17.商品詳細を見ずに 物を買うと、大抵失敗する法則
研究成果イコール僕。そう言うと、聴いていた人全員に意味が分からないというような顔を向けられてしまった。結構ばっちり決まったと思ったんだがな。そうでもなかったらしい。
「つまり、僕たちの研究成果は、僕だ」
「いや、それは分かったんだが……」と、長老が暗に繰り返さなくても良いと言ってきた。
「分からないのは、意味のほうだ。お前さんが研究成果だとすれば、どういう研究かね?そこに現れるバグは何だね?もしくは、お前さんがシステム上の障害になりうる何かであると?」
「僕がシステムの障害になることは無いだろう。しかし、僕に現れるバグ。これに、僕は苦しめられている。そのバグとは……」
少し間をおいて、僕は言い放つ。
「僕に痛覚があることだ」
*
周りが一瞬ざわついた。痛覚。それは、このゲームには認められるはずのないもの。それを、感じるやつがいると言うのだ。驚きの声と、好奇の目。学者と言うのは、こうあるべきという正に鑑そのもののようなやつらだ。
僕が痛覚を持っているという謎を解明する上で、必要なのは多くの意見だ。まず原因が分からないことに関しては、たくさんの人で話し合った方が効率的だ。
まさか、この場にいるだけで研究成果を発表しろなどと 言われるとは思わなかったが、結果オーライ。この謎を、研究成果として発表することで、ここに集まっている20人で議論してもらう。ハプニングがあったとはいえ、かなり上手く立ち回れたと思おう。
そんなことを考えながらニヤついていると、早速議論が始まった。ゲーム自体に痛覚はプログラミングされていたか、されていたのならば、どこでそれがカットされていたかなど、今日一番の勢いで議論が交わされる。
いくつか質問を受けながら、自分自身の経験を話していく。僕自身が、実験体だったと言うわけだ。話を一通り終えてしばらく経った後、結論が出たと言うように 長老が僕たちの方へ体を向けた。
「我々の結論としては、こうだ。このオムニスというゲームにおいて、感覚のフィードバックは行われないはずだ。基本的に、そういう感覚面においては何処かでカットされているという認識を持っている」
なるほど。神殿でおっさんが言っていた通りだ。普通は痛覚なんてない。
「しかし、お前さんは痛覚を持っているという。ということは、お前さんの機材は上手く感覚のカットを行っていない、という予測が立つ」
感覚のカットができていない、か。なるほど。
「一つ質問だ。お前さんの、今使っている機材。それは、どこで手に入れたものかな?」
学生という、お金のないことの代名詞ともいえるであろう立場の僕は、節約に走った。つまり、オークションで オムニスをプレイするための機材を手に入れたのだ。
「それが原因だろう。例えばの話だが、それが非正規品だった可能性や、改造されているものだった可能性がある」
非正規品に、改造か。確かにそのあたりの確認はしていなかったし、商品の詳細ページにも書かれていなかったように思う。僕の確認ミス、ということか。
「その機材を、今すぐ正規品に変えるか、もしくは感覚をカットできるようなプログラムを介するのが現実的だろう」
なるほど、痛覚をカットか。僕は、まだまだ続く長老の話に耳を傾けた。
作者は、通販でよくサイズをミスりますけどね