第17話 四つ葉のクローバーです。
【四つ葉のクローバーの花言葉】
幸福、希望、愛情、復讐・・・
〜後藤香葉が、まだ大学生だった頃の話〜
午前の講義が終わり、どこか良い場所は無いかと、ぶらついてみる。
それは運命だったのだと思う。
木漏れ日を浴びる、ブロンドがキラキラと揺れていた。
その持ち主の青年は、しゃがみ込んで何かを探している。
私が、彼に見とれていると気付いたのは、しばらく経ってからだった。
「何をしているんですか?」
この気持ちがなんなのか、答えなんて出せなかったけど、今声を掛けなければ絶対に後悔すると思った。
青年は振り向く。
ひらひらと柔らかく舞う髪の毛に、また見とれてしまう。
高く筋の通った鼻、整った顔立ち。
そこから生み出される笑顔に惚れない人が居るのだろうか・・・
「どうしまシタ?」
やや片言の、でも予想通りの声。
「何か必死に探しているみたいでしたので。なくし物ですか?私でよければ私も一緒に探しますよ」
今思い返すと、少し必死すぎて、自分ですら気持ち悪さを感じる。
でも彼は、そんな顔1つせずに、さっき見せた笑顔とはまたちがう笑みを浮かべた。
「四つ葉のクローバーを探しているんデスヨ。すみません、くだらない物デ」
「くだらないなんて、とんでもありません!」
私がそう言うと彼は、驚いた表情をする。
そりゃそうだ。
突然、目の前の人が大声を上げたのだ。
(やってしまった・・・)
しかし、彼は何がおかしいのか、美しく笑う。
さっきからよく笑う人だ。
そこがまた好きになってしまう。
「お願いしても良いですか?」
引かれると思っていたから、意外な返答に面食らう。
「は、はい!喜んで!」
私も、彼と同じようにしゃがんでひたすらに、地面を眺める。
「そういえば、自己紹介がまだでしたね。ワタシは、リータ・セレーナって言いマス」
「セレーナさんですか・・・」
そうだろうとは思っていたが、やはり外国人なのだろう。
「マスターって呼んでクダサイ。みんなにはそう呼ばれていますので」
マスター?と疑問に思ったが、その時はまだ、面白い人だな、位にしか考えてなかった。
「わかりました、マスター。私の方は、後藤香葉って言います。香葉って気楽に呼んでください」
探し始めて、数分が立つ。
四つ葉のクローバーともなると、そう簡単に見つかる訳もなかった。
「香葉、知ってマスカ?」
自分で言っておきながら、いきなり名前で呼ばれて心臓が跳ね上がる。
「はいっ・・・何がですか?」
「四つ葉のクローバーの花言葉デス。幸運とか愛情とか、なかには復讐なんてのもあるんデスヨ」
「物知りなんですね。あ、」
ようやく、葉が4つに分かれたシロツメクサを見つけた。
「おお、見つかりまシタネ。そろそろ、私はこれで失礼シマスネ」
青年はそう言って立ち上がる。
そして、この場所から去ろうとした。
「あの、これは?」
私が差し出したのは、さっき見つけた四つ葉のクローバー。
「ああ、暇つぶしに探して居ただけですノデ。それに、あなた幸せが訪れたなら、私が嬉しいデス」
それではと、軽くてをあげて踵を返す。
「待ってください!」
私は、彼を追いかけた。
ほんの短い距離だったのに、嫌に息が上がっている。
「知ってますか?もう1つのクローバーの花言葉。それは・・・」
【四つ葉のクローバーの花言葉】
幸福、希望、愛情、復習、そして・・・
『私の物になって』