第4話 働く理由はなんですか。
「今日は、3、4、・・・6人といったところかしらね」
千奈さんが柱の陰から、ご主人様の人数を数えていました。
私も数えて見るのですが、どうしてもそれ以上いらっしゃいます。
「6人って何の事ですか?」
「それはもちろん、わたくしのメイドの事ですわ~」
さっきまで出勤していなかったはずなのに、いつの間にか居る、花恋さん。
「え?メイドですか?」
つまり、私たちの仕事仲間ということでしょうか?
今日はお休みで、遊びに来ているとかなのですかね?
「何を考えてるかわからないけど、本当のメイドよ」
絶対私が何を考えているか、わかってて言っている千奈さん。
そして、私はさらに混乱が広がります。
「この花恋ってやつのメイドよ。こいつ本物のお嬢様だから」
「???」
メイドがお嬢様?
ご主人様がメイド?
あれ? ご主人様がお嬢様?
(そうか!)
「メイド様ご注文はお決まりですか~」
「ちょっと、まてぃ」
注文を訪ねに行こうとしたところ、強引に千奈さんが止めます。
「混乱しているのは十分わかった。考えるな、感じるのよ」
数分後
「なるほど、つまり、花恋さんを心配した家の人たちが、様子を見に来ているのですね」
「まあ、そんなとこ。ついでに、あの人達がこの店の利益のほとんどを出してるから」
「衝撃ですね・・・」
メイドがメイドカフェに来ているだけでも驚きです。
しかも、その方々のおかげでお店が成り立っていると思うと、感慨深いものがあります。
そして新たな疑問が出てきました。
「花恋さんはどうして、この仕事をしようと思われたのですか?」
お嬢様と言うことでしたので、お金に困っていた訳でもなさそうです。
すると、私のようにメイドに憧れて?
「あぁ~、そのことでしたら。私が働きたいって言ったら、お父様とお母様がせめてメイドにと・・・」
「つまりあんたみたいにコスプレメイドをほんとうのメイドと間違えたってわけね」
「きっかけは何であれ、楽しかったから続けているのですよ~」
「でも、なんでメイドなんですか?メイドってあまり身分は高くないイメージなんですけど」
言葉は悪いですが、地位が低い人がやっている印象です。
とても、花恋さんがやる仕事には思えませんでした。
「ウフフ、そうでもないんだよ~ ほとんどは、住む場所がない子みたいだったけど、中には行儀見習いとして入ることもあったのよ~」
メイドが好きと言っていながら、知りませんでした。
「でも、花恋さんは違うんですよね」
「そうだね、私のは勘違いだね~」
上品に笑います。
『ジー』
私と花恋さんは、声に出しながら千奈さんを見つめます。
「何よっ」
「私だけ言うのは、不平等なのですよ~」
「あんたは知ってるでしょ・・・わかったわよ、言えば良いんでしょ」
最初は嫌がっていた千奈さんですが、私の方を見ると仕方なく折れたみたいです。
「あの、その・・・ぃ・・・が・・た・・よ」
声が小さくて所々しか聞き取れません。
でもここで確認し直すのも失礼でしょうか?
「あっれれ~、そんな小さな声じゃ何言っているのかわかりませんよ~」
生き生きと話す花恋さん。
私知ってます。
これが煽りと言うやつですね!
一方千奈さんは、若干涙目で花恋さんを睨んでいます。
「花恋は知ってるくせに、意地悪・・・」
「何の事ですかぁ?かれん、わかんな~い」
S気たっぷりの笑みを浮かべています。
「・・・制服がかわいかったから、私も着てみたかったのよ! これで満足⁉」
「わーお、以外と乙女なんですね」
「良いからあんた達早く仕事しなさい!」
『はーい』
私たちを「しっし」と追いやってきます。
そして、切り替え早く「ご主人様ぁ~」と接客しています。
「なんだか、千奈さんを先輩なのにかわいいと思ってしまいました」
「わかる。・・・っさ、私たちも言われた通り仕事しよ~」
運ぶ料理を取りに行く花恋さん。
私も、その後に続きました。
この後、なぜかトイレ当番が一週間全部私たちの名前に書き換わっていたのは、また別の話です・・・
はあ・・・トイレ掃除か・・・
メイドっぽくて楽しそうですね!