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男の娘は従者の本音を聞く

従者とは。解説回

 しわ一つないブラックスーツの上に厚手の裾の長いコートを羽織り、鏡面のように磨ききられている革靴。

 髪も整髪剤で固め黒いサングラスで目元を隠している怪しい人物を隣にして、詠流は長々とため息をついた。


「愛莉さん。せめてサングラスとりません? 季節外れですし、完全に怪しい危険な人にしか見えないのですけど」


 そう言った詠流の服装は、対称的で好青年といった様だった。

 詠流なりに服装には苦心して男らしさを追い求めている。

 それでも女の子だと間違えられて心が折れそうになったことが何度もあった。


「不測の事態に備えて、万全の準備をする。そして速やかに問題を解決する。これが執事バトラーに備わっているべき条件だ」

「だからといって、その怪しい姿はどうにかならないんですか? スーツなのはわかるんですけど」

「詠流君にもわかるときがくるよ」

「それはないと思います」

「これは執事バトラーの戦闘服なんだ。必要な戦闘力をこれで所持している。完全武装フルドレスではないが、今回はこれで足りるはずだ」

完全武装フルドレスてもっとすごいんですか?」

執事バトラー完全武装フルドレス。それはつまりホワイトタイ、燕尾服だ」

「あっ、なるほど。燕尾服ね……」


 執事バトラーといえば燕尾服だが、いままで一度も出てきていなかった。


「しかし燕尾服は夜にしか着ることができない。今のような昼前の時間帯はモーニングコートでなければならないが、今日の予定からすると着替える暇はない。タキシードは昼あたりからいけるが、朝にタキシード着てるなど場違いにもほどがある」

「はぁ」

「お店の営業時間がお昼すぎからなのはそういう意味も含まれているのだよ。詠流君」

「はぁ。よく考えられてるんですね」


 指摘されてもパッとしない詠流だが、愛莉がこだわっている部分である。


「さて詠流君。ついたよ」

「へっ? ここですか?」

「そうだ。ここが鮎川里桜の現在住んでいる家だ」


 詠流が里桜の家を見て思った、第一印象は意外だった。


「なんていうか、普通の家ですね……」

「そうだね。鮎川里桜の母親の実家だったらしいよ。最初は身分が合わずに結婚を反対されていたらしい。それもあって彼女の母親が亡くなり、後妻に子供が出来ると、鮎川里桜に対する風当たりが強くなったとは聞いたことがある」

「なるほど。だから家出してるんですね」


 初対面の時レイチェルが里桜の事を財閥のご令嬢だと紹介していたのを、里桜は遮った。それは財閥の一族として生まれながらも不遇である身の上をあまり知られたくなかったからだろうか、と詠流は回想した。


 少なくとも、年季の入った家でレイチェルと二人っきりで過ごしている里桜は順風満帆な人生ではないな、と詠流は思う。


「さて、詠流君の仕事はここから鮎川里桜を引っ張り出すことだ。レイチェルは勝手についてくるだろうが、協力体制にあった方がいいのは言うまでもない」

「はい」

「ではボクは埜依君と合流するために先にショッピングモールに行ってるよ。少し頼まれ事されてるからね。今からは詠流君一人だ」

「わかりましたよ。でも緊張します」

「大丈夫だ。骨は拾ってやるからナイフで刺されてこい」

「はいはい。行ってきますよ」


 詠流は備え付けられているインターホンを押そうと手を伸ばす。


「……違うぞ詠流君。そこは逝ってきますだ」

「聞き流してたんですけど、つっこみが欲しかったんですね……」


 詠流は愛莉につっこんであげてから歩き去って行く彼女を見送るとカチリとインターホンを押した。

 しばらくまってドアを開けて出てきたのは詠流の予想に違わずレイチェルだった。


「誰かと思えば。今日はメイド服でないが、エリッヒと同類で男装趣味があるとは顔に似合わず……いや、似合ってるか、特殊な性癖だな。まったくあそこには変人しかいないとつくづく思うよ」


