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メイドのおしごと!  作者: 東雲もなか
お帰りくださいご主人様
12/18

第12話 敵情視察です。

 この間に引き続き、またまたお休みを頂きました。

 何だかメイドがお休みというと、クビみたいな響きですが、普通に有給みたいな物です。


「マスターまた惜しい方をなくされたんですか」


 私は隣で歩く千奈さんに語りかけます。


「ん?いやいや、ただ映画見に行ってるのよ。今日公開日だから閉館時間までヘビロテするんじゃない?」


「映画ですか。意外です。マスターそっち系には興味ないのだと思っていました」


「え、そう?普通に好きそうに見えると思うけど。あ、映画って言っても普通にアニメだよ」


 なるほど、映画と言っても色々あるのですね。


「知りませんでした、今時の映画事情」


「昔からあるから。ほらジブリとか?」


 確かに、あれもアニメ映画というジャンルでしたね。

 うっかりしていました。


「マスターはジブリが好きなんですね」


「うん・・・なんかもうそれでいいや」


 何かを諦める千奈さん。

 そして一呼吸置いてから「着いたよ」と指を指します。


「メイド喫茶モーリー?」


 看板に書いてある文字を読み上げます。


「そ、店長がせっかくだから、敵情視察して来たらって。ごめん、嫌だった」


「そんなこと無いですよ。メイドはやるのも見るのも好きです」


 千奈さんは私の言葉を確認すると、扉を開けて中に入ります。

 私もそれに続きました。


「お帰りなさいませ、お嬢様」


 入った途端に挨拶され、嫌な記憶がフラッシュバックします。

 タイガーホースです。

 ここは一旦落ち着いて、千奈さんの後ろに身を隠します。


「桜、落ち着けよ。大体毎日聞いてるんだから、そろそろなれても良いんじゃない?」


「無理です。嫌な記憶が詰まってますので」


「あなたよく内の店で働けるわね」


「それほどでも」


「あきれてるのよ。まあいいや、とりあえずコーヒーでも頼みましょっか」


「私苦いのは・・・ あ、紅茶でお願いします」


 少し周りを見てみれば、テキパキと慣れた様子で働くメイドの方々。

 千奈さん達も、凄いですがこちらの方も参考になります。


「良い衣装ですね〜」


「真剣に見てたから、勉強熱心ねと思ってたけど、そうよね。桜だもんね・・・」


「私の名前を蔑称みたいに言わないでください」


 そんなこんなしている内に、注文の品が運ばれてきます。


「コーヒーと紅茶ですね」


「はいそうです!」

「ありがとうございます」


 私は早速口をつけようとして、千奈さんに止められます。

 どうしてだろうと、待っていると、


「それでは、おいしくなる『おまじない』掛けますね、一緒にお願いします」


 メイドの彼女は、胸の前に手を掲げ、そこでハート型を作ります。


「え?何がですか?」

『萌え萌え、キューン♡」


「何だったんですか今の」


 こんなメイドカフェ見たことありません。

 もちろん、うちの店でもあんなことしません。


「普通は、あんな感じなのよ」


「でもあんなメイド居なく無いですか?」


「そもそも、本物のメイドすら居ないけどね・・・」


 そんなことを言い出したらきりが無い気がします。


「他にも、オムライスで文字書いたり、チェキとったりとか?」


「うちの店ではやってませんね」


「まあ、それが店長の方針だからね。私は嫌いじゃ無いけど」


 千奈さんがマスターを褒めるのを初めて見ました。

 きっと本人の前で言えば喜ぶだろうと思うのですが、口が裂けても言わないのでしょうね。


「あら、千奈ちゃん来てたのね」


 誰かと思って見てみると、そこには異様な光景がありました。

 大柄なマッチョが、メイド服を着ています。

 多分男性だと思うのですが・・・


「森さんこんにちは」


「そっちの子が、桜ちゃん?」


 森さんは私の方を、品定めでもするかのように見てきます。


「はい、そうですよ」


「ふーん、良いわね。やっぱり千奈ちゃんうちの店来ない?時給はずむわよ。そっちの子も一緒でも良いし」


「ははは、店長にはお世話になっているので。それに桜にちょっかいを出さないでくださいよ」


 千奈さんがどっか行ってしまうのかと思いましたが、その心配は無いようで安心しました。


「それで、リータは元気?」


 聞き慣れない名前を口に出す森さん。

 でもその正体はすぐにわかりました。


「あー、店長は今映画に行ってます」


「全くあいつは・・・」


「まあでも、今日の分の給料も出してもらえてますし、一年前から予定立ててくれるのでまだましな方ですよ」


「そう?なら、良いわ」


「問題なのは、おしが死んだときですね。突然休みますし、一週間は使い物にならなくなるので」


「ガツンと言ってやらないとね」


「お願いしますね」


 会話も一段落して、飲み物も無くなってきたので店をでます。



「どうだった?」


「ちがうところが、いっぱいだな〜と思いました」


「そうね・・・」


「あと、うちの店って、普通じゃないんだなと実感しました」


「普通だと思ってた方が驚きだわ。大体メイドカフェなのに普通なわけ無いでしょ」

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