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自作小説倶楽部 第18冊/2019年上半期(第103-108集)  作者: 自作小説倶楽部
第106集(2019年4月)/「新天地」&「スーツケース」
16/26

01 E.Grey 著  スーツケース 『極秘文書の件 4 公設秘書・少佐』

   //粗筋//


 公設秘書佐伯祐が、リムージンで、長野県月ノ輪村役場にやってきた。そこに努める助手で婚約者の三輪明菜を無迎えにきたのだ。リムージンが向かった先は、某財団の別荘だった。重大事件があったようだ。

挿絵(By みてみん)

挿図/Ⓒ 奄美剣星 「ハングライダー」




     4 スーツケース


 イギリス及びイギリス連邦構成国は、道路が左側通行であるため、右ハンドル車が主流だ。そして、どういうわけだか、日本はイギリスの道路規則に準じている。事件の起きたロールスロイスも右ハンドル車で、無駄に値段が高くて燃費も悪いのだけれども、日本の道路事情には、すんなりと馴染んだ。

 女狐・安田次官は、相変わらずチラチラと私の婚約者・佐伯に色目をつかっていた。その安田次官によると、水野秘書官が、極秘文書を収めたスーツケースとともに消えた直前、ロールスロイスのシートには、次のような配置で、関係者が座っていたとのことだ。

 まず当然、車両フロントの右側にある運転席には運転手がおり、その左側・助手席には水野秘書官がいた。次に後部座席だ。右側に事務次官が、左側に大臣センセイが座っていた。大臣の愛人である銀座のママが、マフラーにしようとしたらしい編みかけの毛糸は、センセイの座っていたところにあった。

 この公用車には無線がついていた。その無線に安田次官宛てに、内閣調査室がメッセージを伝えた。内閣調査室は日本の諜報機関だ。警察や自衛隊のほか、各省庁から集まってきた情報を整理して、特命を受けた関係者に渡すらしい。

「群馬県の山林に、エンジン付きハングライダーが放置してあったと、地元の山林所有者から最寄りの警察署に連絡がありました。もちろん、そのハングライダーに操縦者は乗っていませんでした」

 佐伯が訝しげな顔をして。

「漫画じゃあるまいし、まさか、水野秘書官がそれを使って逃亡したとでも?」

「そのまさかです。……水野秘書官は、学生のころハングライダー同好会に所属していました。今でも、社会人の同好会に在籍しています」

「さすがは官僚、金持ちの息子が多いわけだ。それで、ハングライダーが趣味ですか?」

 安田次官が、「あら、虫が……」馴れ馴れしく佐伯の肩に手をやった。――ぶっ殺す! 失礼、私としたことが、はしたない言葉を……。

「警察がハングライダーのフレームから指紋を採取し、内閣府調査室の職員が現地へ急行して照合したところ、ハングライダーの所有者は水野秘書官であることが判明しました」

「――ということは、水野秘書官は第一次検問網を突破してしまったわけだ。ソヴィエト大使館が手配した工作員が、車で出迎えにきていて、秘密裡に大使館へ運んだと仮定してみよう。彼らは外交特権を駆使して、彼をソヴィエト領内へ運び込ませる手筈をとっているだろう……」

 それじゃあもう、話はつんでしまっているじゃない。どうするんだ、佐伯?


          つづく

  //登場人物//


【主要登場人物】

佐伯祐(さえき・ゆう)……身長180センチ、黒縁眼鏡をかけた、黒スーツの男。東京に住む長野県を選挙地盤にしている国会議員・島村センセイの公設秘書で、明晰な頭脳を買われ、公務のかたわら、警察に協力して幾多の事件を解決する。『少佐』と仇名されている。

三輪明菜(みわ・あきな)……無表情だったが、恋に目覚めて表情の特訓中。眼鏡美人。佐伯の婚約者。長野県月ノ輪村役場職員。事件では佐伯のサポート役で、眼鏡美人である。


【事件関係者】

●島村代議士……佐伯の上司で建設大臣、衆議院議員。センセイと呼ばれている。本事件の依頼者だ。

●岸本会長……某財団会長。島村センセイの学友。中軽井沢に広大な別荘を構えている。

●安田次官……建設省官僚。グラマラスな美女。

●水野秘書官……国務大臣秘書官。極秘文書を盗んで失踪したとされる。

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