河峰冬馬
昔からラストで極限に盛り上がるストーリーが大好きで、ずっと前から頭にあった話をまとめてみたいと思います。小説と違って周りを使っての心理描写がないので読み進めるのは苦ではないと思います。
よろしくお願いいたします。
絵本、映画、アニメ。自分の知り得るあらゆる物語全てにおいて必ずしも『主人公』が存在していた。
主人公は周りを取り巻き、皆が憧れる絶対的な存在。当時10才の俺はそんな主人公『英雄』を目指した。
1話
《河峰冬馬》
あまり広いとは言えないちょっとした木造の建物。お洒落なカフェのような内部のここは『なんでも屋~AU~』。このAUに特に意味はない。ずっと目指してきたのが英雄という類いだったからちょっとしたジョークのつもりで入れた。そんな店のオーナーは俺、河峰冬馬。23才独身。そして先日バイトとして雇った同い年の女の子、佐々木 花の入れたコーヒーを飲みながら本を読んでいる。こんな素晴らしいことがあるだろうか。太陽の日を浴びながら有意義にくつろぐ時間は…。昨日も味わっていた。いや昨日だけではない。一昨日も、その前も、そのまた前も…。仕事を探さねば。だがこんな起業したての怪しいなんでも屋に依頼などは来るはずもなかった。
「花ちゃん俺らってさ、どうやったら依頼貰えると思うよ?」
ついこの前までこの子は一般人だったのだ。依頼人の目線には一番近いはずだという考えから彼女を頼ることにした。
「どうやったらって…人が困るのを待つしかないんじゃないですかね?」
「いや、困ったとしてもこんなできたてほやほやで実績のない怪しい店に花ちゃんだったら寄るかい?」
「全然寄りますよ!困ってるんですもん」
この子はどこか抜けている。そういえば一昨日は砂糖と間違えて片栗粉が入っているコーヒーを頭からかけられた。こうゆう子がいた方が和むからいいのだけれども。
「そういえば…。近くに高校があるじゃないですか!学校生活と悩みごとは隣り合わせですよ!」
「確かに…花ちゃんはどんなことで悩んでたの?」
「私は特に悩みごとは無かったですよ!皆仲良くしてくれましたし!」
「へぇー、例えば?」
「お弁当作っていってあげたり、おすすめのパン買ってきてあげたり、皆の代わりに掃除してあげたりとかですかね!皆笑って話しかけてきてくれましたよ」
あぁ、なるほど。こうゆうタイプの子か。一ミリの参考にもならない。
「君は人生楽しそうだな」
「はい楽しいです!」
これ以上突っ込むのを俺は止めた。しかし学生に目をつけるというのはいい案かもしれない。今時の学生が使っているSNSは有力な口コミにもなる。学生か…。どうしたものか。チラシでも配るか?
「とーまさん」
「なに花ちゃん。今考え事してたんだけど。」
「お客様です」
びびった。まじで。本当にいきなりの登場だった。そこには制服であろう学ランを着た少年が立っていた。あまり目立つタイプでもなく、かといって陰気な雰囲気もなく、並みといった感じだった。
「ごめんなさい。ここ、なんでもしてくれるんですか?」
いきなり話しかけてきた。本日二度目のどっきりだ。
「ま、まぁ一応…ただの便利屋だから犯罪とかはちょっとつらいけど」
「そんな大事じゃないので大丈夫です。すこし、話いいですか?」
「どうぞ!ご依頼ですか?」
「うん…たぶんそうです。」
「それではこちらへ、」
誘導し話を聞く。この少年は吉野正和という近くの高校に通う学生だった。案の定学校がらみの悩みで、俺はただそれを黙って聞いていた。