皇子は出会う
ーカツカツカツッ
塔の螺旋階段に靴の音が響く。
「本当にもう1人王族なんていると思うか?」
階段を登りながらジェラードは隣の騎士に聞いた。
「さぁね〜、罠かもしれないけど帝国としては一応確かめないと。あの雰囲気で嘘をつける勇気はあの馬鹿王子達にはないと思うけどね。」
友人でもあるこの騎士、キルの答えにジェラードは溜め息をした。
「でもこんな幽霊が出そうな塔にいるっていうのは信じがたいね。いくら王と召使いの子だったとしてももう少しマシなところに閉じ込めてそうなものだけど。俺、幽霊とか苦手だしさっさと確認して戻ろう。」
キルの言葉に答えようとすると、、
ーラララ〜、マリーゴールド〜ラララ〜♪
オレンジ色の明日にはラララ〜、幸せ色のマリーゴールド〜ラララ〜♪ー
綺麗な歌声が聞こえてきた。
「おいおい、聞こえてるの俺だけじゃないよな、ジェラード?俺、めっちゃ怖いんだけど!!!」
キルが言いながら腕を掴んできた。
「気色悪いな。仮にも王族付き騎士が王族に掴まるなよ。さっさと行くぞ。」
キルの腕を引き剥がして、声のする扉の前まで駆け上がってきた。
「おい、置いてくなよ!。ってこのボロ扉の前から声が聞こえるけど、、、、」
「鍵がかかってるな。力づくで開けるか。」
「待てって!俺、心の準備が、、、っておい!!」
キルが言い終える前に扉を蹴飛ばして開けた。
ーその瞬間、歌声が消えた。
中は薄暗く、小さな窓から光が漏れていた。
部屋というより、牢屋のような部屋の端にテーブルと椅子があり椅子にグレーの髪の毛の人がいるのがわかった。
「どちら様ですか?」
歌声よりも少し低い、女の声に問いかけられた。
「ゆ、幽霊!?!?」
耳元でキルの叫び声が響いて、思わず睨んだ。
「キル、うるさいから黙ってろ。幽霊じゃないだろ。足がある。」
「私は帝国の第二皇子、サリエル・ジェラードだ。ここにバルハラ国の王族がいると聞いてきたのだがお前のことか?」
「私は、、、、王の子であると聞いた事はありますが、名もない人間でございます。王族かと聞かれても答えかねます。」
「王の子ならば王族だろう。今日、バルハラ国は帝国の物となった。あなたにも処分が下る。」
そう言って、女も広間に行くようにキルに指示すると、女は私の前に跪いた。
「帝国の第二皇子とは知らず失礼致しました。もし私を王族としてみて頂けるのならばこの首を差し出しましょう。この度の戦は全て王族が悪いのです。この国の民は何一つ悪くはないのです。戦場に行けば金貨が貰えると、税を軽くすると。領主に言われて騎士でもない民ばかりが戦場にいたのです。帝国の政治はバルハラ国とは違うと聞いています。どうか慈悲があるならば私の首で民には減刑をしてもらえないではしょうか?」
女は言い切ると同時に泣いていた。