第13話 ガラスの仮面です。
「千奈さん、私最近アニメ見始めたんです」
「え?うん」
突然意味のわからないことを言い出す、桜。
私が、反応に困っていると、
「私、最近アニメ見るんですよ」
聞こえてなかったとでも思ったのか、もう一度言ってきた。
ご丁寧に言い方まで変えて。
さすがに、無視するわけにも行かず、困っていると店長が耳打ちしてくる。
(サクラサン、みんなとお話したいから、おすすめのアニメ教えて欲しいって聞いてきたんデスヨ)
なるほど。
つまり、私とそのアニメについて話したいと言うことだろう。
まあ、私もお宅の端くれ。
大抵の話題ならついて行けるだろう。
「へー、どんなアニメ見てるの?」
桜はその質問を待ってましたと言わんばかりに、ウキウキで答える。
「えへへ、ガラスの仮面って言うやつなんですが、知ってますか?」
「もちろん」
むしろ、知らない人の方が珍しいだろう。
内容までは難しくても、名前すら聞いたことが無い人はそうそう見つからない。
「あれ面白いですよね。ついつい笑っちゃいます」
ついつい笑う?
引っかかるところがあるが、それだけ面白いと言うことを表現したいのだろうか。
「でも、店長、少女漫画とか好きなんですね」
「意外デスカ?」
「意外かどうかで聞かれれば、全然」
むしろ、普通に読んでそうだ。
まあ、他にもっとあったと思うが、悪い選択では無いと思う。
現に、今の様子を見る限り、相当はまってるようだし。
「手軽に見れるのが良いですよね」
手軽?
まあ、CMを抜かしたら20分くらいだし、手軽なのか?
そりゃ映画と比べれば、とっつきやすいかもしれないけど。
「よかったデス。初めて見るなら、ギャグアニメがわかりやすいと思ったんデスヨ」
「は?ギャグアニメ?」
「知らないんデスカ?『ガラスの仮面ですが』
「知ってるわよ!でも普通オリジナルの方だと思うでしょ!」
「あ、サクラサン。カナカナ家族ってのも面白いデスヨ」
また新しいアニメをすすめている店長。
相変わらず、フラッシュアニメばかりをすすめている。
「ほら、もっと他に無いの?あるでしょ色々」
「かよえ!ちゅー学とかデス?」
「それもフラッシュアニメね」
「ガッ活!も良いデスヨ」
「あ、もうあきれ通り越して、尊敬するわ」
こんなにコアなアニメばかり出すとは思わなかった。
「でもチナサン何で知ってるんデスカ」
「何が?」
「ワタシがおすすめしたのが、全部フラッシュアニメってことデスヨ」
「す、好きだからに決まってるでしょ」
さっきまで店長のことを散々ツッコんでいた手前、答えづらい。
「私、頑張って全部見ますね。そして話について行けるようになります!」
さっきの会話に入れなかったのが悔しかったのか、意気込む桜。
どうか、彼女には沼に入らないで欲しいと願う。
「私思うんですけど、話は面白いのに、絵がカクカクですよね。そこだけが残念です」
「何言ってるの?そこが良いんでしょ」
「え?でも、作画枚数がーってマスターがこの間」
あーこの間の謎が解けた。
ずっと、「チカっとチカ千花っ」が厨房から聞こえてきてたのはそれだったのか。
「店長、この間忙しい時間にサボってたよね」
「はぁっ、なぜそ・・・何の事デスカナ」
「もう誤魔化すのは無理だろ」
「ひどいデス。ワタシに鎌を掛けるナンテ」
「鎌なんて掛けてないわよ。確信してたから。で?」
「エ?」
「私甘い物が食べたいな〜」
「さくらパフェで良いですか・・・」
なんかそこで、そのチョイスをするのがさすが店長だ。
しゃくに障る事をやってのける。
私は店長に作り笑顔を浮かべる。
「私は笑ってるのに、店長は何でおびえてるのぉ〜」
「チナサン、イツモトチガウ。コワイ」
びびってばかりの店長に対して机をグーで叩いた。
「ひぃ、わかりました。リッチパフェデス。それで許してクダサイ」
この店で一番高いパフェを、しかもただで食べれて満足な私だった。
次いでに、桜には私のおすすめのアニメも紹介しておいたから、またリッチパフェを2人で食べながらその話をしようと思う。
なぁに、店長の弱みならいくらでも持っているから、実質バイキングと変わらない。
海賊と変わらない、なんつって・・・