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帝国王と王女

一瞬、空気が止まった気がした。この空間にいる全員からの視線を感じる。横にいるジェラード皇子からはゴクリと唾を飲む音が聞こえた。頭を下げ膝を床につけている体勢を続けながら私は目の前の王からの回答を待つ。



「許可しよう。頭を上げよ。」


その瞬間、私の心臓は人生で一番早く鼓動をうっていただろう。バクバクと胸が張り裂けそうだ。上手く呼吸も出来ているかわからない。それでも私は全てを伝えようと顔を上げて王を見つめそして口を開いた。


「ありがとうございます。私はバルハラ国第四王女ダリアと申します。この度は帝国王様の慈悲深い処分に感謝致します。ですが人質として来た身、自由がないのは承知ですがどこかのメイド、、、、ではなくこの身を使って帝国の、、、ジェラード皇子様の役に立ちたいのです。」

「ほう、面白い。それでそなたは何が出来るのだ?言うてみよ。」

「私が持っているものと言えばこの身のみでございます。もし剣を使うことを許して頂ければ国境だろうと辺境の地であろうとどこでもこの身を帝国へ捧げる思いです。」

言った後に隣にいるジェラード皇子を横目で見ると目を見開いていた。幻滅しただろうか、呆れているのだろうか。彼のひいたレールの上を歩かない私に。彼の唇が開こうとした瞬間に広間に笑い声が響いた。


「ふははははははは。面白い!元王女よ。その棒切れのような腕と足で何が出来る?我が国の市井の子供より痩せている身ではないか。なにが出来るというのだ。それでは獣への生け贄だぞ。」

「恐れ多くも私はかの国で獣の討伐を行っていました。戦って戦って生き抜いてきました。それ以外は何も出来ません。もし死んでもそのまま放っておいても構いません。」

「それを信じろというか?」

「私がここで嘘を言える立場でないことは重々に承知しています。」





ーー「父上!この者の言う事を信じるのですか!?先程から聞いていればただ己の不遇で同情を買おうとしてるだけではないですか?」

「サーリス皇子よ。お主はそう思っているか?」

「どう見てもそうではないですか。小汚いネズミをこの帝国に入れるのですか!?」

少年が汚いものを見るように私を睨んでいた。

顔を上げてわかったが帝国王の横には王妃、その隣にはジェラード皇子より歳上の青年と歳下の少年が座っていた。後者の少年が王に意見していた。


王は少し考えた後に口を開いた。

「ふむ。ではこうしよう。3日後に開かれる騎士学校の武闘会に元王女も参加せよ。サーリスも出るじゃろ?そこでの結果次第で元王女の振り幅を考えよう。」


「父上!」」

「父上!!!」

先程の少年とジェラード皇子の声が重なった。周りはザワザワと貴族同士が小声で話している。



ーー「ええい!!!反論は聞かぬ!!これは決定事項だ!」

王の一言で広間は静まりかえった。

「もう遅い。3日後まではジェラード皇子が預かれ。お主が連れてきたのだからな。ジェラードよ、この度はご苦労であったな。しばし休め。」

そう言い残して王は席を立った。

続いて周りの人達も広間を後にしていった。


「私達も出よう。」

ジェラード皇子にそう言われて彼の後ろに続く。広間に出てから彼に話かけた。

「あ、あの。勝手なことをすいません。」

沈黙が続く。勝手なことをした私に怒っているのだろう。


「・・・とりあえずは私の屋敷へ行ってくれ。馬車を用意してあるからそれで。城の者に案内させよう。」

そう言って近くのメイドに彼は声をかけて居なくなってしまった。こちらを一度も見てはくれなかった。その後は馬車まで案内されてそのまま城を後にした。


私は間違ったことを言ったかもしれないがそれでも王の前で言ったことに後悔はしていない。

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