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自作小説倶楽部 第18冊/2019年上半期(第103-108集)  作者: 自作小説倶楽部
第104集(2019年2月)/「氷雪」&「教育」
9/26

03 E.Grey 著  教育 『極秘文書の件 2 公設秘書・少佐』

   //粗筋//


 公設秘書佐伯祐が、リムージンで、長野県月ノ輪村役場にやってきた。そこに努める助手で婚約者の三輪明菜を無迎えにきたのだ。リムージンが向かった先は、某財団の別荘だった。重大事件があったようだ。

挿絵(By みてみん)

挿図/Ⓒ奄美剣星 「少佐と呼ばれた秘書」



     2 教育


 某財団会長は、岸本という人で、日本国内はもちろん、海外の財界にも人脈がある。佐伯が公設秘書をやっていた島本センセイとは、同郷の長野県人で、大学の学友でもあった。その島本先生は、建設大臣のポストに就いていた。

 岸本会長の別荘は、広大なゴルフ場のただ中にある。応接室から、窓越しにゴルフ・コースが望めた。

 岸本会長が、長椅子に腰掛けた佐伯と私に言った。

「君が噂の〝少佐〟こと佐伯君か。そしてお隣に座っているのが、助手の三輪さんだったな。事情は島本閣下から聞いているよ」

「――閣下か……いつもは呼び捨てにされている」

 島本センセイがチャチャを入れた。そして、事件の概要を語り始めた。

「担当直入に言おう。車のトランクに収めていた極秘文書がすり替えられていた。――直後に、大臣秘書官の水野という男が姿を消した」

「警察には?」

「安保条約にも関わる話だ。野党に食いつかれでもしたら面倒だ。大っぴらにはできない」

「そこで、僕に探せというのですね?」

「警察にもある程度協力させる。しかし連中には真相を明らかにはしていない。――機密文書は、報道機関にもれたら、内閣総辞職あるいは、政界再編に繋がりかねないぐらいのものだ。――そのあたりよろしく頼むぞ」

「かしこまりました」

 佐伯が慇懃に立ち上がり一礼したので、私も合わせて一礼した。

 島本センセイが、ポンポンと手を叩いた。すると、隣の小部屋に控えていた色白細面の女が入ってきた。モデルみたいな、バン・キュッ・ボン体型だ。女が、流し目をやった。――佐伯が視線を受け止めている。――おのれ、泥棒猫! ――いや、まだ佐伯に手を出していない。だから泥棒猫予備軍としておくにとどめておく。ちぇっ。

「安田次官だ。岸本会長とプロジェクトを詰めるんで連れて来たんだ」

「プロジェクト?」

「佐伯さん、内部資料です。やれないからメモも最低限にして頂きたい」

 安田次官が持ってきたファイルは、駐留アメリカ軍基地再編に関連したものだった。水野秘書官は、大臣公用車トランクから極秘文書を奪って、何処かへと消えた。

「知っての通り、現在、アメリカ合衆国とソヴィエト連邦(現ロシア)の両国が、核兵器を持っていたものだから、直接戦争ができず、最前線の小国で代理戦争をやっているヴェトナムだ。アメリカはヴェトナムの内戦に介入している。日本は、実質、そのアメリカの後方基地になっている。――基地再編計画の極秘文書が仮想敵国ソヴィエトに渡ったりしたらえらいことになる」

「水野秘書官は、ソヴィエト大使館に駆けこまなかったのですか?」

「水野秘書官を麻薬密輸業者に仕立てて、指名手配をしておくことにした。大使館、空港、港湾施設には全国の警察官が張っている」

「そこまでなさっているのでしたら、私が出しゃばらなくとも……」

「いや、ソヴィエトは、必ず裏をかいて水野を国外に逃亡させることだろう。――佐伯君、敵がどう出るか、予想して欲しいんだ」

 佐伯は立ち上がると大臣に言った。

「機密文書を載せていた公用車を拝見させて頂けませんか?」

「私がご案内しましょう」

 安田次官が慇懃に一礼した。かなりの巨乳で、彼女がお辞儀したとき、それがプルンプルン揺れて、スーツのボタンが弾け飛ぶ勢いだった。佐伯がその様を凝視していたのは言うまでもない。――お嬢さん、オッパイが落ちないように手をお貸ししましょう――と言いだしそうだし、〝猫〟めも――ええ、お願いするわ――なんて答えそう。……もうっ、いやらしい……佐伯、覚悟しなさい。後で苛めてやる。夜になったらベッドで苛めてやる。……はっ、何を取り乱しているの、私!

 グルグルグル……。

 そういうわけで私達は、玄関の外に出た。

 財団会長が迎えにきたロールスロイス同様に、大臣用公用車もロールスロイスだった。

          つづく

  //登場人物//


【主要登場人物】

佐伯祐(さえき・ゆう)……身長180センチ、黒縁眼鏡をかけた、黒スーツの男。東京に住む長野県を選挙地盤にしている国会議員・島村センセイの公設秘書で、明晰な頭脳を買われ、公務のかたわら、警察に協力して幾多の事件を解決する。『少佐』と仇名されている。

三輪明菜(みわ・あきな)……無表情だったが、恋に目覚めて表情の特訓中。眼鏡美人。佐伯の婚約者。長野県月ノ輪村役場職員。事件では佐伯のサポート役で、眼鏡美人である。


【事件関係者】

●島村代議士……佐伯の上司で建設大臣、衆議院議員。センセイと呼ばれている。本事件の依頼者だ。

●岸本会長……某財団会長。島村センセイの学友。中軽井沢に広大な別荘を構えている。

●安田次官……建設省官僚。グラマラスな美女。

●水野秘書官……国務大臣秘書官。

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