実行
これからあたしがすること。
他のクラスメイトに失踪した二人の共通点を聞くことからはじめなければならない。
〔モウヒトリの自分〕に会うためには真冬の明け方4時きっかりという時間指定がある。すでに2月初旬。ゆっくりしている暇はない。
一日の授業を終え、あたしは下校準備をしている子たちの輪に近づき声をかけた。
失踪した二人の共通点はないか?と。
意外にも答えはすぐに返ってきた。
「あの二人、父子家庭なのよ。だから気が合う部分ってあったんじゃない?うちらにはわからないけどさ。」
そんな共通点があるのを知らなかったのはクラスであたしだけだったのだろうか。正直驚いた。
「そういえば、怜奈も父子家庭だったよね。」
「えっ?」
「あれ、夏美しらなかったの?結構仲良くしてるから知ってるかと思ってたけど。」
お互い家庭環境について話すことなど一度もなかった。
そして、あたしも父子家庭だった。これはなんの因果だろう?あたしは母の顔を見たことがない。
あたしを産んですぐに亡くなったのだ。父が「写真があると悲しくなるから」という理由で写真はすべて処分してしまったため、写真ですら見たことがないのだ。
これは失踪した二人の共通点ではなく、あたしと怜奈を含む4人の共通点だったのだ。
心に火がついた。
あたしがこの不可解な出来事を解明しなければならない。
急いで家に帰りポケットにしまっておいた四つ葉のクローバーを取り出し、押し葉を作り始めた。
最低でも4日はかかる。
一通りの作業を終え、後は毎日状態を見ながら完成を待つ形になった。
押し葉が完成するまでの数日間、あたしは極力怜奈と関わるのをやめた。遠目に観察をした。
怜奈は基本的にいつもの明るい女の子だったが、1日に1回は必ずあの不思議なオーラを放っていた。ただ、それは他のクラスメイトはまったく気づいていないようだった。
周りに友達はいるのに、どうして気づかないのだろう。クラスメイトと話している時、不意に鋭い目つきになることもあった。それなのに周囲の人間は誰一人怜奈に対して不信感を抱かず、いつも通りの対応をしているのだ。
あたししか気づかない?いや、そんなの納得がいかない。
でも、それが現実だった。
押し葉を作り始めて5日目。やっと完成した。
薄い茶の入った四つ葉のクローバーはきれいに乾燥して静かな憂いを帯びていた。
予定より1日多く費やしてしまったが、まだ真冬といえる時期。あたしは渡り廊下へ行く心の準備をした。
あたしもこの家に帰ってこられなくなるのかもしれない。父には心配をかけてしまう。
いや、あたしは帰ってくる。このわけのわからない出来事を目の当たりにして、なおかつ帰ってくる。
そう心に誓った。
父が寝た後、居間のテーブルに手紙を置いた。
「お父さん、あたしこれから自分がする事が正しいかわからない。でもこのまま放っておく事はできません。あたしにも関係することかもしれないし、クラスメイトにも関係することだから。心配をかけてごめんなさい。あたしは帰ってくる。遅くなるかもしれないけど帰ってくる。
いってきます。 夏美」
きっちりとアイロンをかけた制服に身を包み、マフラーをして明け方3時40分、あたしは家を出た。




