29.ごめんなさい
今回短めです。終わりが近いぞ……
考えるより先に、身体が動いた。
ナツは咄嗟に、アイリスの手を引いた。飛んできた弾丸が、左肩を貫く。右手に持っていた剣を、思わず落としてしまった。
―――本当に階段から落ちたくらいの痛さだ……。そして、結構痛い。
「何やってるんですか!?」とアイリスは、酷く驚いた様子だ。
ナツは、アイリスの声を無視して、足元の剣を拾い上げた。まずは、敵を倒さなくては。相手は一人。さっきよりも、かなり楽に倒せるだろう。ナツは踏み込んで、敵へ向かって一直線に走り始めた。
敵は、走ってくるナツを見て 焦ったように銃を乱射した。先ほどまでの、狙いを一転に絞っていた物とは違い、四方八方に銃弾が飛び散る。
―――重い。
ナツは盾を捨てた。守りを捨てた。こちらへ向かってくる弾丸を剣で斬り、さばききれないものは全てその身に受けた。
―――アイリスを、守らなければ……もっと……もっと速く!
ナツは加速を続ける。身体に受ける銃弾の数も、徐々に少なくなってきた。敵はますます焦って、連射モードに切り替えた。
―――遅い。
ナツはそれら全てを避けるか 剣でいなすかして、敵のもとへ辿りついた。
「……もう、邪魔はするな」
今日で何度見たかも分からない淡い光が、ナツの斬撃とともに空中に散った。
*
「ナツさん。もういいんです」
アイリスが、僕に走って近づいてきた。
「もう、ナツさんは頑張ったじゃないですか。こんなに怪我して」
「だからって、もういいって何だよ……」
アイリスは、何を言っているんだ?これからも、一緒に色々なことをしたいって。そう思って―――……。
「私、結構楽しかったです。こんなに世界が美しいものだなんて知らなかった。ナツさんに出会って、全てが変わりました」
そんな、もう終わるみたいに……。
「ごめんなさい。守ってくれたのに。それに、私も一緒に戦ったのに。私、さっき別の人に撃たれちゃったみたいです」
アイリスはそう言って、苦笑いをこぼした。
作者は別に意図的に鬱にしたいわけじゃないんだ……ただ自然にそうなるだけであって……




