連鎖
クラスメイトが失踪してから数日後、あたしたちは新たな情報を耳にした。
四つ葉のクローバーが落ちていた付近に白いチョークで「印」を結んだようなものが書かれていたということだ。ここ数日雨が続き、さらに渡り廊下は雨が吹き込む場所なため、次の日には消えてしまっていたらしいが「印」のようなものを見た生徒がいたのだ。
失踪したクラスメイトが書いたものなのか、ほかの誰かが書いたものなのか。それは誰も知る術がなかった。
この話を耳にしたとき、怜奈はいつものようにはしゃぐことはなかった。
さすがに人一人が行方不明、しかも怜奈の仲の良いクラスメイトが相手だから騒ぐ事もないだろうが。
しかし、あまりにも興味を示さない怜奈をみるのが初めてだったためあたしは少し驚いた。
何かしら別のベクトルでのアクションを起こすと思っていたのに…。
「印」だなんて、話がオカルトチックになっていく。この時あたしは「やっぱり噂は信じない」という結論に至った。
今までにあたしは幽霊どころか、心霊現象的なものに一度もあったことがない。
そんな状況の中でクラスメイトが〔モウヒトリの自分〕に遭遇して失踪したとは考えにくい。
やはり何らかの事件か事故に巻き込まれてしまったのではないか。
ともかく早く彼女が見つかることを祈るばかりだった。そうすればすべて真実がわかるはず。
しかしその後、2週間経ってもクラスメイトは見つからなかった。
彼女の家族は早々に警察に捜索願を出していたが警察のほうでも捜査が難航しているようで、事件なのか事故なのかすら未だにわかっていない。
真冬の明け方4時ということもあって目撃した人もいないらしい。
怜奈は徐々に元気を取り戻していたが、たまにふと見せる寂しげな表情が痛々しかった。心なしか体もやつれていた。
そして事件は再び起こった。
一人目のクラスメイトが失踪してからちょうど1ヵ月後、まったく同じ状態でまたクラスメイトが一人失踪したのだ。
しかも今回は雨が降らなかったため「印」のようなものを見た生徒が前回より多かった。
カメラ機能のある携帯で写真を撮った生徒までいた。その「印」のようなものは直径50センチくらいの二重円形の中に4つの葉が描かれたものだった。
不可解なのは…二人目の失踪したクラスメイトも怜奈の友人だったということだ。
なぜ連続して彼女に関わるクラスメイトが失踪してしまったのか。
さすがのあたしも心配になり怜奈に声をかけるため彼女に近づこうとした。
その時。
一瞬、ほんの一瞬怜奈の後姿が変化したように見えた。
彼女はダークブラウンのセミロングヘアなのだが、その髪型が腰のあたりまである漆黒のロングヘアに見えた気がした。
当然気のせいだと思い改めて声をかけた。
「怜奈、大丈夫?」
ゆっくり振り返った彼女の目は以前より鋭く、目の奥に何か光るものがあるように見えた。
あたしは驚き、一歩後ずさった。
「大丈夫よ。友達が二人も消えちゃうなんて信じられないけど…でも 。」
「えっ?」声として聞こえたのではなく、心の中に響いてきたような最後の彼女の言葉。
「フフ…」
怜奈が変わった。あたしは驚き、教室を飛び出した。「夏美〜どうしたの〜?」という声が教室から聞こえたがその場にはいられなかった。
そしてあたしは例の渡り廊下へと、まるで導かれるように走ってきた。そこにはうっすらと白いチョークの「印」が残っていた。
二重円形の中に描かれた4枚の葉。そして…響いてきた怜奈の声。
「 。」
怜奈の言葉を理解することができなかった。いったい彼女の身に何が起こったのか。
四つ葉のクローバー。
白いチョークで書かれた印。
この渡り廊下。
怜奈の友達二人。
彼女たちに共通することは?
そして怜奈の言葉…
「彼女達は幸せなのよ。」




