暖かい時間
「ジェ、ジェラード様!?」
急な来客に思わず立ち上がる。
「そんなに驚かないでくれ。途中で止まてしまってすまな「本当っにそうです!綺麗な歌声に聞き入っていましたのに!!!いくらジェラード皇子様とはいえ空気を読んで下さいませ!!」
「あぁ、、、、すまないな。」
ジェラード様の後ろからお盆に紅茶とお菓子をのせたシェリルさんが現れた。
「ダリア様はとても歌がお上手なのですね!!素敵な歌声です!あっ、お茶が入りましたのでジェラード皇子もよろしかったらどうぞ。」
シェリルさんの勢いに私もジェラード皇子も思わず顔を合わせて苦笑いした。
「この家の中でシェリルとメリサ、執事にだけには頭が上がらないんだ。」
と小声でジェラード様が耳元で言うのでまた笑ってしまった。私の髪を耳にかけながら
「やっぱり笑ってる方がダリアは似合うな。」
と言われて顔が熱くなる。
「ジェラード皇子。私も居ることをお忘れなく!!まぁ、口は堅いのでご安心下さい。それにこんなに口数が多いなんて知りませんでしたわ。」
「そんなつもりはないぞ。それにシェリルが口が堅いのも初めて知ったぞ。」
「私はメイドとして仕事に忠実ですから!それにこんなジェラード皇子は貴重ですから私の目に焼き付けないと!!」
美味しい紅茶とお菓子を食べながらこのやり取りをずっと見ていたかった。暖かい日差しがこの場の雰囲気を表すように優しい時間が続く。
「そういえばダリア、もう二日後になるが武闘会では何を使う?君が使っていた剣は男性用だったと思うんだが、、、」
「はい。適当に渡されたものを使っていたので、、出来れば小振りの方が良いのですが。」
「わかった。準備させよう。足の方はどうだ?」
「お手数をおかけしてすいません。足はかなり良くなりました。お邪魔でなければどこかで鍛錬しても良いですか?」
「そうか、良かった。良ければ私と稽古でもどうかな?」
「い、いえ!そんなご迷惑は、、」
「この通り無理やり有休を取らされてしまって私もやる事がないんだ。私も稽古がしたいからダリアは私の稽古相手だと思ってくれていい。」
「そういうことでしたらぜひ、、こちらこそよろしくお願いします。」
その会話から数時間後、私達は同じ中庭で剣を構えていた。
先程の雰囲気とは違って今は汗が顔を流れる。
稽古とは言っても私の剣は自己流で全てがめちゃくちゃだということを教えられジェラード様に基本の剣の振り方を教わっている。
「ほどほどにして下さい。」
というシェリルさんの声が聞こえるまで集中していたらしく周りはもう暗くなっていてやれやれという顔がシェリルさんに貼り付けられていた。
そして次の日もその次の日も同じ日を過ごして気づけば武闘会当日になっていた。