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メイドのおしごと!  作者: 東雲もなか
お帰りなさいませ
5/18

第5話 春のパン祭りです。

「日本の春には三大行事とイエバ、杉、檜、そして・・・」


『んん崎〜春のパン祭り〜♪』


 花恋さんと息がぴったり合いました。


「私はツッコまないわよ」


「あれれ〜?チナサンおこってマス?」


 マスターはわざとらしく口を押さえながら笑っています。

 千奈さんのこめかみには、かわいい彼女に似つかわしくない青筋があります。

 それに気が付いたマスターは笑うのをやめ、無表情になりました。


「ソレハソウト、パン祭り好きじゃないデスカ」


「別に嫌いじゃないけど・・・好きかと言われると・・・ね?」


 途端に悲しそうな顔をする、マスターと花恋さん。

 もしかして、私の知らないところで特別な思い入れでもあったのでしょうか?


「シール集めたらお皿モラエルのに・・・」


「きれいな白いお皿ですのに・・・」


「白いお皿。・・・そういえばうちのお皿もシンプルなものだったよね。もしかして、」


「あーちがう、ちがいマスヨ。お店のは百均で買ったやつです」


「もう良いよね? 殴っても。 いいよね⁉」


 ぷるぷると拳を握り絞めている千奈さんが怖いです。

 私は関係無いと思うのですが、目が合わせられません。


「ま、まあともかく、これ見てください」


 マスターが取り出したのは、手作りの看板です。

 そこに書かれているのは、


「○崎春のパン祭り開催?うちの店もやるんですか?パン祭り」


「正解デス」


 ウインクしながら親指を立てるマスター


「さすがにそれは、どこかに訴えられたりしないのかな・・・」


「大丈夫だよ〜 だって山崎じゃなくて川崎なので〜」


「私の母の旧姓なんデスヨ」


「紛らわしいわね。じゃ、なに?○(ざき)じゃなくて○(さき)ってここと?なんだか間抜けね」


 お母様の名前だって事忘れているのでしょうか?

 マスターはしょげちゃってますよ。

 それを見た千奈さん、


「べつに、そういう意味で言った訳じゃ・・・ほら店長のセンスの問題だから」


 フォローになってないことに気がついてほしいです・・・

 マスターはさらに俯いてしまいました。


「マスター、私はお祭り好きですよ。活気付いて楽しいじゃありませんか?」


「桜さん・・・」


「私もパン祭り良いと思いますよ〜」


 私に花恋さんも賛同します。

 そして、千奈さんは、


「これじゃあ私が、いじめてるみたいじゃない。良いわよ私もやるわよ」


「実際に似たような事をしてたのでフォローしづらいですね・・・」


「う・・・」


 千奈さんは私に言われたことが刺さったらしく、視線をそらします。


「それにしても、具体的には何をするんですか?」


「それはもちろん、デイリーで対象のパンを買ってきて売りマス」


「ストップ、ストップ!!」


 さっきまで肩を落としていたのに、元気になって割って入ってくる千奈さん。


「そして、点数を集めたらお皿がもらえマス。ただし手数料として10%点数を頂きマス」


「待てって言ってるでしょうが、この駄犬!」


「千奈さん」


 私は千奈さんを見つめます。

 千奈さんも何かあったのかと、何?って聞きながらこっちを向いてくれました。


「仲介手数料って意外ととられる場面が多いんですよ」


「知ってる。知ってるけどこれはちがうでしょ。大体何で店の前にポストあるのに、わざわざ店通すのよ」


「だって、郵便だと切手代カカリマスヨ」


「え?そうなの、それならお得じゃん・・・ってならねーよ」


「ならないんデスカ?」


 意外と真面目に答えていたらしいマスターは首を傾げています。

 それに千奈さんは、そこまで馬鹿だったのかとあきれ顔です。


「考えてみてクダサイ。郵便だと切手代(かっこ)税別(かっこ閉じる)が掛かるんデスヨ」


「微妙に計算が面倒なんだけど・・・ と言うか、この考えている時間が無駄な気がする」


「そうデスカネ〜」


 そうなことナインデスガネ〜とつぶやくマスターは、千奈さんの咳払いにひるんでいます。


「ともかく、パン祭りは無しだからね」


 パチンと手を叩き、おしまいと言う千奈さん。

 そして自分の仕事に戻ろうとします。


「チナサン待ってクダサイ」


 マスターが呼び止めれば、不満げながらも立ち止まります。


「なに? あんなパクリイベントやれるわけ無いでしょ」


「エット、あれは冗談デ・・・実は普通に準備してたんデスヨネ」


 店長はカウンターの下から、あらかじめ作ってであろう種類豊富なパンを取り出します。

 とってもおいしそうです。


「じゅるり・・・じゃなかった。それを早く言いなさいよ」


「千奈さん涎が垂れてますよ」


 私はハンカチを取り出して、拭って上げます。


「そんな、涎とか垂れている訳無いでしょ。それより・・・えへへへっ」


 千奈さんは私の手を邪魔そうに払いのけ、一心不乱にパンに食いついています。

 文字通り食べてますよ。

 我慢できなかったみたいです。


「んっ〜♪」


 幸せそうな顔を見て、マスターも満足げです。

 あまりにおいしそうに食べるので、私も手に取って見ます。


「おおお、おいひぃ〜でひゅ!」


 焼いてから時間がたっているはずなのに、ふわっふわです。

 まるで、そう! 雲を食べているようで!


「これは、期間限定で出すなんてもったいないですよ。普通に新メニューにしましょう」


 千奈さんはヘドバンと見間違うほどの勢いで頭を振っています。


「イベント開催の話はどうなったのでしょうかね〜」


 ふふふ、と笑う花恋さん。

 彼女も菓子パンを1つとると、口に運びます。


「おいしっ」

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