24.目に焼きついて、離れないんだ
「『それがどうしたんだ』って、アイリスはAIで……」
「だから、それが何か問題があるのか?AIだから、何か不都合でもあるのか?」
僕は、タクの思わぬ反応に驚いた。僕たちが、一生懸命探していたのは人間ではなかったんだぞ?彼女は、精巧なプログラムによって動いていたAIだった。偽物だったんだ。何もかも。
「それは、結果論だろ。お前の、アイリスを探したいという気持ちは 相手が人間じゃなかったくらいで終わるものなのかよ?」
タクは僕に口を挟ませることなく、先を続けた。
「アイリスはお前に自分がAIだって言わなかったんだろう?それは、お前に嫌われたくなかったからじゃないのか?追ってきたお前に、暴言を吐いたのも。泣いていたんだろう?それを、偽物だなんて、言うんじゃねえよ」
確かに、アイリスは苦しそうな様子だった。でも、その気持ちだって―――。
「AIって基本的なプログラムは勿論あるだろうが、学習システムというものもあるんだそうだ。一緒に過ごしているうちに、色々なことを吸収するらしい。アイリスは、どうだった?最初に会ったときと、別れ際、何か違ったんじゃないか?」
初めて会ったとき、アイリスはぼうっとした女の子だった。無表情というよりは、そもそも表情と言うものを知らないような。
「お前といたから、変わったこともあるはずだろう?それを、全てなかったことにして諦めていいのか?」
僕とアイリスが一緒にいたから、変わったこと。アイリスがAIだったとして、何が問題なんだ。アイリスに、まだ教えていないことがある。まだ、話していないことがある。まだ、やり残していることがある。アイリスがAIでも、いいじゃないか。
アイリスは、あの時 ついていくのは誰でも良かったと言っていた。確かに、あの時僕が偶々通りがかっただけかもしれない。それでも、その偶然を 僕は信じたい。
「もう一度、僕と一緒にアイリスを探してくれないか?」
気がつけば、僕はそんなことをタクに言っていた。タクが、笑う。
「勿論だ」
アイリスと一緒にいたいだなんて、僕の単なる自己中心的な願望に過ぎないかもしれない。アイリスは探して欲しくないと言っている訳だし。それでも、何と言われようと僕はアイリスともう一度 過ごしたい。それに、なによりも アイリスのあの苦しそうな笑顔が、目に焼きついて離れないんだ。
いっけええええええ!!




