表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/15

国境を越えた先には

「見て下さい、ダリア様!あれが国境ですよ。あそこを越えると大きな森がありましてその先が帝国の首都になります。何もなければ夕刻には首都へ着く予定です。」

リリーさんの声を聞きながら前を向くと大きな門があった。古びた門の先には青空が見えてこの国から出ることを実感する。

その瞬間は緊張していて息を止めてしまっていた。古びた門を出るとそこには見渡す限り緑が広がっていて見たことがない森に好奇心が惹かれた。

「森の中には獣もいますので一気に駆け抜けますよ。揺れますのでお気をつけ下さい!」

「は、はい!」

リリーさんの言葉通り、一気にスピードが出た馬の上は揺れが激しく周りをゆっくり見渡す暇がなく緑の中を駆け抜けた。





ーー「さぁ、首都ですよ〜。ダリア様、ようこそ帝国へ!長旅お疲れ様です。不便をかけて申し訳ありませんでしたがようやく到着です。」

目の前に広がったのはバルハラ国とは比べ物にならないほどの大きな城が高台の中心にありその周りには大きな建物が連なっていてその下へ下へと屋敷が連なっていた。そしてその周りを高い壁が覆っていた。まさに帝国という名前に相応しい光景に思わず声がかすれる。

「これが、、、、帝国なのですね。」

「きっと世界一の先進国です!城の裏側には学園や研究所などまだまだ建物が続きます。広すぎて全てを把握するのには1週間はかかるかと思いますよ!」

「凄いとしか言葉が出てきません。」

「初めて来る方は皆そう言います〜。」

リリーさんと話ていると、前から騎士の方が近づいてきた。そしてリリーさんへ近づいて耳うちした。

「ーーーーわかりました。では、このまま城へ向かいます。」

なんだか、少し声のトーンが低いリリーさんへ不安な顔を向ける。

「ダリア様。お疲れのところ大変申し訳ないのですが、帝国王が謁見されるということなのでこのまま城へ向かうことになりました。」

「え?そう、、、、、、ですか。わかりました。」

急な展開に言葉が出てこず急に緊張感が増した。

でも少し冷静に考えると昨日まで戦争していた国の王族がのこのこと帝国に入っている事がおかしな話だ。それでもこんなにすぐに帝国の王様と会うとなると心臓の鼓動は一気に早まる。

「ジェラード皇子が一緒に謁見されるという事なのできっといい方向へ。帝国という国は無慈悲ではありませんから。私は信じています。ダリア様へ酷い対応がなされる事がないように私は祈ります。」

「リリーさん、、、ありがとうございます。」

リリーさんの言葉はとても嬉しく心に響いた。いままで私のことなど祈ってくれた人などいなかった。心の中で何度も感謝の言葉を繰り返した。




その後は2人とも無言で帝国の街を通過して城へ到着した。

ーー「ここでお待ち下さい。」

城の中に入ると客間へ通され1人にされてしまった。リリーさんとの別れ際にたくさんの感謝を伝えると涙目で「またすぐに会いましょう。」と抱きしめてくれた。優しい温もりに私は涙が出ていた。


品のいい調度品が並ぶ部屋に私はとても不釣合いで椅子に座るのも申し訳なくて、窓の側へ行くと外はもう暗くて何も見えなかった。

そしてそのまま次に訪れる出来事を待っていた。



ーーコンコンッとドアのノックする音が聞こえた。

「ジェラードだ。入るぞ。」

ガチャンとドアノブの音がして振り向くとそこにジェラード皇子とキルさんの姿が見えた。

「到着してすぐにすまないな。疲れているだろうから明日にでも謁見させるつもりだったが今日するということでな。このまま謁見の間へ行く。」

「ダリアちゃんごめんね〜。俺達が着く前に早馬で知らせたら王様が興味持っちゃったみたいで。第二皇子が慣れないことするから〜。」

「キル、うるさい。とりあえずは悪いようにはしないから安心しろ。キルも手はず通りに話を進めてくれ。」

「はいはい〜。任せて〜」

「あの、私はどうすれば、、、いいのでしょうか?」

「そんな顔をするな。王に何か聞かれたらダリアの思っている事を話せばいい。私は君を信じてる。ただ、王は利益がない事はしない人間だからのんびりと帝国に居る事は出来ない。何かしらの対価を払うことは承知してくれ。」

「わかりました。ただ私に払える対価などありますか?私は剣が少し使えることくらいしか、、」

「大丈夫だ。うちの屋敷のメイドにでもなってもらうように話は進めるからな。そんな顔をするな。」

そう言いながら私の頭を優しくジェラード皇子がなでた。手のひらのぬくもりに少し安心する。

私に払える対価などないと思った 。塔の中から出た私には自分の物など何もない。

それでもこれから先、私はメイドになるだけでいいのだろうか?私に出来る事はそれしかないのだろうか?もっとなにかーーー






「さあ、行こうか。」

ジェラード皇子の声で3人は客間を出た。

彼女のこれからが左右される出来事はまだまだ続く。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