No.15
とんでもなく遅くなりました(´・ω・`)
No.15です。どうぞ、お楽しみくださいませ。
「え、えええ?!」
「そんなに驚いちゃう?まぁでも仕方ないよねー。行き先わかんなくって不安だったでしょ?ごめんねー」
表情は見えないが、少し申し訳なさそうな声音の朱羽さん。
「い、いや、大丈夫、ですけど...。秋斗、海外に住んでたんじゃなかったの?ご両親も一緒に住んでたって言ってたし」
「元々は日本に住んでたんだよ。んで、事情で海外に引っ越したんだ。でも、俺が私鶴のお母様と日本へ戻ってきたときに、ついでに家族全員戻って来たんだ」
初めて分かった事実に驚きつつ、秋斗の存在がよくわからなくなった。
...一体こいつ、何者なんだろうか。
「笹山家は古くからある財閥なんだよー」
「え?!そうなんですか?!...でも、笹山って聞いたことない...」
「あまり表立って何かすることはないからな」
表立ってしなければなにをするんだろうか。
...え、裏社会?いやいや、そんなことなかろう。
裏社会からこんな紳士うまれないだろ。
「うーん、簡単に言ったらー、そうだなぁ。日本の金持ちの事情を全部知ったうえで、色んな物や金の行き交いを監視してるってとこかなー」
金の監視...。
確かに、財閥間のやりとりには仲介者がいると聞いたことがある。
けど、私はその仲介者を一度も見たことが無い。
「昴って人、知らないか?」
「昴って、飯島昴さん?」
「ああ」
「知ってるよ!イマイチ誰かわかんなかったけど、今年の一番初めのパーティーで知り合ったんだよね」
いくつもの財閥があつまり、交流する特別なパーティーが存在する。
私はいつも強制参加なのだが、行ってすることといえば、母に連れられて、交流をもっておきたい財閥のところへ挨拶をすることぐらいなのだ。
でも、そんな私に声をかけてきた人がいた。
歳の検討がつかない顔つきに、少し長めの茶っ毛の髪の男性だった。
真っ黒なスーツに映える、明るい緑のネクタイをしていて、声をかけられたときからとても印象的だったのを覚えている。
昴さんは、目をふっと細めて、とても優しく笑う。
その表情が誰かに似ていて、いつも一瞬考えてみるのだが、イマイチ思いつかない。
「そいつが監視役の一番上だ」
「...へ?」
...監視役の一番上?
いや、まってまって。
そんな上の人が私に話しかけたりする?ていうか、壇上に立って熱く語っちゃうんじゃないの?
「監視役の存在がばれたら、どこの財閥も媚売るだろ?だから、財閥名も名前も偽名で扱われてるんだ」
「本名は笹山優だよー」
笹山、優...
ササヤマ、スグル....
ささやま...
ささやま!?
「は?!も、もしかして...」
「俺たちの親父なんだよねぇー、これがさぁー」
も、もう、ちょっとまって。
秋斗のお父様?
というか、そんな一番上の方と安易に話してよかったのだろうか。
「...わ、私、そんな人と話してよかったの...?」
「親父は私鶴のこと知ってるからな。問題ないだろ」
「そーそ。あぁ!秋ちゃんも知らないと思うんだけどさー、親父、私鶴ちゃんのこと聞いてからもう凄かったんだよー?」
朱羽さんは、朱羽さんとお父様の電話の内容を話し始めた。
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「もしもし、親父?どうしたの」
『朱羽か。少し聞きたいことがあってな』
「えーなになに?めずらしーい」
『朱羽、秋斗がどこで働いてるか知っているか?』
「えーっとねぇ...ちょっとまってね。....そうそう、葉つめ財閥だ」
『葉つめか,,,。かなり上のランクで働いてるんだな』
「そうなんだよねぇー。わりと大変みたいでさぁ。なんでも、奥さんのほうがかなり面倒な人らしくってねー」
『ほう...。ああ、葉つめと言えば、娘さんがいたな』
「そうそう!名前は葉つめ私鶴さん。あ、秋ちゃんが言ってたけど、もんのすごい美少女らしいよ!あんまり美人とかそういう概念のない秋ちゃんが言うんだから相当でしょ!」
『そうか...。葉つめ私鶴...な。見てみたいものだな』
「ねー、俺も見てみたい!あ、パーティーでみれんじゃないの?」
『そうだな。お前も来るか?』
「行きたいんだけど、いくとほかのお嬢様方がうるさいからパスするよ』
『そうか。それじゃ、どのくらいの美人か報告してやるよ』
「お、ありがたーい!そんじゃ楽しみにしてんねー」
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「あ...秋斗くーん....?」
「本当のことを言っただけだ。俺は悪くない」
「それ秋斗のビジョンでしょ!?うっそ、えぇ!?がっかりされてたらどうしよう!?」
むしろガッカリする以外ないでしょうに!!