 何一つ疑いもなく詠流を男装している少女だと一瞬で判断したレイチェルの言葉が、詠流の胸にストレートでぐさぐさ突き刺さっていく。

 わかっていた反応だとしても、せめて一瞬でも躊躇してくれてたら、と詠流は思わずにはいられない。

 それらを表に出さす、努めて明るい丁寧な言葉で詠流は挨拶をするべく口を開いた。


「おはようございます。またお会いできて嬉しいです」

「私も嬉しいよ」


 どちらも口では『嬉しい』と口にしているが、見る人が見たら言葉の裏に隠れた何かを読み取るだろう。


 レイチェルの懐では磨き抜かれた曇り一つない銀色のナイフが赤い血に染まるのを待っている。チャンスを伺うレイチェル。


 一方の詠流にはナイフでぐさっとされて喜ぶようなMっ気はない。


 レイチェルから変人認定されてしまったが、それは詠流のことを男装した少女であると勘違いしているからであって、目指せ紳士ジェントルマンの詠流はへたれで普通の少年である。


「それで何しにきたんだ?」

「昨日レイチェルさん達が忘れていったティーセットを持って来ました」

「なるほど。ありがとう。さぁ、早く渡すんだ。そうすればもう帰っていいよ」


 詠流の親切にも無愛想な態度を崩さないレイチェル。

 詠流を里桜に近づく危険人物だとレイチェルは考えているために、お世辞の『上がっていってお茶一杯いかがですか?』という決り文句さえないのだ。


「いえ、その前に里桜さんとお話したいと思ってます」

「里桜お嬢様と? アポイントもなしで出来ると思ってるのか?」

「わかりません。でもみんな里桜さんの事を心配してるのです。それでオレが代表として会いに来たんです」

「なるほど。理由はありがたい。とりあえず中に入りたいな。外は寒いからね」

「本当に今日も冷え込んでますよね」

「そうだね。さぁ、荷物を持つよ。持ってる手が冷たいだろう?」

「あっ、はい。ありがとうございます」


 話せばわかる人なんだなー、と詠流はレイチェルのことを評価した。寒さで感覚がなくなりかけていた手をポケットにつっこんで暖をとる。

 詠流から手に持つを受け取ったレイチェルは、先導するように歩いて、ドアを開けて中に入っていく。

 詠流もそれに続いて入ろうとして、目の前でバタンと乱暴な音をたててドアが閉められた。


「えっ!?」

「今日はご苦労だったね。早く帰ってエリッヒのいれた紅茶で暖を取るといいよ」

「いやいや! だましましたよね!」


 ドア越しに聞こえるレイチェルの声。詠流は思わず叫んだ。

 話をしてレイチェルが詠流達の想いを理解してくれた、と思った詠流は人質であるティーセットを渡してしまったのだ。


 人質は手元にあるから効果があるのであって、それを失えばその効果は零になってしまう。


「私がだましただと? そんなわけないさ。私は『理由はありがたい』と言ったが、『理由だけ』だ。『中に入りたい』といったがキサマを『中にいれる』とは言っていない。『外は寒いから』と言ったが『私が寒かった』からだ。どうだ? 嘘はいってないだろう?」

「屁理屈です!」


 詠流は口でそう反論したが、似たようなことをすでに知っていた。

 詠流が初めて里桜とレイチェルに会った時である。

 里桜が紅茶を所望する言葉言う。一般的には注文となるが、里桜には従者ヴァレットのレイチェルがついている。レイチェルが里桜の望みである紅茶をいれて提供するのは当たり前の事だ。

 愛莉達はそのレイチェルのいれる紅茶より先に提供しようとして、何度も敗北してきていた。


 暗黙の了解のゲーム。

 愛莉達が無視すればそれで終わるゲーム。

 愛莉が意地になっていたのもあるが、それだけでない。


 助けを求めている里桜ら無視するのは、店の方針からも、友達である水琴からも、レイチェルを好敵手と認めている愛莉からも、おいしい紅茶を飲んでもらいたくて一所懸命にいれている埜依からも、紳士ジェントルマンをめざしている詠流からも、出来ない相談だった。


