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社畜のシャチ君   作者: 華蓮
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ぶらっくきぎょう ~かねとちからとこばんざめ~

シャチ君が入社してもう10ヶ月の月日が経ちました。

もうシャチ君は長いこと家に帰っていません。毎日毎日積み重なる仕事の数々……。それらはシャチ君の時間を貪っていったのです。

そんなわけで今日もシャチ君は会社のソファーの上で目を覚ましました。


「あぁ、もう朝か……。仕事、仕事……」


シャチ君の顔は入社当時よりもやつれ、目も死んだ魚のように濁っていました。元が元なので大した見分けはつきませんけど。

シャチ君は再び仕事に戻るため、重たい身体を起こして立ち上がろうとしました。そんな時、シャチ君の後ろから突然聞き覚えのある声が聞こえてきました。


「あれ、もしかしてシャチ先輩っすか?」


シャチ君が声の方に向いてみると、小さな小柄のコバンザメが立っていました。


「あ、お前は確か……」


「高校の頃、先輩の舎弟だったコバンザメですよ〜。まさかシャチ先輩がこの会社に入っていたなんて」


「おお、そうだそうだ。久しぶりだなぁ。いや〜、もう顔見知りが同じ職場にいたなんて知らなかったよ。お前は最近どうなんだ。オレはなぁーー」


彼はどうやらシャチ君の知り合いのようです。身も心も廃れていたシャチ君にとっては小さな光がさしたように思えたでしょう。

でもね、シャチ君。


「(ハッ、こんなブラック会社に自分から入社するとかアタマいかれてんじゃねぇの、こいつ。まぁ、昔から単細胞のバカだったけどなwww」


このコバンザメ、心の声がダダ漏れですよ。


「ん? なんか言ったか?」


「いえ、なんでもありませんよ。平社員のシャチ先輩」


しかし、シャチ君にはどうやら聞こえていなかったようですね。耳に何か詰まっているのでしょうか。いや、もしかしたら脳みそさえも詰まっていないのかもしれません。


「ところでお前は今どんな仕事してんだ?」


「いえいえ、まだ仮で入っているだけなんで大した仕事はありませんよ」


「おお、そうか。確かにそうだな。お前まだ完全には卒業してないし」


シャチ君がそう納得したあと、2人はしばらくの間話しをしていました。実際はシャチ君が一方的にしゃべっているのを、コバンザメがスマホ片手に聞き流していただけでしたが。どうやら、コバンザメはこのような状況に随分と慣れていたようですね。


「あ、もうこんな時間ですね。お仕事大丈夫なんですか?」


「お、もうそんなに時間が経ったか。ごめんな、引きとめちまって」


シャチ君がコバンザメと出会ってすでに5分も経ってしまっていたようです。これはいけません。シャチ君にはまだまだ仕事が残っていますものね。


「いえいえ。こちらこそすいませんね、シャチ先輩」


そういうとコバンザメは揚々と社長室のほうへと歩いて行きました。一体どうしてそんなところに向かっているのか、そんな疑問などシャチ君の頭にはこれっぽっちも浮かばず、むしろ懐かしの後輩に会えたことを喜んでいるかのように自分の仕事場へと行ってしまいました。

それから数ヶ月後、シャチ君は再びコバンザメと顔を合わせることになりました。


「あ、また会いましたね。僕、本日付けでこの会社に勤めることになったんですよ」


「おお、それは良かったな。仕事は大変だけど一緒に頑張ろうぜ!」


シャチ君は自分と同じ境遇、しかもそれが自分の後輩だったことに喜びを隠せませんでした。そのコバンザメの目が自分のことを見下しているのにも気付かずに。


「何をほざいているんですか?」


コバンザメはそうシャチ君にいいました。

かつての舎弟からの言葉じりが理解できないようでシャチ君は困惑し、目を丸くさせていました。そもそもどこにあるかもわからないのですが。


「お、おい! 俺にそんな口きいてんじゃねーぞ! また昔みたいにーー」


「ほら、そうやってすぐに暴力に走ろうとする。そういうところがダメなんですよ」


コバンザメはシャチ君の言葉を遮り、意気揚々と語り始めます。


「確かに高校の頃はあんたの力はすごかったと思いますよ。腕力もあって、人柄も良かった。だから僕を含めた多くの者があんたについていった。まぁ、あんたのおつむの弱さには散々苦労させられましたがね。

でも、ここでは違う。

この社会ではそんなもの、何の役にも立たないんですよ‼︎」


シャチ君は何も言いかえすことができません。


「それじゃあ何が大切か、あんたにはわかりますか? どうせわかりませんよね。

大切なのはね、金と人脈と強い者の後ろ盾を持つことですよ。そのおかげで僕は社長秘書になった。

もうあんたとは立場も、権力も、なにもかも違うんですよ」


コバンザメはそういうと颯爽と社長室へと向かって行きました。

シャチ君は何も言い返せませんでした。言い返す言葉が見つかりませんでした。

かつての舎弟からの冷たい言葉。見下していた存在から見下されるという現実。それはどれもシャチ君が高校生時代、味わったことのないことでした。気づけばシャチ君の両目からは涙がこぼれ落ちていました。


がんばれ、シャチ君。負けるな、シャチ君。君に金や権力がなくたってきっと、いつか、いいことがあるかもしれないから!


「あの〜、どうかされましたか? あら、泣いてるんですか? よければこのハンカチをどうぞ」


えっ!?




シャチ君は今までざんぎょうをしていました(暴論

次回! 突如現れた謎の女性の正体とは?

そしてついにシャチ君に春が来る!?

『社畜のシャチ君』お楽しみに!

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