可愛いメイドは
次の日、顔に暖かい日差しを感じて目が覚めた。もうすっかり日が昇りきっていて太陽の位置から朝ではないことを確認する。どうやらふかふかのベッドは私を随分と休ませてくれたようだ。
ーコンコンッ
「失礼いたします。お目覚めになられましたか?メイド長のメリサでございます。」
「は、はい。」
まだ少し寝ぼけながら答えるとメリサさんともう一人、メリサさんと同じ格好をした少女が部屋に入ってきた。
「よくお休みになられましたか?」
「はい。昨日はありがとうございました。」
「いいえ、私はなにも。ゆっくりお休み出来て良かったですわ。こちら、今日からダリア様付きのメイドになりますシェリルといいます。シェリル、ご挨拶を。」
「はじめまして!シェリルといいます。よろしくお願いしますね!!」
「えっと、、私なんかにメイドをつけて頂くなんて申し訳ないです。私は一人で大丈夫ですから。」
「そういう訳にはいきませんわ。ジェラード皇子からのご命令で屋敷で不便があってもいけませんということですから。それに屋敷内でのことは私に任せられてます。」
昨日の夜と同じく有無を言わせないオーラを出しながら言われてしまった。
メリサさんの隣にいる彼女はピンク色の髪を綺麗にまとめていて茶色の瞳が綺麗な可愛いという言葉がぴったりな少女だった。目が合うとにこにこと笑顔を向けてくれた。あまり迷惑をかけないようにしようと思いながら挨拶をした。
「わかりました。シェリル、、、さん?申し訳ありませんがよろしくお願いします。」
「シェリルで大丈夫ですよ!大抵のことはお任せ下さい!!」
「シェリル、張り切り過ぎないように。ダリア様と歳も変わらないでしょうから気軽に申し付け下さい。それともうお昼になりますがお食事を先にお持ちしてよろしいでしょうか?」
「え!?お昼なんですか?私、寝すぎてしまいました。」
「昨夜は遅かったですから仕方ありませんわ。それにジェラード皇子から「起こすな。」と言われていましたからお気になさらないで下さい。ジェラード皇子はすでに登城していますので、お部屋へお持ち致しますがよろしいですか?」
「そうだったんですか。わかりました。ではお願いします。」
シェリルさんに手伝ってもらって動きやすいワンピースに着替えると部屋に食事が用意されていた。
「あまり食事の量を取れないとのことでしたので食べやすいスープなど中心にしています。」
「ありがとうございます。」
「無理のない程度に召し上がって下さいね。苦手なものがあれば仰って下さい!次回の食事の参考にさせて頂きます。」
「特には、、、こんなに贅沢な食事を取れるだけで幸せですので。」
「そんな謙虚な!私なんて好き嫌いが激しくてよくメリサメイド長に怒られるんですよ。」
そういって頰を膨らませている姿が凄く可愛いかった。
食事が終わると中庭に案内されお茶でも飲みましょうとシェリルさんに誘われた。
「ここのお屋敷の中庭はとても素敵なんです。綺麗なお花が季節ごとに咲いてどの季節も飽きませんよ!!」
「そうなんですか。」
「ジェラード皇子は意外とピュアな部分がありまして、綺麗なお花を見るのがお好きだそうです!そういえばダリア様のお名前もお花の名前ですね!」
「ええ、この名前はジェラード皇子が付けてくれて、、、」
「まぁ!それは素敵ですね!!時期になると中庭にもダリアの花が咲きますよ。綺麗なので楽しみにして下さいね。」
3日後には武闘大会に出て、その後はわからないがこの屋敷にいることはないだろうな。と思ったがシェリルさんの目があまりにも輝いていたので言うのをやめた。そうこう話ている間に中庭への扉の前に着いていた。
「こちらが中庭になります。」
そう言って開けてくれた扉の先は想像以上に美しい景色が広がっていた。
まるでここが天国だと言われても信じてしまいそうなほど綺麗だった。赤、白、黄色と色とりどりの花が庭の中心にある噴水を囲むように咲いていた。
「とても、、、綺麗ですね。」
「そうですよね!!帝都でも一、二の美しさの庭だと思います。では、お茶を用意してきますのでこちらでお待ち下さい。」
そう言ってシェリルさんは庭から出ていってしまった。
一人にされ思わず噴水の前へ向かい花を眺めると自然と口が開いた。
ーラララ〜♪ラ〜ラララ、ララ〜♪
ラララ〜、マリーゴールド〜ラララ〜♪
オレンジ色の明日にはラララ〜、幸せ色のマリーゴールド〜ラララ〜♪ー
「いつ聞いても綺麗な歌声だな。」
声がして驚いて振り返るとジェラード様が扉にもたれかかってこちらを見ていた。