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社畜のシャチ君   作者: 華蓮
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ぶらっくきぎょう ~にゅうしゃ~

あれからどれ位の月日が経ったのでしょうか。シャチ君は未だに就職できていませんでした。

ここまでくればアルバイトでも始めたらいいものなのに、シャチ君にはそんな選択肢が思い付く知能は持ち合わせていませんでした。日に日に減っていく預金。シャチ君はこれからどうしていくのでしょう?


「……クソ喰らえ、こんな社会」


そんな私の心配も見ず知らず、シャチ君はお米のジュースを呑みながら部屋でいじけておりました。

このお米のジュース、シャチ君が高校の頃に友達と造ったもので呑むと気持ちよくなって嫌なことを忘れられるという画期的な代物だそうです。

ん? 何か問題でもありましたか? これはただのジュースです。いいですね?

そんなことはさておき、シャチ君は朦朧する頭を働かせながら求人雑誌を読んでいました。何十社も受けたおかげでどんなことを書いている会社が自分を落とすのかは一目瞭然です。他に頑張るところがあるのではないかと聞くのは野暮用でしょうね。シャチ君がそれを聞いて理解できるとも思いませんし。


「ーーお、これなんか良さそうだな。え〜と、『好屋 ワミン』か……」


どうやらシャチ君は良さそうな会社を見つけたようですね。一体どんな会社なのでしょうか? 少し募集要項を確認してみましょう。


『学歴不問!

年齢なんて何のその!

当社ではどんな人でも募集しています!困った時には先輩方からの心優しいフォローも。

社内の雰囲気もよくアットホームな会社です!

業務経験が無くても構いません。給料は定額をキチンとお支払いします。

気になった方は是非こちらへ‼︎

フリーダイヤル 961-961-961 』


これはなんともわかりやすいくらい黒いですね。今時、ここまでブラック要素を詰め込んだ求人をしている会社はそうそうあるものではありません。こんなにわかりやすい手口に引っかかる馬鹿はいるのでしょうか?


「よっしゃ、面接は明日か。今回こそは絶対に入社してやるぜ!」


いました。流石は脳筋の申し子、シャチ君です。広告を見つけて早数分。すでに面接先への連絡を終わらせてしまいました。なんという早業。やはり彼も海のギャングとも呼ばれるシャチの一員なのでした。どこからどう見ても一族の落ちこぼれとしかいいようがありませんが、その決断力と行動力だけは評価してあげましょう。


その翌日、シャチ君は『好屋 ワミン』の本社ビルに来ていました。どうやらここで面接が行われるようです。


「あなたがシャチさんですね。どうぞこちらへ……ハハッ」


シャチ君は目の死んだ事務の人に連れられて社長室まで連れて行かれました。そこに待っていたのは、シャチ君よりも何倍も大きい鯨さんです。


「やあやあ、君がシャチ君だね。ようこそ、『好屋 ワミン』へ。私がこの会社の社長をしているクジラだ。今後ともよろしく頼むよ」


立派なヒゲを携えた、堂々とした態度はただでさえ大きい社長さんをさらに大きく見せます。普通の人ならここで怖気付くものなのですが、シャチ君は怖いもの知らず。


「おう、まかせとけ!」


と、軽快に返事をしました。


「大変元気で素晴らしいですな。採用しましょう」


「え? もう終わりでいいのか?」


「ええ、我が社で一番大切なのは元気ですからね。それではこちらの書類に名前を書いてください」


渡されたのは会社のことが事細かに書かれた一枚の紙。ところどころ裸眼では見ることさえできないものもあるようですが、シャチ君がそんなものに気づくはずもありません。それどころか内容にさえ目を通さずになまえをかいてしまいました。


「ーーおし、書けたぜ!」


「ありがとう。それでは明日からよろしく頼むよ」


「おう!」


こうしてシャチ君は無事に就職することができました。よく頑張りましたね。

でもねシャチ君。社長さんは『元気』が大切だって言っていたことを、事務の方の目が死んでもなお働き続けていたことを、よ〜く胸に留めておくのですよ。


さてさて、『好屋 ワミン』に入社することとなったシャチ君。これから彼にどんな苦難と苦痛が待ち受けているのでしょうか。私達はいつも見守っていますよ。あなたが幸せな世界に旅立てることをーー。


ここに出てくる社名は現実のかいしゃとは全く関係ありません。

そして、面接なんでしたことないのでこんな簡単に入社できるわけがないとかつっこまないで。

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