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自作小説倶楽部 第18冊/2019年上半期(第103-108集)  作者: 自作小説倶楽部
第104集(2019年2月)/「氷雪」&「教育」
8/26

02 柳橋美湖 著  氷雪 『北ノ町の物語』

【あらすじ】

 東京のOL鈴木クロエは、母を亡くして天涯孤独になろうとしていた。ところが実は祖父一郎がいた。手紙を書くと、祖父の顧問弁護士・瀬名さんが夜行列車に乗って迎えにきた。そうして北ノ町に住むファミリーとの交流が始まった。お爺様の住む北ノ町は不思議な世界で、さまざまなイベントが起こる。……最初、怖い感じだったのだけれども実は孫娘デレの素敵なお爺様。そして年上で魅力をもった弁護士の瀬名さんと、イケメンでピアノの上手なIT会社経営者の従兄・浩さん、二人から好意を寄せられ心揺れる乙女なクロエ。さらには魔界の貴紳・白鳥さんまで花婿に立候補してきた。しばらくして、クロエは、お爺様の取引先の画廊マダムに気に入られ、秘書に転職した。

 クロエは、マダムと北ノ町へ行く夜行列車の中で、少女が死神に連れ去れて行くのを目撃する。神隠しだ。そして鈴木一家による少女救出作戦が始まる。

 ――そんなオムニバス・シリーズ。

挿絵(By みてみん)

挿図/Ⓒ 奄美剣星 「幼女神ミドリ」




     57 氷解


 クロエです。死神さんだったお爺様と、神隠しの少女だった母――二人のカミングアウトの続きです。

     ◇

 神隠しの少女――いえ、童女に戻った母を連れて部屋にやってきた、お爺様。ベッドに腰掛けた母・ミドリを後目に、お爺様は椅子に腰掛けもせず、腕組みをして、「よくお聞きクロエ」と、おっしゃいました。

「この世界は、イリアス、オデッセイ、そしてカオスの三世界で成り立っている。――ユリシーズの物語を知っているね?」

「オデッセイのことですね」

 オデッセイをラテン語でウリュッセウスといい、英語に直すとユリシーズになります。ギリシャ神話に登場する放浪の英雄のことで、トロイ戦争に参加した物語が『イリアス』で、帰途の冒険譚が『オデッセア』のこと。

 お爺様はこう続けます。

「イリアスはかつてあった時空世界、オデッセイはこれからくる時空世界、カオスはイリアスとオデッセイの狭間にある時空境だ」

「私が今いるところは?」

「ここはイリアス世界だ。――そして、東京があるのはオデッセイ世界……」

「じゃあカオス世界は?」

「知っていて聞いているね。 ――当然、北ノ町だ。――イリアス世界とオデッセイ世界は、直接つながっておらず、カオス世界を介してでないと、つながらない」

(やっぱり……)

 ユリシーズと切り出されたとき、私は、以前、北ノ町一宮神社を訪れた後、こんなストリーが閃いたのを思い出しました。――北の女神を巡って、冬将軍と百合の中将とが弓くらべをした物語をしました。私のインスピレーションは、まったくの創作というわけではなく、封印されていた記憶の断片を垣間見たのだろうと思います。

 そこで、童女に戻った母・ミドリが口を挟んできました。

「本来、直接つながってはいけないはずのイリアス世界と、オデッセア世界が、今、つながろうとしている」

「ど、どうしてですか? それから、つながったらどうなるのですか?」

「トロイが来たのだ。パソコンで言うところの、フリーズを起こす」

「トロイ? 木馬? あっ、ウィルスみたいなものですか?」

「そのようなものだ。――トロイは、黄金の林檎の形をした、特異点」

 黄金の林檎――三人の女神が、美貌を競ったために、トロイ王国が滅んだ。――罪の果実。

 お爺様は、特異点トロイを消去するために、お婆様と母、そして私をイリアス世界・竜ノ墓場に終結させた。死神であったお爺様って……。

 お爺様は白い歯を見せて、「じゃあ、婆さんを呼ぶとするか」とおっしゃいました

 私クロエ、母ミドリ、そしてお婆様が降臨してくる……。

 同じ並びの部屋の一つが開いて、そこから、瀬名さんと浩さん、そして白鳥さんが出てきました。ついでに、護法童子君に、電脳執事さん、使魔ちゃんがご主人様に、もれなくついてきました。

 マダムが言います。

「吸血鬼の白鳥君は意外と情報通だもんね。何もかも知っているでしょ? ――鈴木先生の顔は、彫刻家であること、死神であることのほかに、また別の顔があるということ、そして、三柱の女神を竜ノ墓場に集結させようとする狙いも」

「ええ知ってますよ。鈴木三郎という人は……」

     ◇

 それでは皆様、また。

             by Kuroe 

【シリーズ主要登場人物】

●鈴木クロエ/東京暮らしのOL。ゼネコン会社事務員から画廊マダムの秘書に転職。母は故ミドリ、父は公安庁所属の寺崎明。大陸に棲む炎竜ピイちゃんをペット化する。

●鈴木三郎/御爺様。富豪にして彫刻家。北ノ町の洋館で暮らしている。妻は故・紅子。

●鈴木浩/クロエの従兄。洋館近くに住みクロエに好意を寄せる。式神のような、電脳執事メフィストを従えている。ピアノはプロ級。

●瀬名武史/鈴木家顧問弁護士。クロエに好意を寄せる。守護天使・護法童子くんを従えている。

●烏八重/カラス画廊のマダム。お爺様の旧友で魔法少女OB。魔法を使う瞬間、老女から少女に若返る。

●白鳥玲央/美男の吸血鬼。クロエに求婚している。一つ目コウモリの使い魔ちゃんを従えている。

●神隠しの少女/昔、死神にさらわれた少女と思いきや、実は若返った母親ミドリ。

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