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もう一人の自分



 学園の裏庭で見つけた四つ葉のクローバーを押し葉にして、真冬の明け方4時きっかりにそれを持って北校舎へ続く渡り廊下の真ん中に立つと〔モウヒトリの自分に遭遇する…〕


 そんなへんてこな噂がうちの学園に広がっていた。



序.開始

あたしは噂や、いわゆる「学校の七不思議」的なものをほとんど信じない部類の人間だった。

周りでクラスの女子達がキャーキャー言っているのを横目でしらけて見ている。いつもそういう立場だ。今回の噂をあたしが気にかけてしまったのは「モウヒトリの自分に遭遇する」という事。

信じるというよりやっぱり「ありえない」と思っていたことから始まった。



あれは今年の7月。高校生活最後の夏休みが始まる直前の出来事だった。

「ねぇ夏美!聞いた?」

クラスメイトの怜奈があたしのところへ飛んできて息もきれぎれに、目を輝かせてこの「噂」について話し出したのだ。



「うちの学校の校章がなんで四つ葉のクローバーかって話。アレ、初めの校長がここの庭で四つ葉のクローバーを見つけて…って話だったじゃん?続きがあるんだって!!」

怜奈はいつでもこの手の噂を信じていて、あたしが信じないと知りつつも必ず報告しにくるのだ。

いつもあたしに冷たくあしらわれるだけなのによく飽きずに話してくるものだ…。

「うんうん、で?その続きって?」


いつものように次の時間の教科書をぱらぱらめくりながら話を聞き流そうと体制を整えると、怜奈は急にいつものようなハイテンションではなく声のトーンを落として語りだした。

「あのね。初代の校長って二重人格だったんだって。で、いつも見つけたクローバーの対角になっている2枚が気がつくとちぎられて、さらに粉々になってたんだって。それって二重人格のモウヒトリがやったことらしいんだよね。だから、ちぎられないように校章として模ったらしいよ?」


(モウヒトリの人間?)一瞬そこに気をとられたが、怜奈はさらに話を続けていた。


「学校ができた頃はまだ結構四つ葉のクローバーって学校の裏庭で見つかったらしいんだけど、うちらなんか見たことないじゃん?それも、当時の校長がほとんど枯葉剤を撒いてなくしちゃったって噂なんだよね。でもほかの雑草は生えてるのに…ねぇ、不思議じゃない?」

「そだねぇ…。」

「そんでさ!裏庭で四つ葉のクローバーを見つけて押し葉にして、真冬の明け方4時きっかりに北校舎に向かう渡り廊下の真ん中に立つと、なんと!モウヒトリの自分に会えるって噂なんだよー!ねぇ、どう思う?」


ここまで真剣に話をしている怜奈を地の底に落とすのは悪いが、やっぱりあたしはそう言う事を信じられない。信じようとすること自体難しい。というわけでいつものようにあしらってしまった。

「誰でも心の中で葛藤ってするから、それをモウヒトリの自分って考えたら誰にだっているし、そんなの改めて目の前に出てくるようなもんじゃないでしょ?つーか、たまたま鏡とかが置いてあって自分がうつったとかそんなんじゃないの?」

やっぱりこういった類の話は信じるに値しない。ましてや自分がモウヒトリいるなんて。


「でもほら、なんか自分にそっくりな人を見ると死ぬとか…んと…ゲッター何とか…あれ?違う?なんかそんな英語あったじゃん〜。」


真剣に話す怜奈はかわいい。ついついいじめたくなってしまう。それに比べてあたしは…

「ドッペルゲンガー。ちなみにドイツ語ね?自分で自分の姿を見る現象の事だけど、それも脳障害が関係してるみたいだし。見ようと思って見られる者じゃないよ。」

冷静に、自分の貧しい知識の中から分析して返事をすると怜奈は唸って自分の席へ戻っていった。




その話を聞いてから約半年後。もうそんな噂もあたしの中で忘れつつある頃だった、渡り廊下に四つ葉のクローバーの押し葉を残してクラスメイトの一人が失踪したのは。


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