七行詩 831.~840.
『七行詩』
831.
真冬の海を見に行きましょう
人気のない浜辺に立てば
聞こえるのは波と 風の音だけ
遮るものは何もなく
私は全てを受け止める
真夜中の騒音と 似ているようで
安らぎを与える ゆらぎの音
832.
弱さを知らない人たちも
強さを知らない人たちも
等しく未完成で 誰にも歳月が必要です
尖らせた刃に 気づかないまま傷つけたり
大事なものさえ 取りこぼしたり
未完成なまま 世界は回る
その中で変われと 世界は我々を急かすのです
833.
目の前の人の 眼差しの理由が分からずに
先のことばかりを考えていた
すると 目の前のことが見えない人とは
一緒に先を 見れるはずがない、と
誰もが愛想を尽かしていった
思い込むことと 信じる強さの区別さえ
つけられぬまま 列車は貴方を乗せていった
834.
誰かのためでなく 何かのためでなく
私は雨風に身をさらし
無様に音楽を始める
全ては 一本の蝋燭が 燃え尽きるまでの
短い夢でしかないのだから
さあ 見つめるだけで この熱に気づけますか
一度その手で 触れてみてはいかがですか
835.
いつの日も 傘を連れて歩いている
この手に掴むものはなく
この腕に掴まる者もいない
いつの日も 守ってくれるのは貴方だけで
同じ場所に足を止め 景色を見られるのも貴方だけ
閉じれば 細く美しい姿
開いた 雨を弾く音も 雫を浮かべたその姿も
836.
変わることが必要だったとしても
たった一つの 良いところさえ失うなら
それはもう私ではなかった
それすら分からずに居たなら
やはり知る必要があったのでしょう
傷つけた分は癒せない
せめて誰かの優しさが あの人に返りますように
837.
望みの人と 並ぶ人達
大事な一つを守れる力は
いつどこで手に入れたのでしょう
きっと誰も 誰かを守り 傷つけるうちに
手にしたものではないでしょうか
いつか再び現れるときは
私も誰かを 守れる力を持っていたい
838.
素晴らしい一日がありました
早くも私にも訪れた
これは貴方が見ていた景色であり
生まれた奇跡は それぞれの場所から
この日のために集まった
またともに作り上げましょう
その時は私も必ず また大きくなった姿で
839.
夜が明け 冷えきった世界にも
朝は町に あたたかな色を取り戻させる
そんな帰り道は この季節だけ
暖炉の傍で 朝食を採り
毛布の中で 眠れるなら
優しい光に 包まれながら 眠れるなら
日々の疲れは その安らぎのためにある
840.
一体 どんな耐えがたき試練が
貴方の手に レコードを壊し
イヤフォンを捨てさせたのか
その愛しいお顔に 微笑みや涙を
私が取り戻して見せましょう
そんな貴方を愛してください
もう一度 お気に入りの歌を 歌ってください