No.11
母が、物凄く驚いた表情で、こちらを振り返る。
「ねぇ、お母様。私はどうしてこの家に縛られなければいけないのですか。私は、自分の足で、自分の人生を生きたいのです。持ち主にお世話されるお人形ではありません。学校祭の件だって、私は悪いと思っておりません。だって行きたかったんですもの。自由で、楽しい外の世界へ行って、なにが悪いのですか?!」
...私は、葉つめ私鶴という、一人の人間だから。
感情が読み取れない、話すことのできない、行動を起こすことのできない、お人形ではないのだ。
それを、お母様は理解しているの?
...まぁ、一粒も理解していないよね。
「...何を言っているの?」
「本当のことを言っているだけです」
母の目をみて、堂々と言い放つ。
すべて、本当のことだ。
けれど、母に、私の思いは届かなかった。
「藤堂、名草。私鶴を閉じ込めてしまいなさい」
__母は、怒りが頂点に達したようだ。
部屋の外で待機していた執事を呼んで、私を捕らえさせた。
「離して!!!私は何も悪くないわ!!!」
「黙りなさい。あなたは、私のお人形なの。私の言うことのみ聞いていればいいのよ。さあ、明日の顔あわせが楽しみねぇ。そうだわ、結婚式は来月にすぐしましょう!」
なに言ってるのこの人?
頭大丈夫かしら...心配になるわ。
「嫌です!!婚約者なんていらない!!!」
「うるさい子ねぇ...ふさいでしまいなさい」
母の命令で、藤堂さんが私の口に、ハンカチを押し込む。
「んんんっっっ!!!(離して!!!)んん!!(やだ!!)」
「あぁ、それと。秋斗には今月いっぱいで、分家のほうへ引き渡すことにしたわ」
...え?
いや、まてまて。
秋斗が、分家に移る?
まってよ、ねぇ。
秋斗はお咎めなしなんでしょう?
秋とはなにもしてないって言ったじゃない。
...秋斗がいなくなるの?
もう、全然意味が分からない。
******
「お食事・お飲み物は電話でお呼びください。それでは」
藤堂さんと名草さんは、申し訳なさそうに部屋を出て行った。
部屋には鍵が取り付けられたらしく、中からは開けられなくなった。
「なんなの。...意味わかんない意味わかんない意味わかんない!!!」
叫んでも、誰にも届かない。
狭い狭い、この空間では、誰にも届かない。
「ねぇ、ミッフー。秋斗どこかに行っちゃうの?ないよね?嘘だよね?」
私に抱きかかえられすぎて、へなへなになってしまったミッフー。
あたりまえだけど、なにも表情を変えてはくれない。
「...ううっ...意味わかんないよぉ...。秋斗悪くないのにっ...ないのにっ...」
秋斗が、私のそばからいなくなることが、考えられない。
私の妄想を叶えてくれるのは、秋斗だけなのに。
「うわぁぁぁああんんんん!!!やぁぁぁあああだぁぁぁあああ!!!」
信じられないほど、大きな泣き声をあげている気がする...んだけど、そうでもしないとやってられない。
...お人形じゃないから、私は涙が止まらないのだ。
怒りと、悲しさと、情けなさが入り混じって、もう何も止められない。
___知らないうちに、爪を噛み千切っていた。自分の頬を引っ掻いていた。髪を切り落としていた。
気づけば、私の体は、ボロボロだった。




