど、守護獣は本当は神聖な生き物なんじゃないのか? それを虐殺して、礎ってやつを破壊して……。もしかしたら“鏡”は極悪な組織なんじゃ……)
『その通りだ、レグオズ。“鏡”は極悪組織だ』
(ガロン!)
俺はその場で足を止めてしまった。
『レグオズ、お前の思うとおり“鏡”は極悪非道の組織。かつて私も……』
(俺、どうしたらいいんだ? あの守護獣は俺は悪いやつって言った。ガロンならその答え知ってるんじゃないのか!?)
『今は話す時ではない。今は“鏡”に従え。いつか時が来れば……真相は見える』
(……真相)
「おい! レグオズ! 何してんだ行くぞ!」
「!」
ベゴンの声で意識を覚ました俺は、少しうつむきながらベゴンのもとに走っていった。
「まぁ、初めてだったから戸惑う気持ちも分かる。ちょっとずつ慣れていければいいからな」
ベゴンはそう優しく俺に語ってくれた。でも俺はその言葉が信じられなかった。
でもガロンの言うことは信じられる。だから、こいつらが全員悪いやつらだって事も分かっている。でもガロンを信じてるからこそ俺は言うことに従う。
そして俺はこれから……“鏡”を信じない。
ちょっと急展開ですね。
レグオズがちょっとずつ組織の極悪さを知っていく。そしてそれに立ち向かっていく。
と言うことで、非常に重要な回になる次回の予告を……
【次回】
突如消えたエイグスの姿。
突如変わるレグオズの心。
突如消えたガロンの声。
突如着いた謎の町。
突如現れた謎の少女。
全てが絡みつく時、謎は解ける。