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せめて記憶の中にでも  作者: 鴻ノ木悠里
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Climb against 1 : 眠りに落ちる前に


昔々あるところに。

自然豊かで長閑な王国がありました。

四方を広大な森に囲まれたその国は、他国との交流も緩やかながら良好で、国民同士の諍いや王政への不満もなく、皆が幸せに暮らしています。

他人への憎しみもなく幸せなその国には、優しく穏やかで誰からも好かれる王子様がいました。

国民のことを第一に考える王様やお妃様を見て育った王子様は、時折密かに王城を抜け出して、身分を伏せて街中へと繰り出し、色々な経験を積んでは、彼なりにこの国の在り方を考え続けていました。


そんなある日のこと。

王国を取り囲む広大な森からの帰り道、王子は地面に倒れ込んでいる女性に手を差し伸べていました。

「咄嗟のこととはいえ、突き飛ばしてしまって申し訳ありません。お怪我はありませんか?」

殊に気の弱そうな女性を突き飛ばしてしまったことは不本意ですが、一刻を争う状況でしたから、仕方のない選択だったと言えます。

一方の女性はといえば、何が起こったのかが理解できないまま、自分に向かって突然倒れてきた大木に目をやっています。

「えと、大、丈夫です」

やっと状況が飲み込めたのか、おずおずと王子の手を取りゆっくりと立ち上がりました。

彼女の言葉通り、服や肌が土で汚れているものの大きな怪我はないようで、王子はほっと胸を撫で下ろしました。

「ご無事で何よりです」

「あの、ありがとうございました。それじゃあ私はこれで……」

彼女は顔を真っ赤にしながらそれだけ言うと、王子との会話もそこそこに駆けていってしまいました。

王子としては念の為家まで送り届けるつもりでしたが、転んでしまったところを見られてしまい気まずかったのか、足早に立ち去ってしまったので引き止めることはしませんでした。

「考えれば、見ず知らずの男に家までついてこられるというのは、かなり怖いことでもあるか」

そう考え直し、彼女の背中を見送った後、踵を返して歩き出しました。

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