第1話 私は今日からメイドになります。
アルファポリスの方でも不定期更新しています。
【メイド】
住み込みで掃除、洗濯、炊事などを行う女性。語源はmaidenでかつては、未婚の女性と言う意味であったが、現在では職業のことを指す。
私の夢はメイドさんになることでした。
かわいらしい制服に身を包み、誰かの為に仕えるなんて、なんと素晴らしいことでしょう。
なんちゃって(笑)
でも、冗談ではありません。
私は真剣です。
そして今日から、私もメイドとして働けることになりました。
メイド募集の張り紙に、つい衝動的に電話を掛けてしまっていた自分の行動力が恐ろしいくらいです。
そうこうしているうちに、連絡のあった場所にたどり着きます。
「フィオーレ?」
掛けられた表札には確かにそう書いてあります。
しかし、お屋敷が見当たりません。
あるのは小さなお店でした。
他にそれらしき場所も見当たりませんので、とりあえず表札が掛かった扉をノックします。
「???」
おかしいですね?
返事がありません。
もしかすると、留守なのでしょうか?
「あの・・・」
「ひゃっ」
突然後ろから掛けられた声に驚いてしまいます。
「にゃ、なんでしょう?」
「そこ通ってもいい?」
「すみませんっ すぐどきますっ」
私としたことが通行の邪魔になっていたとは。
さっき私に声を掛けた人は、私が退くと、扉の中へ入っていきました。
あれ?
一気に背中に冷たい汗が流れます。
ど、どうしましょう。
きっと彼が私の仕えるご主人様です。
さっきの態度失礼に思われていますよね?
少しだけ落ち着きを失って、ワタワタしてしまいましたが、そんな場合ではありません。
冷静さを取り戻した私は、ドアを必死に叩きます。
「申し訳ございません。この無礼をどうかお許しください」
それでも中から反応はありませんでした。
「お嬢様、どうかなさいましたか?」
また、後ろから声が掛かります。
キョロキョロしてみても、お嬢様らしき、と言うか私以外に人が見つかりません。
「あ、ごめんね。つい仕事の癖で。それで、君迷子か何か?すごい慌てたみたいだけど」
彼女は私に向かって話しかけてきています。
「私、駄目な子だから・・・ひくっ、ここに、ひくっ・・・入れてもらえなくて」
私はなぜだか途端に悲しくなって、泣きたくないのに涙があふれてきてしまいます。
「えぇ、ちょっ、ちょっと。どうしよぉ」
私は彼女を困らせてしまいました。
「とにかく、中に入ろ。ね?」
彼女は私の手を取ると扉を開け、私を入れてくれました。
カウベルの上品な音が鳴り、中にいたメイド数名がこちらに気がつきます。
『お帰りなさいませ、お嬢様』
「ごめんなさーいっ 私は駄目なメイドなんですっ」
まずは謝罪です。
中に居た方々が私の方に一斉に注目しますが、かまっている場合ではありません。
地面をなめる勢いで土下座することで誠意を見せるのです。
「もしかして君が桜さんデスカ?」
声を掛けてきたのは、鈴木雅之を少し爽やかにした感じの人です。
鼻は高く、堀が深い顔立ちは外国人のようです。
「はい! 兎月桜です!」
「もしかして、この子が今日から来るって言って子?」
私の顔をのぞき込んできます。
照れますね。
まあ、私はかわいいですから↗
「店長・・・」
私の顔から目を離して、さっきの外国人さんの方を見ています。
「ドウしましたか?」
「ついに手を出したんだな~て、中学生に・・・」
『ちがいます(マスヨ)』
「私はちゃんと高校生ですぅ~」
「そうデス。それに中学生はロリコンじゃないデス」
外国人さんは、言い終わったか定かでないうちに鉄肘を食らわされてうめいています。
そして攻撃した張本人はまた私の顔を覗いてきます。
私も殴られるのでしょうか、怖いです・・・
「ふぅーん・・・ ちなみに君って身長何センチ?」
「桜です!」
「・・・桜、身長どれくらい?」
「135ですよ?」
何でそんなことを聞かれたのかわからず首をかしげながら答えます。
「そうかぁ、やっぱりそれくらいなんだね~ ちっちゃくてかわいいなぁーもうっ」
そう言うなり飛びついてきます。
でも体格差と言うものがあるので、受け止められず倒れてしまいます。
「ぅつ、ごめんごめん」
「ヤーイ、チナサンノロリコン」
膝丈のスカートを翻し、流れるような回し蹴りが飛びます。
この後外国人さんは救急車で運ばれたとか、運ばれなかったとか・・・