「だーいじょうぶだよ、親父かなり喜んでたし。今日来るのも楽しみにしてるよー」
「そ、そうなんですか?」
「うん、ちなみに弟も楽しみにしてるよー。絶対口説くって張り切ってる」
口説く!?
いやその前に弟いたの!?
「中1だけどな」
「まぁまぁ、思春期なんだから」
「ただの発情期だろあれ」
次々に新しい事実が発覚して、頭がオーバーヒートしそうだ...。
「い、色々ありすぎてパンクしてしまいそうですが...お世話に、なります」
バックミラーに向けて頭を下げると、「いーよ、いーよ~」とのんきな声が降ってくる。
隣からは「気にすんな」といつもと変わらないトーンの秋斗。
10分くらい他愛のない話をしていたのだが、途中から、眠さで意識が遠のくを感じながら車に揺られた。
__1時間くらい走っただろうか。
「はーい、到着~」
陽気な声で、ふわふわとしていた意識が少しだけ現実に戻って、外を見やった。
外はもう真っ暗なはずなのに、後ろから照っている温かい光で、あたりが少し明るくなっている。
「私鶴」
ぼーっと外をみたままの私に、手を差し伸べる秋斗。
「あ、うん。ごめん」
その手に甘えて車を降りると、直後ガチャッとドアの開く音が響いた。
「あらあら、皆おかえりなさい!」
声がしたほうへ目をやると、ふわふわとしたシルエットの人物が立っていた。
逆行でイマイチ鮮明に見えないのだが、おそらく秋斗と朱羽さんのお母様だろう。
「ただいま、母さん」
「ただいまーおふくろ~」
秋斗と朱羽さんがそう答えると、お母様のシルエットがこちらへ近づいた。
「秋、元気だったみたいね!よかったわぁ。あ、そちらは私鶴さんよね?」
「あぁ」
「は、はい。葉つめ私鶴と申します。秋斗さんには大変お世話になりました」
顔を上げると、逆光だった光がいい具合に秋斗のお母様を照らした。
綺麗な目鼻立ちに、ゴールドピンクのふわふわとした髪がとても似合っている。
...朱羽さんはお母様似、なのかな。
「いいのよ~、お世話するのがお仕事なんだから~!...それより、私鶴さん」
「はい?」
突然、真剣な声音になったかと思うと、ふわりとゴールドピンクの髪が目の前に踊った。
「あの、」
そのまま、きゅっと、抱きしめられる。
「...もっと早くに助けてあげたかった。…本当に、よく頑張りました」
「あ....の...」
....どうして。
どうして、あなたは、あなたがたは。
__こんなにも、温かいの?
「う、うう...」
「泣いていいのよ~、もう頑張りすぎたのだから。あなたはもう自由なのよ」
私はもう、自由。
私の心の縛りが、解けていく。
「さあ、中へはいりましょう!お腹すいたでしょ!」
「ほんとにー、俺腹へってたおれそーなんだけど~」
「久々に普通の飯だな」
秋斗のお母様に肩を抱かれて、たくさんの光に溢れる家へ。
「...ありがとう、ございます、皆さん」
そうつぶやくと、3人はそろって、よく似た笑顔を浮かべた。




