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初めての笑顔

朝の目覚めはドアのノック音だった。

ーコンコンッ「おはようございますダリア様。リリーです。お目覚めでしょうか?」


思わずはっとして、一瞬で目が覚めた。昨日のことは夢ではなかったのだ。こちらが現実だった。そして寝坊してしまったことに背中に汗が流れて急いでドアを開ける。

「あのっ、今起きてしまったのですが、、、」

「っと!おはようございます。大丈夫ですよ。まだ出発には時間がありますから!私はダリア様の身仕度を整えにきたのですよ。」

「そうなのですか。てっきり寝坊してしまったかと。」

「むしろまだ外は暗いですし、早すぎるくらいですよ。眠いかとを思いますが着替えと軽く食事をお願いしてもいいですか?着替えはお手伝いしますか?」

「ありがとうございます。着替えは1人で大丈夫ですから少し待っててもらえますか?」

そう言いながら、服を受け取って衝立の向こう側に回る。シンプルな服は肌をあまり露出しないデザインで助かった。足の傷は治っているがその前についた傷跡が身体中にあるのはリリーさんに見られたくない。醜い姿を見て幻滅されたくなかった。


着替え終わるとリリーさんに椅子に座るようにすすめられた。

「少し髪をとかしてまとめますね。失礼します。」

優しい手つきで私の髪をくしを通しはじめた。

「やっぱり、綺麗な髪ですね〜!」

「そんなことないです。リリーさんのおかげですから。面倒をかけてすいません。」

「私が好きでやってることですから謝らないで下さい。さっ、少し食べたら外へ向かいましょう!ついに帝国へ出発ですよ。」

鏡を見るとボサボサだった髪が綺麗にまとめられていた。身なりを整えた自分は別人のようで本当にこの国を出てもいいのか不安になる。



リリーさんと軽く食事をしてから、城の門へ向かった。外へ出ると薄暗い中にもたくさんの馬がいるのが見えて驚いた。すると前からジェラード皇子が現れた。

「朝早くからすまんな。この時間に出ないと今日中に帝国につかないからな。昨日はよく眠れたか?」

「はい。」

「なら良かった。足の方はどうだ?悪いがアリーチェ・リリー騎士の馬に一緒に乗ってもらう予定なのだが。」

「大丈夫です。治療して頂いてありがとうございます。」

「あと興味もないかと思うが一応、伝えておくとこの国の愚息共の処分はこの国の僻地での無償活動と修道院への幽閉に決まった。会うこともないだろう。」

「そうですか、、、私、私は本当に帝国へ行っても大丈夫なのでしょうか?」

「大丈夫だ。私が決めたんだ。ダリアは気にするな。それより移動中、具合が悪くなったらすぐに言うんだぞ。」

そう言いながらジェラード皇子は私の頭を撫でた。

何回目かのその行為は私をとても安心させ、彼の言葉を納得させる。この国を出ることに私は心臓は音が聞こえそうなほど脈打っていた。この感情は罪悪感なのか不安なのか何かたくさんのものが混ざり合っていた。

そんな感情を彼の暖かい手が触れると消えてしまう。安心してしまう自分がいる。

前を向くと彼は優しい笑顔を向けてくれた。




その後、ジェラード皇子はリリーさんと少し話をしているとキルさんに呼ばれて行ってしまった。その背中を見えなくなるまで見つめた。


「そろそろ私達も行きましょうか!私の馬に一緒に乗ることになってますのでしっかり私につかまって下さいね!」

リリーさんに声をかけられて周りの人達が少なくなっていることに気づく。

「1人で登れますか?揺れが激しいかと思うので具合が悪くなったらすぐに言って下さいね。」

「大丈夫です。迷惑かけてばかりですいません。」

「こういう時は「ありがとう。」って言うんですよ!謝ってばかりではいけません。せっかく外へ出るのですから前を向いて、外を見るんです!」

リリーさんが馬の上から手を伸ばながら私の目を見て言う。

リリーさんの言う通りだ。前を、外を見よう。せっかく塔の中から出たのだ。リリーさんの手を取って馬に乗る。前にはリリーさんと城の門。新しい景色を見るんだ。

リリーさんに伝えよう。この気持ちを、、


「あ、ありがとうございます。あと、その、、よろしくお願いします。」

「はい!もちろんです。ようやくダリア様の笑顔が見られました!皇子より私が最初なのは申し訳ないけど!では、出発しますよ!!」


そしてリリーさんの馬は門を出た。

顔を撫でる風が気持ちいい。


城の外は馬の走り始める音が響いていた。

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