帝国王と第二皇子
私達が謁見の間に入ると王族や貴族たち、国の重鎮であろう人々から一斉に視線を浴びた。
それは私への好奇心と蔑むような目線が交互に混ざり合い居心地の悪さを実感する。
ーー「第二皇子サリエル・ジェラード、バルハラ国の制圧を報告しに来ました。」
「そう硬くならずともよい。この度の戦争を終わらせ勝利した事、我が息子ながら誇らしく思うぞ。ご苦労であった。」
「ありがたきお言葉です。」
顔をあげることは出来ないが、目の前から感じる威圧感に帝国王という存在を実感する。
「さて、早馬にて聞いたがバルハラ国の幽閉されていた王女というのはその娘かの?」
「はい。城の敷地内の塔に幽閉されていたところを見つけ連れて参りました。」
「ほう、それでその娘が王族という確証はあるのか?王も王妃も逃げ出した国。誰の言葉も信用は出来まい。」
「その事なのですが、城に残っていた王子、王女がみな認めていた事。それと出生届も発見致しましたので確証はあるかと。」
自分の事ながら話の内容に心臓が飛び出してしまいそうだった。それに出生届などあるはずがない。もし嘘だとわかったら私はこの場で処刑されるだろう。背中には汗が流れて止まらなかった。
「それで王女だとしてどうするのだ?他の王族にはそれ相応の処罰を下したのだろう?ジェラードよ。」
「敗国した国の王女を人質として我が国へ置く事で確実に制圧するかと判断致しました。かのものはどこかの屋敷でメイドとしてでもおけば少しは価値があるかと。」
「常に戦場で最善の選択をするお前のことだ。その判断を認めよう。たまには褒美もいるであろうしな。ただこの者の責任は全てお前が取るのだ。この国へあだ名すことがあれば即刻処罰することになる事を忘れるな。」
「はい。帝国王の懐の深さに感謝致します。」
話を聞いていて私は本当にこのままでいいのだろうか?という言葉が頭の中をかけ巡る。ジェラード皇子の言うままにどこかでメイドをして生温い時間を過ごすことでいいのだろうか。もっとジェラード皇子の為になにか、なにか出来ないだろうか。私の価値はメイドしかないのだろうか。
……………………いや違う。違うはずだ。
ーーー価値などすぐに見つけるものじゃないだろう。それに化け物でもない。価値がないというならばこの国を含めてあなたは私のものだ。生きるためにあなたは戦ってきたのだろう?ならばその強さを私の為に使えばいいーーー
初めて会った時にジェラード皇子の言葉を思い出した。
そう、私はジェラード皇子のものだ。強さがあるならばそれもジェラード皇子のものだ。なにが出来るかわからない。でも私にも出来ることが、彼の為に、出来ることがきっと、、、そう目の前の王へ伝えなければ……………
爪が掌に食い込む。痛さが生きていることを実感する。息を飲んで私は目の前の帝国王へ声を出した。
「恐れながらに、発言する許可を頂けますでしょうか?帝国王さま。」