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メイドのおしごと!  作者: 東雲もなか
お帰りくださいご主人様
11/18

第11話 スカート中は秘密です。

 私が大分、お店になれてきた頃。


「おいっ、注文!」


 荒っぽく呼ばれて少し怖かったのですが、待たせては悪いので急いで向かいます。

 それに、それだけで勝手に印象づけるのも失礼です。


「はい、ただいま」


 私が、注文を取りに向かえば、ご主人様は睨んできます。


「ご、ごちゅうもn」


「ったく、おっせーんだよ。いつま待たせんだ。あぁ?」


「ひぃっ、ごめんなさい」


 何を言って良いのかわからず、ただ謝る事しかできません。

 私は、何をしでかしてしまったのだろうと、思い返しても全く心当たりがありません。


「まあ良い。コーヒー」


 ぶっきら棒に完結な注文をして来ます。


「コーヒーですね。すぐお持ちいたします」


 この場から逃げ出したい気持ちでいっぱいの私は、ようやく解放されたのかと思い、急いで戻ろうとします。

 品物も、マスターに持って行ってもらおうと思っていました。

 しかし、


「おい、ちょっと待て」


 引き留められたなら、止まるしかありません。

 私は恐る恐る、振り返ります。

 そこには、さっきの憤怒の表情とは違い、下品な笑みを浮かべたご主人様が居ました。


「どう、なさいましたか?」


「さっき、主人である俺に迷惑を掛けたよな?」


「はい・・・その節は、誠にもうs」


「謝罪はもういんだよ」


 よかった、許してもらえたんですね。

 意外と悪い人でも無かったのかもしれません。


「言葉じゃ無く、行動で示せ」


 しかし、許してもらえたわけではありませんでした。

 この状況は嫌な予感がします。

 私は、千奈さんやマスターに助けを求めるため、その場を離れようとします。


「どこ行くんだよ?」


 言葉と同時、逃げられないように腕を捕まれます。

 男の人の握力で強く握られ、痛いです。

 お店の中で大きな声を上げる訳にもいかず、ひたすら我慢します。


「ただいま、責任者の方を呼んで参りますので・・・」


「俺は、おまえに詫びて欲しんだけど」


 必死の言い訳も、一蹴されます。


「私は何をすればよろしいのでしょうか・・・」


 こうなったら、覚悟を決めて、私自身で対処するしかありません。


「じゃあさ・・・」


 彼は私の耳元に口を寄せてきます。


(パンツの色教えろよ)


 ニチャニチャと不快な音を立てながら、言ってきます。

 私が困って居るのすら、面白がってきます。

 黙っていれば、握られている腕はどんどん締まってきます。


「ち・・・」


「ち?」


 そんな言葉から始まる色なんてあっただろうか、と思ったのか、首を傾けて居ます。

 ちょうどそのタイミングで、同じ方向に勢いよく曲がり、飛んでいきます。

 次に目に入ったのは、誰かの膝蹴りです。


「千奈さ〜んっ 怖かったですよ〜」


 そう、戻ってくるのが遅いことを不審に思った千奈さんが、助けに来てくれました。

 その後、迷惑なご主人様は、マスターによって強制退去。

 出禁というやつになって、今後一切お帰りになられないそうです。



「あなた、最後言いそうになってたでしょ」


 助けてくれた千奈さんは、あきれ気味に言います。


「いえ、千奈さんが走ってきてくれるのが見えてましたので、千奈さんの名前しか」


「ホント?ならよかったけど」


「ただ、私のパンツが千奈さんだと思われている可能性は否めません」


「そんなわけないでしょ⁉気持ち悪いこと言わないでしょ」


 千奈さんは心配なのか、マスターにも意見を求めています。

 マスターが「思われているカモデスネ」と適当に受け流すと、かなり動揺していました。


「ま、まあともかく、履いている色聞かれても答えないこと」


「でも、どうしたら良いんですか?特に今日みたいな時だと、腕つかまれて逃げれませんでしたし・・・」


 問題は、答えなかった場合解放してもらえない状況です。


「ハンカチの色とかは?」


「私、ハンカチと同じ色の履いているなんて思われたら嫌です」


 根本的な解決になっていません。

 色を知られるのが嫌なのでは無く、想像されるのが気持ち悪いのです。


「うーん、香葉さんなら大人な女性の断り方知ってるかも」


 千奈さんは早速電話を掛けます。

 すぐにつながり、事情を説明します。


[それなら、「履いてないの」って答えるのは?]


「却下です!!」


 そんなの言語道断です。


[はははっ、冗談よ。私は、ディアッレーア色って答えてるけど」


「教えない方法で悩んでるんです!」


「ちなみに、どんな色なの?」


[イタリア語で下痢って言う意味よ。ウキウキで帰って、どんな色だろうって調べるのを想像すると笑える]


「ふむ、なるほど」


 何か考える様子の千奈さん。

 いち早く察した店長さんは止めに入ります。


「ダメデスヨ。曲がりなりにも飲食店ナンデスカラ」


「でもさ・・・あっ、そうだ。じゃあ、お詫びの品も一緒に出したら相殺されるんじゃ無い?」


「まあ、そこまで言うんデシタラ・・・」


 お詫びを出せば良いって問題でもない気がします。

 でも、イタリア語普通のご主人様にはわかりませんし、よくやっている1番、2番みたいな隠語と同じなのかもしれません。

 結果から言えばそれ以上の案が出る事も無く、採用される運びとなりました。



 その後、しつこく通っている迷惑なご主人様も、ディアッレーアと言った後に、スープカレーのサービスをしたら2度とお帰りになられなくなったので、一件落着です。

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