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彼女の思いは

屋敷に着くと年配の女性が優しく接してくれた。彼女はメイド長のメリサさんという方で、何十年もジェラード皇子に仕えているという自己紹介を受けた。夜も遅いのに暖かい料理と暖かいお湯を用意してくれていてテキパキと案内された。寝室にという部屋はベッドとテーブルだけのシンプルだか品の良い部屋で落ちついていた。メリサさんは入浴する時以外、有無を言わせない動きで断る隙もなく、気づくと寝間着に着替えさせられ「おやすみなさいませ。」と姿勢のいいお辞儀をして部屋を出ていってしまった。急に1人にされてしまった部屋でふかふかのベッドに座ってみる。ベッドは私が3人程寝れそうなほど大きく柔らかく沈む心地よさに高級さを感じ、その感触が楽しくて思わず寝転んでみるとすぐにでも寝れてしまいそうで天井をうとうとと見つめてしまう。すると急にドアのノック音が聞こえた。


ーコンコンッ

「ジェラードだがまだ起きているか?」

聞き慣れた少し低い声に驚いて一気に目が覚めた。ベッドから飛び起きて声の方向へ向かってドアを開ける。

「は、はい!!」ーガチャッ

「夜遅くにすまないな。少し話ても大丈夫か?」

「だ、大丈夫です。」

少し寝ぼけた声で部屋の中にジェラード皇子を案内すると、窓に向かってこちらに背を向けてしまった。帝国王に勝手に意見してしまったから怒っているのか、なんともいえない雰囲気が続く。沈黙が続く空間に彼の綺麗な金髪を眺めてみる。格好のいい体格に白い騎士の正装であろう服を着ている彼は夜の窓縁に囲まれてまるで一枚の絵のようだと思っているとふいに彼が話始めた。


「君が帝国王に話したことは理解出来なかったよ。」

急に言われた一言に心臓が早く脈を打った。

「そう、、、、ですよね。」

「ダリア、君には少なくとも安全な暮らしを知って欲しかったんだ。」

「ジェラード皇子のお気持ちはとても嬉しいです。でも私は与えられたままではいたくないのです。この数日で私は初めて柔らかいパンを食べました。初めて人に髪を切ってもらいました。初めて頭を撫でてもらいました。人の手は暖かいと、優しいと初めて知りました。私には身に余る幸せなのです。」

「そんな事を言うな。これから毎日そう過ごしていけばいいだろう?なぜ茨の道を選ぶんだ?」

「私は茨の道を選んだつもりはありませんよ。私はジェラード皇子の為に生きたいのです。塔から連れだして幸せを教えてくれたジェラード皇子に似合う価値になりたいのです。なにが出来るかわかりません。何も出来なければこの身を盾に貴方を守ります。我儘を言っているのは充分承知してます。それでも側にいることを許して頂けませんか?」

私の思っていることを全て吐き出した。これで呆れられて追い出されてもしょうがない。私の我儘なのだ。そう思ってジェラード皇子の答えを待つ。






「やはり俺は君を見誤っていたみたいだ。」

「えっ?」

「兄さんに言われたんだ。箱庭に閉じ込めておくつもりだったのかって。俺はダリアがそうしたいなら止めない。君の人生なんだ。止める権利はない。だが、俺の盾になんてならなくていい。自分の身くらいは自分で守れる。」

「ありがとうございます。でも王に勝手に話をしてしまってすいません。」

「そうだな。あの時は流石に肝が冷えた。次からは俺に一言相談してからにしてくれ。」

そう言ってようやく笑ってくれた彼に私もつられて笑った。

「後、2人きりの時はジェラードでいい。皇子なんて柄じゃないんだ。」

「それは、、、」

「俺がいいって言ってるんだ。」

「ではジェラード、、、様で。」

「まぁ、いいか。それで。もう夜も遅いしこれで失礼するよ。ゆっくり休んでくれ。」

言いながらに頭を撫でるのはもう彼の癖なのか慣れたように撫でて部屋を出て行こうとする。

「あ、あの!本当にありがとうございます。なにからなにまで、、、」

「俺は何も。これからはダリア次第だ。まずはここでよく寝てよく食べてくれ。じゃあおやすみ。」

ーガチャ


最後に笑顔で言いながら部屋を出て行ってしまった。笑顔で出て行くなんてずるい。怒られて呆れられて屋敷から出される覚悟もしてたのに、、、あの緊張感を返して欲しい。




私の思いを受け入れてくれた彼には感謝しかない。これから頑張って彼に恩返ししようとさらに胸に刻んでふかふかのベッドで目を瞑る。ふかふかのベッドは一気に眠りにつかせてくれた。

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