第一話
私は青年に剣を向けた。見た目は強くはなさそうだし、すぐに片付けて遺体を隠す。仕事でではないが、プランは完璧であった。
「うぇ、やっぱビンゴ? うわ~・・・声かけるんじゃなかったな・・・だが、あんたをしょっ引かないと俺の休みが無くなっちゃうわけで・・・」
そう言いながら青年は肩を竦めた。やはり警察関係の人なのだろう。私はもうそんなに有名になっているのか・・・そう思いながら私は青年に向かって走り出した。
「うわ、ちょ待てって」
「・・・・・・・・・・」
青年が武器を取らない前に私は問答無用で斬りかかる。首を狙った一撃・・・になるはずだったが、避けられた。細い路地裏なので、そう避けるのも簡単ではないはず・・・私は避けられないようにリーチを大きくするために縦方向に斬りかかる。
「っ・・・・はぁ、大人しくしてくれないってか」
すると、青年はその剣を白刃取りでキャッチする。キャッチした後、その剣を片手で持ちしっかりと握りしめられる。勿論、青年の手からは血が滲みだしていた。青年はダメージを負ってるはず・・・なので手を振り払おうと剣を出来る限り思い切りふる。私が振っても、まだ掴んでいるため傷が増していってる・・・筈
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「痛っ・・・・はぁ・・・悪いな・・・」
ドンッ!!
「ぐっ・・ぎ・・かは・・・・・・・・」
私が夢中になって剣を振っていると、青年は「片手で剣を抑えている」事に気付かず・・・青年の鉄拳が私の腹筋も割れていない無防備な腹に直撃した。横隔膜が刺激されたみたいで、呼吸も出来ないし声も出ない。私は剣を落とし・・・腹を抱えたまま四つん這いになった。相手に剣が取られた・・・そして私は動けそうにない。・・・ここで死ぬんだ・・・そう思った。しかし、簡単に殺されるわけにはいかない。私は身体を無理やり起こし低い姿勢でタックルをする。
「すまん・・・」
そう呟くと、青年はタックル潰しをして私の両腕に関節技を極めてくる。
「ぐっ・・・がっ・・・・く・・・・」
まだ呼吸も出来ないし声も出なかったため私はその青年の身体の中で、もがいた。意外とその青年筋肉質で関節技から抜け出せそうになかった。しかし、私は抜け出そうと必死に抵抗した。
「・・・・・・」
「・・・・・ぐ・・ぐっ・・・・」
青年は無言で私の両腕の関節を、だんだん強く極めると・・・私の両腕の関節を外した。呼吸が出来ないので、口から唾液があふれ出してくる。腕を動かそうにも・・・まったく動かない。青年の身体から解放され、やっと呼吸が出来るようになっても・・・もう私の身体を動かす気力がなかった。
「んじゃ、もう寝る時間だから・・・おやすみな?」
そう言って青年は私の首筋に強力な手刀を放った。衝撃を和らげられなく・・・私は気絶した。
これが私の人生最大の不運。・・・死を改めて覚悟したのだった。