「レイチェルさん! お願いです。みんな本当に心配してるんです! レイチェルさんもいいんですか! オレは詳しい事は全く知らないです。でもみんな里桜さんに元気になってもらいたくて、そして仲良くなりたいんだと思います」

「そうか。しかし今日は帰るんだな。もし機会があれば、また店に訪れるよ。もっとも里桜お嬢様がお望みになったらだけどね」


 少し悲しそうなその言葉を最後に、ドア越しにあった人の気配がなくなったことを詠流は知った。

 ミッションフェイル。ゲームオーバー。そんな言葉が詠流の頭の中に浮かんだ。

 詠流の手元に交渉材料はない。レイチェルを再び呼び戻すことは叶わない。


「どうしよう……」


 詠流の口から漏れた言葉。

 里桜と会うことが叶わなかったと言えば、水琴らは許してくれる。元々が難易度の高いミッションだったのだ。一番可能性が高いから詠流になったのであって、失敗してしまうことも水琴の想定の中にはある。

 だからこのまま帰っても詠流を責める人はいない。


「けど、オレは紳士ジェントルマンになりたいんだ。これぐらいの障害に乗り越えてみせる。ドア一つ挟んだ向こうには助けを求める女の子がいるんだから」


 詠流は自分に言い聞かせるようにそう呟く。

 ミッションフェイルやゲームオーバーしたってコンティニューすればいい。

 現実はゲームではないけど、何度だって挑戦しようと思えばチャンスは与えられるものだ。 無理だと思っても挑戦しなければ何も始まらない。


 だから詠流はドアの前でただ愚直に待つことにした。次の機会にまた頼み込むために。


   *


「まったく。まだいたのか」

「あっ、レイチェルさん」


 時刻はお昼前。詠流は玄関前で一時間ちょっと立っていたことになる。一時間少しだといっても、真冬の寒さの中でじっとしている事はかなり苦しいことだ。


「少し待ってるといい。今何かあたたかくなるものでも持ってくるよ」


 呆れたような表情をしながらも、詠流を気遣うレイチェル。

 こうやって玄関前でじっとまっていたことは無駄ではなかった、と詠流はそう感じた。

 しばらくして、またレイチェルが出てくる。手には白い湯気が立ち上るカップを持っていた。


「ほら、飲むといい。身体が温まるぞ」

「ありがとう」


 レイチェルから手渡されたカップを持って、口元までカップを持って来てから詠流の手は止まった。


 今までの経験からして、普通の飲み物ではないかもしれない。レイチェルは『何かあたたかいもの』とはいったが、もしかしたら唐辛子とかを入れているかも知れない。確かに唐辛子でも身体は温まることに違いはない。


