吉野正和
初夏に差し掛かろうとしているこの頃、登校時刻はとても心地のいい適温だった。高校生活三年目にさしかかる僕はこの心地よさを他所に憂鬱な気分でただいつもの道を進んでいた。
先日からどうも友達の様子がおかしい。今まで仲良くしていた3人がどうも自分を避けだした。心当たりがあるはずもなく、ただただ謎に包まれたまま僕は独りでいた。訳がわからない。自分が何をしたって言うんだ。そもそも避けているのはあの三人だけで他の子は今まで通りだ。やはり彼らに何かしてしまったのだろうか。
ふと顔をあげたとき僕は気づいた。どうやら違う道を来てしまったらしい。物思いに耽りすぎたな、見慣れない景色だ。まぁいい、気分転換だ。こっちからでも学校は行けるだろうし時間は十分間に合う。しかしそれにしても少し道を変えただけで全く違う場所に見える。このちょっとした並木道も趣があるし、あそこの木造の喫茶店もよさそうだ。今度よってみよう、よしあの立てかけてある板がきっとメニューかなんかだろう。えーっと、なんでも屋…。
いや違う。ここは喫茶店じゃない。『なんでも屋~AU~』そのまんまか?なんでも屋って事は要は雑用だろう。ちょうどいい、今度試しに入ってやろう。
僕は再び歩き出した。
学校につくと案の定、3人は乾いた目を向けそっと自分から離れて行った。
まぁいじめってほど困ってない。ただ無視されてるだけだ。かまわないじゃないか。そう自分に言い聞かせ席につく。
おっと。これは事件だ。机の中の教科書は全てなくなっていた。
居心地が悪い。そう感じた僕は早退することにした。まだ来たばかりだが、以外とあっさりそれは出来た。
早足で学校を去る。行き先は決まっている。あの便利屋だ。
前まで着くとコーヒーの匂いがしていた。賑やかそうな声がきこえている。
喫茶店なんではないだろうか。まぁどっちでもいいや。静かにゆっくりとドアを開ける。箒を持った女の人と目が合った。かわいいな。栗色の短い髪に目は大きく小顔のその人はずっとこちらを見つめている。
「とーまさん」
ん?とーま。あぁあの奥に座っている男の人か。細いなー。背高いし。店長かな?
とーまさん。とやらと目が合うと彼は驚いた様子だった。もしやここは入ってはいけないところだったか?
「ごめんなさい。ここ、なんでもしてくれるんですか?」
「ま、まぁ一応…ただの便利屋だから犯罪とかはちょっとつらいけど」
よかった。ただの便利屋らしいや。
「そんな大事じゃないので大丈夫です。すこし、話いいですか?」
「どうぞ!ご依頼ですか?」
「うん…たぶんそうです。」
「それではこちらへ、」
誘導されるがまま席につく。僕はこのところ仲良くしていた3人の様子がおかしいこと、そしてとうとう教科書を隠されたことを話した。