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「最初は『結界術』が使えるかどうか調べるニャ」


「よろしくお願いいたします黒猫先生」


 ニャンコ呼びは色々危ないからパスだ。


 十分に暖かくなった居間に移動しての授業だ。媚びへつらう為にコタツまで出した。ついでに座椅子も出してきた。なのに黒猫はテーブルの上に座っている。


 冬仕様だ。ミカンがあれば完璧だ。


 やる気の表れなのか、部屋をグルッと囲める程に尻尾を長くしての指導だ。


「よし、それじゃあ結界を張ってみるニャ」


 それでやれると思うてか?


「張り方が分かりません先生!」


「ならダメニャ」


「諦めんの早っ?! いやいや待て待て、確か知識は継承してないんだろ? とりあえずの手順とか、使い方の取っ掛かりとか、なんかないの?」


 現代人に結界を張ってみろで出来る訳ねえだろ。かめ○め波なら真似したことあるけど。


「手順ニャ? それは初代様のニャ? それとも普通のニャ?」


「普通ので」


 それか初代様以外で。


「普通のニャ。術具を用いて真言を唱えるニャ。早九字を切ってもいいけどニャ、そっちは簡易的なもので基本は退魔ニャ」


 やべえ。掘れば掘る程わからん単語が増えていくんだけど。


 いや待って。俺、子供の頃それ系の漫画読んでたじゃん。思い出せ。


「真言って何? 早九字って何?」


 無理無理。何十年前だと思ってんだよ。


「真言は呪ニャ。発する言の葉に魂の力を注ぐ、これすなわち言霊ニャ。世に降ろす言霊は真ニャ。故に真言ニャ。早九字は力ある九つの呪ニャ。符なんかの術具を使わない代わりに、印を結んだり文字斬りを行うニャ」


「ちょっとスマホとってくる」


 脱衣所に置かれてある鍵やら財布やらを取りにコタツを出る。


 授業についていけない。塾に通えばいいのかね?


 定位置に置いてあるスマホをゲットして居間に戻る。席を立ったついでとばかりに、買い置きしてあるスナック菓子と炭酸飲料をテーブルの上に開ける。


 長期戦になりそうだからだ。決して飽きたわけじゃない。


 スマホで先程の言葉をググってみる。画像なんかも出てくるが、理解度はイマイチ。


 真言、真実の言葉。


 だからなんだ? といった感じ。当然ながらどうやって真言を発するとかは載ってない。


 ただ早九字は調べると懐かしい気持ちになった。あ~、こんなんあったあった、あったなぁ、とか。


 やるのはマジ勘弁してほしいけど。これやって何も出なかった時は死ねる。


 つまり言霊で結界って言えば結界が張れる。言霊っていうのは言葉に魂力を込めると出てくる。そういう理解でオーケー?


「よくない」


「フニャ?」


 もはや許可を取ることもなく炭酸を飲みつつ菓子を食べている黒猫が顔を上げる。


「魂力ってなんだよ。そもそも魂の力を注ぐってどういうこと? どこの筋肉使うんだよ! 腹か? 腹に力を入れて叫べばいいのか? 『結界』! って……おう、グレイト」


 叫んだ途端に蒼白い光が俺を覆う。境界線のように体の線に沿って発光している。


 簡単。今までの説明はなんだったのと言いたくなるぐらい簡単。


「そうニャ。それが『結界術』ニャ」


「お、俺にこんな力が…………!」


 とか手の平を見つめて言ってみる。お約束。


 でも確かに少し沸き立つものがあるよね。こんなん非日常に憧れるティーンエイジャーに渡したら、レベル上げとばかりにモノノケに突っ込んで逝くのが目に見えるようだ。無茶しやがって。


 問題はこれの防御力にある。


「それで、これはどの程度まで身を守ってくれんの?」


 一段落したので俺も菓子に手を伸ばしながらの質問だ。


「魂力が続く限りニャ。なんでも防ぐニャ」


 おい、猫、バカ、猫、てめー猫、このやろう。


「いやいや、なんでも防ぐわけねえだろ。核ミサイルも毒ガスも平気か?」


 息、出来ないから。もしかして能力や術が使えないのって、コヤツの説明不足から来てない?


「それは初代様考案の『万能結界』ニャ。なんでも防ぐニャ。でも魂力の消費が激しいニャ。早いとこ解くニャ」


 いや解くって。


「どうやんの? え? どうやったら引っ込……おう、便利だな結界」


 消費が激しいと聞いて、もしかしてミイラになったりしないよね? と不安になったが、引っ込めと念じただけであっさりと蒼白い光は消えてくれた。


 しかし万能はない。


 なんだその、僕の考えた凄い呪文、みたいなのは。病気なんじゃねえの初代。そして黒猫の説明を信じちゃった他の宿主とやらは、代数を増やしてしまうだけという結果になったんじゃないのか?


 比較対象が存在しないんじゃ話にならない。他の結界を見てみないことには平均も分からないんだが。


 第三者が必要だ。


 しかも公平で事情に精通している害のない善意の第三者が。出来れば人間で。


 どうしたものかとパリパリと菓子を食べているとピンときた。やはり食事は素晴らしい。


 ニャフっと可愛らしくゲップを吐き出す黒猫に向き直り聞いてみた。


「そういや国家機関みたいなのがあるんだよな? 警察みたいな国お抱えの組織が」



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