 詠流は飲まずに一度口から離して、中身を観察する。


 水色は淡い薄い茶色。香りはほのかに甘いリンゴのようだ。


「どうしたんだ? 飲まないのか?」

「えーと、じゃぁ、飲みますね」


 見た目と香りからは危険な匂いがしないと判断した詠流は、ゆっくりと少しだけ口に含む。

 とても飲みやすく、香りは心地よい。


「どうだ?」

「おいしいです。不思議とリラックスができますね」


 なにより身体の中からあたたかくなっていくようである。

「そうか。それはカモミールティーなんだ。ハーブティーとして様々な薬効はあるが、代表的なものとしては、冷え性たや生理痛、不眠症などにきく」

「へぇー、レイチェルさんはハーブティーもいれられるんですね」

「里桜お嬢様が寝る前にお飲みになられるからね」

「なるほどです。ありがとうございます」

「別にかまわ……」

「どうしたんですか? 急に口を閉じちゃって」

「うん。何でもないよ。カモミールティーに毒を混ぜとけば苦労なくキサマを消せた事に気づいただけだから」

「えっ」

「私もどうやら疲れているようだ。こんな単純な事も忘れているなんて……精進せねば」

「いやいや、精進しなくていいですから!」


 普通のカモミールティーを詠流に出してしまったのを痛恨のミスだというように、レイチェルは自分を責める。


「ハーブとかけてハブの毒をいれとけばよかったな。それでハーブの間の伸ばしを短く言えば、同意の上でハブティーを飲ませることができたというのに」

「ハブティーてなんですか! ハブ酒のような気軽さで毒入りを飲ませないでください! 死にますから」


 ハブ酒はしっかりと処理してあるために毒はない。


「モエルさん。すまなかった。次回までにハブを手に入れとくよ」

「いれなくて結構ですから!」

「危険物取り扱の国家資格も取得しとくから安心しろ」

「余計安心できないですから! というかその資格にハブの毒の取り扱いないよ!」


 毒物劇物取り扱責任者の資格が必要だ。


「まぁ、そんなに肩で息をしてどうするのだ? 生き急ぐなよ」

「誰のせいですか!? 誰の!?」


 つっこみですっかり息が上がってしまった詠流。そんな詠流をレイチェルは冷ややかに眺めている。


「身体は温まってくれたかな」

「えぇ、そりゃ一応はね」


 カモミールティーのおかげなのか、つっこみしすぎのせいなのか、冷えてた身体は幾分温まったのは確かな詠流だった。


「それでレイチェルさん。お願いです。里桜さんと会わせてもらいたいのです」


 詠流が本題を切り出す。

 このタイミングを逃したら次の機会がまた遠ざかりそうだったからだ。


「そのことだが、少しつきあってくれないか?」

「どういうことですか?」

「今から里桜お嬢様の朝ご飯の食材を買いにいこうと思っていてね。その間にいろいろ話をしようではないか」

「あっ、はい。そういうことでしたらだいじょうぶですよ。でも、もうお昼ですよ? それなのに朝ご飯なんですか?」

「里桜お嬢様が目覚めたその時が朝だ。今はまだ早朝ということだよ」


 世界は里桜中心にまわってると言い切るレイチェル。

 つまりは里桜はまだ寝ているということだった。


「でも不健康じゃないですか?」


 家に鍵を閉めて歩き出したレイチェルに追いすがるように詠流も動き出す。


「里桜お嬢様に『明日は起こさないで』と命令されてしまったからね。従者ヴァレットとしてはただ主人が起きられるのを待つしかないんだよ」

従者ヴァレットだからですか?」

従者ヴァレットだからだ」


 レイチェルもあまり好ましいことではないと思っているために、歯がゆそうな表情を浮かべている。


従者ヴァレットは助言はできるがそこまでなんだ。執事バトラーや秘書と違う」

「具体的には?」

従者ヴァレットの別名をしっているかい?」

「いいえ」

紳士ジェントルマンの中の紳士ジェントルマン。その立ち振る舞いや態度は他の誰よりも紳士的あることからこう言われた。貴族である主人よりも紳士であるということだ」

「すごいですね」

 『gentleman's gentleman』としばしば言われるほどの従者ヴァレット紳士ジェントルマンであった。


 目指すべき究極の到達点は従者ヴァレットなのかもしれない、と詠流は思う。


「だが紳士の中の紳士と呼ばれるには制約もついてくるんだよ」

「制約ですか?」

「紳士であることは、時に何もできないということだよ」


 その一言に詠流は衝撃を受ける。レイチェルの口から出てきた言葉の意味がわからなかった。


「……どういうことですか?」

従者ヴァレットの前では主人は英雄でいられない。主人の全てを知ることが出来る。だからといって、だからこそ、主人のプライベートには踏み込まない分別がいるということだよ」

「でも、それは当たり前の事だと思うんですけど。プライベートを尊重するというのは」

「そうだね。そうだよ。でも、私は従者ヴァレットという枠組みにとらわれている。里桜お嬢様との私は主人と使用人サーヴァントという雇用関係で成り立っている。それはつねに仕事、パブリックの関係だ」

