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メイドのおしごと!  作者: 東雲もなか
お帰りなさいませ
9/18

第9話 臨時休業です。

 いつも通りフィオーレに出勤したのですが、いつものような活気はありません。

 代わりに張り紙が1つ。


[臨時休業します。  マスター]


 突然の事で戸惑います。

 とりあえずグループチャットに確認をとります。


 待っていると、数分もしないうちに千奈さんから返信が来ます。


[今日は店長体調悪いから休んで良いよ]


「マスター病気なんですか⁉」


 つい大声を出してしまいました。

 それにしても心配です。

 お見舞いのメッセージを送っても既読が付かないので重症なのでしょうか。

 単に寝ているだけと思いたいものです。


 だからといって、マスターのお宅を知っている訳でもないので、どうしようもありません。

 私は、仕方無く帰路につこうとします。


「あれ?お休みなのですね〜」


 さっきまで自分が居た場所から声が聞こえます。

 気になって振り返ると、そこには花恋(かれん)さんが。


「花恋さん。なんだかマスターが体調を崩されたらしくって」


「あ〜、そういえばもうそれくらいの時期ですね〜」


 季節の変わり目は、体調を崩しやすいと言いますが、マスターもそうだったのでしょうか?

 それくらいの時期と言うからには、常習的な出来事なのでしょう。


 私が、心配そうな顔をしているのを見て、逆に心配されたのか「大丈夫ですよ〜」と言ってくれます。

 しかし、そう単純な物でもありません。


「そうだ!花恋さんってマスターのお宅、知っていますか?」


「ええ、知っていますけど?」


「ではお見舞いに行きましょう!」



 着いたのはお屋敷、とは呼べないまでの、しかしそこそこ大きな作りの家です。

 表札には、セレーナと記されています。


 私は、表札の下に設置されたインターフォンを押します。

 1回目で出なかったので、もう1度押そうか迷っていると、ドアが開かれました。


「いらっしゃい、桜ちゃん、花恋ちゃん」


 ドアから顔を見せたのは、メイド長でした。

 それから、メイド長は中へ案内してくれます。

 何で、メイド長がマスターの家にと、変な勘ぐりをしそうになりますが、元々、恋人だったのです。

 まあ、そこまで不思議ではないでしょう。


 リビングと思しき場所に着き、お茶を出してくれます。

 私はそろそろと本題に入ります。


「マスターの体調って・・・」


「あ、ごめんね。桜ちゃん初めてだから、突然休みになって戸惑ったよね」


「やっぱり、容態が悪いのでしょうか?さっきから見えませんし」


「そうね・・・まあ、見てもらった方が早いか」


 メイド長は立ち上がり「付いてきて」と言います。

 私はそれに従い、進みます。

 着いたのは、とある1室の前。


 メイド長が扉をノックも無しに開くと、突然漏れ出る大きな声。


「アイナたそーー、ナンデっ、ナンデっ死んだんデスカーーー!!」


 あまりの叫び声に、びっくりして耳を塞ぎます。

 メイド長もそれに気がついたのか、すぐさま扉を閉めてくれました。


「マスターはあんな感じだから、今日はおやすみ」



 リビングに戻ると、花恋さんが緑茶を優雅に啜ってました。


「どうだった〜?」


「はい・・・ マスター、親しい方を亡くされていたのですね」


「あははは、ちがうちがう」


 人が亡くなっているにしては不謹慎な笑い声、メイド長です。


「昨日放送のアニメで推しが死んだのよ」


「おし?」


「マスターが好きなキャラクターね」


「えっと、つまり好きなキャラクターが死んで、落ち込んでいるからお休みなんですか?」


 私の言葉に、花恋さんとメイド長は肩を落とします。


「気持ちがわからないわけでは無いんですけどねぇ〜 さすがにここまでは、ね〜」


「全くマスターは昔からこうなんだから。ごめんね、困っちゃうわよね」


 今日こそは連れ出さないと、と立ち上がるメイド長。


「私は素敵なことだと思いますよ」


「桜ちゃん?でも・・・」


「そうですね、迷惑を掛けているのはいただけないですが、でもそういうところが愛されている所以ではないですかね」


 メイド長は、私達が来る前からここに居ました。

 マスターが呼び出しただけかもしれません。

 例えそうだったとしても、事情を知っていながらそれでも心配して駆けつけるのは、それは・・・


「メイド長は、マスターのことが本当に好きなんですね!」


 メイド長は、うつむきます。

 そのせいで、陰ってわかりにくいですが、ほんのり染まる頬。


「やっぱり、行ってガツンと言ってやらないとね」


 今まで見せたことが無いような無邪気な笑顔。

 私はもう止めたりなんかしません。


「花恋さん、邪魔者は出て行きましょうか」


「そうですわね〜」


「マスターは本当に愛されてますね〜」


「えぇ〜」


「花恋さんもですよ?」


「え⁉私も〜」

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