第一皇子と第二皇子
ダリアが屋敷に行った後の腹黒な第一皇子と純粋な第二皇子のお話です。
ジェラードはダリアと別れた後、兄の第一皇子に呼ばれ彼の書斎へ向かった。
ーーこの帝国には三人の皇子が存在していて、第一、第三皇子は現王妃との子で第二皇子は側室との間の子だった。隣国の姫だったジェラード皇子の母は元々身体が弱く皇子が10歳の時に亡くなった。その後は城内の人間が腫れ物を扱うように接しられていたジェラード皇子が今までと変わらず接していたのが兄のヒューバート皇子だった。
騎士という道を教えてくれ帝国の中での存在を確立してくれたのは兄で、普段は何を考えてるかわからないように笑顔を貼り付けているが帝国で一番の策士であるであろう彼には頭が上がらない。
と兄を崇拝しているジェラードだった。
兄の書斎に向かうまでに頭の中で不愉快な感情がぐるぐると巡る。先程まで隣にいた彼女の発言が理解出来なかった。
ーーコンコン
「ジェラードです。ただいま参りました。」
「入れ。」
扉を開けるといつもと他所向けの笑顔ではない柔らかい表情のヒューバート兄さんがいた。
「お疲れ様だったね。部屋には僕しかいないからいつも通りで構わないよ。」
「あぁ、今回も兄さんの作戦のおかげでだいぶ助かったよ。」
「僕は少しアドバイスしただけだよ。後は、ジェラードの実力さ。それより、随分と大胆な事をしたね。僕はてっきり女には興味ないと思ってたんだけど面白い娘を連れ帰ってきたね。」
「あれは、、、」
「それに予想外に面白くて笑いを堪えるのが大変だったよ。幽閉された王女は強いね。3日後が楽しみだ。」
「兄さん!!俺はそんなつもりで連れてきた訳じゃないんだ!」
「そんなに熱くなるなんて珍しいね。同情でもしたのかい?それとも帝国で豊かな生活がしたいと色仕掛けでもされた?」
「違う!違うんだ。彼女は、、ダリアは唯一自分を犠牲にしてまで民を救おうとしていたんだ。奴隷のような扱いの中で生きていた彼女を俺は少しでも報われて欲しいと思ったんだ。少なくとも安全な暮らしを知って欲しかったんだ。なのに、、、」
「ジェラード。それは君のエゴだよ。彼女は
君の敷いたレールの上は歩かなかった。だからイライラしてるのかい?顔が怖いよ。君の考えた通りに話が進んでいれば、彼女は生涯帝国で暖かいベットで寝て暖かい食事を繰り返して安全になにもない人生だろうね。これが幸せだと言い聞かされて、、、まるで鳥籠の鳥のように。」
「そんなつもりは!!」
「僕らは勝利国だ。決定権はこちらにある。ジェラードの言う通りにするのが一番賢いはずなのに彼女は鳥籠の鳥になる気にはならなかった。その度胸には感服するよ。それをあの帝国王に言うんだから。」
「俺は押し付けていたのか。」
「まぁ、君なりに考えてあげたのは彼女もわかっているとは思うよ。頭のいい子に見えたからね。」
「そうだといいが。」
「それとジェラードがわがままで連れてきたのを王は父として黙認してるから少しは楽に話をしなよ。今まで女に見向きもしなかったと思ってたのに「第二皇子が連れてきた女だと!?」って控室で早馬の騎士に問い詰めてたんだから〜」
「それは、、、」
「君達親子はお互いに距離を取りすぎなんだよ。彼女の話で少し会話が出来るかと思ったのに馬鹿な弟が話を邪魔したからね。あれもそろそろ大人になってもらわないと。」
そう言ってニヒルな笑みを浮かべる兄は敵に回すと恐ろしいということを再確認させる。
「もう遅いし、疲れてるでしょ。ジェラードの事だろうから彼女、、えっとダリアちゃんともあの後ろくに話してないだろうしもう屋敷に戻ってゆっくり話でもしな。」
「あぁ、ありがとう。兄さん。そうするよ。」
そう言って部屋から出ようとすると背中から声を掛けられた。
「そうそう君とキル君のもろもろの捏造は僕のところで止めてあげるから安心しなよ〜。おやすみジェラード。」
一瞬、足が止まったが恐ろしくて振り向けなかった。きっと笑顔で言っているに違いないやはり兄は敵にできない。
兄の書斎を出て足早に城を出る。早く屋敷に帰ろう。ダリアと話がしたい。先程は少し冷たくしてしまった。嫌われてしまっただろうか、、、きちんとダリアの話を聞こう。屋敷で不便はないだろうか、、、などと
屋敷までダリアのことだけを考えて向かうジェラード皇子であった。