「よくわからないです。言っている意味はわかりますが、言いたい意味がわからない」

「主人への絶対的な忠誠といえば聞こえがいいが、その裏面はプライベートを殺すことにある。これは寂しいことだよ」


 詠流にはわからない。なぜレイチェルがこんな事を言い出したのか。


「そうですか……」

「そうだよ。すまなかったね。モエルさん。今までの非礼は水に流してくれるとうれしいな」

「もちろんいいですよ」


 態度を軟化させたレイチェル。心境の変化が起きたのかもしれないが、詠流にはその変化を読み取ることが出来なかった。

 玄関前でただ待っていた詠流のひたむきさがレイチェルの心を打った、などとは詠流は思えなかった。この程度の事で事態が打開するなら、世の中もっと上手くまわるはずだ。


 ということは、レイチェル自身が考えを変えた、と考えるのが妥当だった。

 水琴や愛莉は、二人はきっかけを必要としている、と詠流に言った。

 もしかしたらレイチェルはその役割を詠流に託そうとしているのかもしれない。見当違いの自惚れな考えかもしれないけど、もしそうなら自分はどうするべきなのか、と詠流は考える。


「少し昔話をしよう」


 思考の海に沈んでいた詠流はレイチェルのそんな言葉で現実に引き戻される。


「私の初恋は里桜お嬢様だったんだ」

「はい!? いや、そこまで不思議ではないかもしれないけど、突然ぶっちゃけますね!?」


 水琴は、愛のなせる技、といったが、比喩ではなく本当だった事に詠流は少し驚いた。

 詠流には、今の従者ヴァレットであるレイチェルの印象が強くて、それ以外の姿を想像できないのだ。


「つまりモエルさんは私の恋敵となるわけだ」

「なるほど。だからあれだけ敵意を持ってオレに接してきたわけですね……」


 勘違いで女だと思い込んでいる自分に嫉妬するのもどうか、と詠流は思うのだが、レイチェルの心情もわからないではない。


「羨ましかったのだ。モエルさんが里桜お嬢様と親しく接する事ができる事が」

「つまりレイチェルさんは里桜さんともっと仲良くなりたい、ということでいいのですか?」

「……」


 レイチェルは無言だが、詠流はそれを肯定だと受け取った。

 つまるところレイチェルは里桜が好きで、でも主人と従者ヴァレットという間柄が邪魔をしている、と考えれば辻褄は一応合う。主人と従者ヴァレットの禁断の愛というゴシップのような話だが、詠流はそれを笑うつもりはない。逆にお似合いだと詠流は思える。


「レイチェルさん。話をしてくれてありがとうございます」

「キミなら何かしでかしてくれそうな気がするからね。里桜お嬢様にもそろそろ友達の一人二人は作ってもらいたいのさ」

「はい。オレも里桜さんと、それにレイチェルさんとも友達になりたいと思ってます」

「さて、里桜お嬢様が目覚める前に朝ご飯の準備をしないとね。急ごう」

「はい!」


 朝よりも足どりが軽くなった詠流は、やる気に満ちあふれていた。


家令、執事、従者。ヨーロッパ風とかナーロッパ? とも言われる日本なろうの創作のお決まりでは、その役割は執事に一本化されている。


可能な限り各使用人制度の原点を、カジュアルさを損なわないように小説として成立させるという当

時のがんばり。


多くのなろう作品に出てくる執事は、本義的には従者に近いですよね。

けど、主人と従者の間にある直接の雇用関係、家令or執事の持つ人事権から外れることによる人間関係の確執。あたりは、存在さえ認知されていないのではないかな。


ちなみに家令、執事はお屋敷に1人、従者も主人や後継者に1人ずつ、という非常に少ない人数になります。

どちらも専門職です。


一般的な男性使用人は従僕フットマンになります。話が広がりすぎるので、物語には登場させていませんが。


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