王の頼み
話が思った以上に進まない…。
今回もよろしくお願いします。
メディ達がステータス値を測定していた頃、そこから北に五百キロほど離れた人はもちろん獣さえ寄り付かない森の奥。そこには人知れずツルが巻き付き不気味さがある、何百年も前に建ったであろう今にも崩れそうな塔があった。
建設当初にはあったであろう豪壮な姿は、今や見る影もなくなっている。
そんな塔の中にうごめく影が一つ。漆黒のマントを身に纏い、痩せ細った体。生きているのか死んでいるのかわからない状態。
手には分厚い本を抱えてニタニタと笑みを浮かべているので生きてはいるのだろうが、それでも塔と同じく不気味さは消えない。
その者が見つめる先には、巨大な水晶が存在していた。
水晶は透き通っていて不規則に光を放っており、その者は水晶が光るたびに浮かべていた笑みを消す。
「…違う。これではない…」
ボソボソと呟いていると突然、水晶の不規則な光が強くなった。
その者は光の強さを見るなり、今までとは違う反応をした。
「おぉ…!この素材は素晴らしい‼この素質があるならば…」
そういうとその者は、またボソボソと繰り返しながら今度は部屋の中を漁り始めた。
一つのことに集中しすぎるタイプなのか、または運が良かったのか。
その者が部屋を漁っている間に水晶が凄まじい程の光を放った。もしその者が光を見ていたら失明していたであろう閃光。
流石にも異常に気がついたのか、慌てた様子で水晶に駆け寄る。
「これはまさか…!」
その者は床に散乱していた羊皮紙の一番上を拾い上げる。
そして、
「ククク、これは面白いことになりそうだ」
今まで以上に凶悪な笑みを浮かべ、その姿は闇へと消えていった。
「何?ステータス値が改ざんされているだと?」
城の中のとある一室。少し不満の混じった低い声が部屋に響き渡った。
ステータス値を測定した後、イーラさんは別の用事があると言ってそそくさと帰ってしまった。謎の音について詳しく聞きたかったのだが残念ながら帰ってしまったので、仕方なく制服の採寸を終わらせて講堂を出た。
アリシアさんが王様に会うというので俺も同行させてもらい、アリシアさんの後に王様に報告をしている状況だ。
「はい。ガラスが割れるような音がしたあと、ステータス値はでてきたのですが…」
そういって王様にステータス値が書かれた羊皮紙を渡すとそれを見た王様はうむ、と顔をしかめる。
「値が平均すぎだな。それにお前さんは転移を使えただろう?これでは無の属性が足りないではないか」
属性―魔術基礎学でも習ったことがある。魔法や魔術を行使するときに必要となる素質なのだがその種類は、火、水、地、光、闇、そして無の六つの属性に分けられている。
一般的に多くの人が持つ素質は火の属性で、最も少数とされているのは光だ。
ちなみにアリシアさんはステータス測定によって光と無の属性があることが判明していて、俺とアリシアさんが使用できる転移魔法は無の属性に分類されている。
別に属性がないと魔術を発動できないとかではないが、転移は高度なものなので属性がなければ難しいだろう。そもそも俺が使ったのは魔法だし。
まぁそういうことで俺には無の属性か魔法の素質がなければいけないんだがそれが書いてなかった。アリシアさんのステータスにはしっかりと書いてあったので魔具の故障というわけでもないだろう。
「水晶の台には入力装置がありました。年齢を入力するためのものだと思うのですが、自分のときはずっと何かを打ち込んでいるようでした」
「ふむ、そこで改ざんされたと?」
「はい。証拠はありませんがステータスの内容を書き換えることは可能だと思います。何より俺のステータスが違っているので」
イーラさんのステータス内容を思い出す。年齢の場所が書き換えられていたはずだ。
「確かにこれは問題だな。もしかしたらアリシアのステータスも書き換えられている可能性があるということだ。しかし…」
王様は顎に手をあてながら話を続ける。
「これはお前さんにとってはいい事かもしれんぞ?」
「いい事…ですか?」
俺が頭の上にはてなマークを浮かべてキョトンとする。
「ああ。もしお前さんがステータスを測り直してとんでもない数値が出てしまったら間違いなくお前さんは注目される。そうなると渡り人ってこともいつかは判明してしまうだろう」
「それは…」
考えすぎ、ということでもなく実際にそうなる可能性は高い。
「だったらこの間違ったステータスのまま学園に提出したほうがいいだろう?私達は誰もステータスが間違っていたことに気が付かなかった。そういうことだ」
ステータスを書き換えたのはギルドのほうだ。責任は全てギルド側にある、といったとこなのだろう。
いやそうなんだけどさ、なんとも複雑な気持ちだ。バレたら最悪、国の立場的にも追放されることも考えておいた方がいいだろうか。
そもそもこんなステータスで学園に入学できるのか?そんなことを話すと王様は、
「そのために勉学に励んでいるのだろう?言っておくが勉強はしっかりとしておけよ」
「問題ありません」
これは見栄でも何でもなく本当だ。何故かこの世界に来てから物事がすぐ頭に入るようになってきたのだ。恐らくこれも、謎の光の力なのだろう。
「ふん。ま、これでこの話は終わりだな」
王がそういったので退出しようと立ち上がると、
「まてまて、お前さんの話は終わりだがまだこちらの話が残っている」
上がっていた腰をまた下ろし、ゆっくりと座る。
「えっと、話とはなんでしょうか?」
俺が尋ねると王様は静かに口を開いた。
「アリシアが森に飛ばされた件とツェルトを含めた数人が失踪した件がおおよそ繋がった」
「なっ?!」
思わず声を上げてしまうが王様は構うことなく続ける。
「まず転移先が書き換えられたのは間違いなくツェルトの仕業だ。そんな高度なことはあいつしか出来ん。そして行方不明者に含まれていた俺の側室とその子ども…バビンカとアニサスだが、どうやら私の暗殺を企んでいたようだ」
衝撃の事実にゴクリと唾を飲む。
「ツェルトとバビンカが裏で手を組み計画を練っていたのだろう。しかし奴らのしっぽを掴んだのはいいが逃げ込んだのがどうも隣国のタルペール帝国らしくてな…。手が出せん。そして一番問題なのはアニサスだ。どうやらあいつはアリシアのことも狙っていたらしい」
アニサスってアリシアさんのお兄さん…だよな?王位継承とか複雑な事はよくわからないが側室の子どもが先なんだよな…。って、そのことは今はいい。よりにもよって仲の悪いタルペール帝国か。位置的には確かに森を抜けた先に帝国があるが…。
「お前さんが見たというオークマスターとの関係性も調べているがそちらはあまり…な」
「それらの事、アリシアさんは?」
「伝えていない。だがアリシアは賢い。流石に全てを知っているわけではないと思うがいくつかは悟っているだろう」
そんな…アリシアさんはこんなにも辛いであろう時期に俺と接して笑顔でいてくれたのか。
わかっていたようなつもりだったが何も理解していなかった。
「…俺にそのことを伝えてどうするつもりですか?」
「決まっているだろう。学園でのアリシアの護衛を頼みたいのだ」
そのために、俺を学園に入学させるのだろう。
「わかりました。俺もアリシアさんのことは守りたいです。なので…一つお願いを聞いて頂けませんか?」
魔王討伐は後回し。
今は大切なものを守るための力が必要だ。
「ほう?なんだ、言ってみろ」
その力を得るためにまずは…
「禁書庫に立ち入る許可をください」
魔導を極めることにした。
拙い文章を読んでいただきありがとうございます。




