19.お願いが、あります
今日はバシバシ更新。そんなこと言って、ちょこちょこしか更新しないフラグにならないように頑張る。
オムニスをプレイし始めて、一ヶ月半。僕は、毎日のように このゲームにログインしていた。平日休日問わず、だ。まさかここまで嵌ってしまうとは、自分でも思いもしなかった。最近は、初心者プレイヤーであるアイリスと 日々を過ごしている。
しかし、そろそろ タクたちと合流したい所だ。逃げ回っていた僕の言うことではないが、ゲームはクエストをクリアしていくのが楽しい。仲間と強敵に立ち向かう。それこそが、このゲームの真髄だ。申し訳ないことに、アイリスはずっと僕の用事に付き合いっぱなしだった。その罪滅ぼしと言うわけではないが、彼女を僕の加入しているギルドに招待しようと言うわけだ。このゲームの楽しさを、もっと知ってほしいしな。
幸い、痛覚カットのプログラムを知り合いから入手することができた。しかし、プログラムがあるからと言って、完全に痛覚をカットすることはできないらしい。浅い傷は完全にカットできるが、深い傷になると 階段でこけたくらいの痛さになるということだ。
その知り合いは、「ここまでカットできるなんて、最新技術ともいえるんだぞ」とかなり自慢げな様子だったが、それでも結構痛いんじゃないか。それに、こんなものを持っているだなんて、危ないことをしているんじゃないかと心配になる。
とりあえず、正規品が届くまでの間 この機材でやっていくほかはない。何度も注文画面を確認するが、お取り寄せ中。いくら更新しても、届かないものは届かないということか。仕方がないので、お取り寄せ中と表示されている画面を拝みながら、僕はゲームをスタートした。
*
ゲームをスタートして 最初に視界に飛び込んできたのは、宿屋の天井だった。隣に勿論のことだが、アイリスはいない。また、僕だけがベッドで寝ているという形のようだ。
「アイリス、昨日は眠れたのか?」
僕は身体を起こしながら、今日もベッドの近くの椅子に座っているであろうアイリスに問いかけた。
しかし、返事がない。椅子の方を見るが、姿もなかった。
おかしい。
いや、何も 毎日ログインしなければならないというわけではない。そんな決まりもないからな。それは、勿論のことだ。しかし、アイリスは 皆勤賞を記録しているのだと、自慢げに話していたことがあった。リアルでなかなか眠れないから、ログインしっぱなしなのだ、とも。
その、アイリスが、いないのだ。
*
僕は、アイリスを探し回った。アイリスと行った場所は、全て回った。酒場、果物屋、掲示板の近く。しかし、その姿はない。それでも、アイリスは初心者だから、一人でクエストに行くなんてことはないだろうし、必ず何処かにいるに違いない。そう信じて、走り続けた。
同時に聞き込みをしていたのが効果的だったのか、いくつかの目撃情報が浮上した。その場所を一つ一つ、潰していく。
しかし、必死の捜索も空しく、アイリスが見つかることはなかった。
*
もうダメだ。そう思ったときに、ギルドからの連絡が来た。そうだ。メール機能……!あまり使わないので盲点だったが、メール機能があるじゃないか。
僕は、期待を胸にメール送信画面を開いた。そして、アイリスに居場所を尋ねる内容を送信する。返事はすぐに来た。
〈〈お願いです。探さないでください。〉〉
それだけ。どういうことか、とその真意を聞き出そうとするが、すぐに受信を拒否されてしまう。
どうして―――。つい昨日までは、何もなかったはずだ。それとも、僕が分からないだけで、実は何かしたのだろうか。失礼なことをした?ただ嫌いになっただけ……?どうして、どうして。それだけが、僕の頭を支配していた。
アイリスの初めてのお願い。それは、あまりにも突然で、そして僕の理解の追いつかないものだった。
そういえば、中高生は定期テストらしいね。休憩に小説読めー!〈念)