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改造戦士ギゼンガー  作者: zan
第五話「限界」
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第五話・限界 後編

 反転し、スカーレットのもとへ走るギゼンガー。だが、彼の前にも残りの二人が立ちふさがってくる。

 クッ、とギゼンガーは息を漏らす。相手をしている暇などないし、二人同時に相手はできない。しかし、退くこともできない。スカーレットと『カブトムシ』、『クワガタムシ』の距離は縮まるばかりなのだ。

「……どけっ!!」

 渾身の力を込めて、ギゼンガーは目の前に立っている小さな影を振り払った。だが、その手は空を切り、直後にもう一人の男から攻撃を受けて、地面に転がされた。

「く!」

 残った二人は偽装を解き、倒れたギゼンガーに襲い掛かる。

 一人は棍棒のような触覚を二本生やし、黄色と黒に身体を塗り分けた姿だった。ギゼンガーと同じく、『蛾』を思わせる姿だったが、どことなく蜂に似ている。『ホウジャク』だ。この仲間は昆虫の中でも最も速く飛ぶグループに入っている。女かと思うほどに小柄だったのは、こちらだったらしい。小さくて、すばしこいのは厄介だ。もう一人はといえば、こちらは透明な羽を大きく横に開いたまま閉じず、やや大きくなった身体でこちらを押しつぶそうと迫ってくる。トンボ、それもかなり大きなものだ。外骨格についている色からも、『オニヤンマ』というイメージである。

 ギゼンガーは足を振り上げ、押しつぶそうとしてくる『オニヤンマ』を倒れたままで蹴り上げた。これはきれいに決まったが、その隙をついてやってきていた『ホウジャク』の飛び蹴りを食らった。ほとんど、踏み潰すような蹴りである。

 その蹴りに使われた足を、ギゼンガーは両腕でつかみこんだ。左腕はまだ瘡蓋のような天然ギプスに覆われたままだが、贅沢はいえない。思い切りその足を振り、『ホウジャク』を地面に叩きつける。

 だが、『オニヤンマ』も黙っていない。そのようなことをしているギゼンガーを横から強く蹴りつけ、痛めてくる。いつまでも寝転がっているわけにはいかない。ギゼンガーは両脚を振り上げて、ハンドスプリングで起き上がった。起き上がるついでに『オニヤンマ』に蹴りを食らわせる。

 体重の乗った蹴りにひるんだ『オニヤンマ』、そこにギゼンガーは追撃を見舞った。だらだらと戦っている暇などないのだ。右腕に毒針を仕込み、彼の腹部を殴りつけた。これはクリーンヒットとはいかず、かすめただけに終ったが、十分に毒は流し込めた。『オニヤンマ』は激痛に唸る。

 ギゼンガーは左手を振り払った。ギプスに包まれたままの硬い左手が、何かにぶち当たる。迫っていた『ホウジャク』のアゴを捕らえたのだ。さらに、彼は一歩大きく踏み込み、後ろ回し蹴りを浴びせた。その一撃を食らった『ホウジャク』は顔面を変形させながら吹っ飛んでいき、地面に倒れこむ。

 よし、これでいい。二つばかり攻撃は食らったが、このくらいですんだのなら上出来だ。

 『オニヤンマ』は毒針で動けないし、『ホウジャク』はしばらく立ち上がって来れないだろう。この間にスカーレットを助けなくてはならない。

 『カブトムシ』と『クワガタムシ』はその三本の角でスカーレットを追っている。動きはやや鈍重だが、それでもその重量とパワーはすさまじい。だが、スカーレットは未だに偽装も解かず、その本性である『ハナビラカマキリ』の姿を見せない。

「何をしてる!」

 ギゼンガーは走り、一気に『クワガタムシ』の背中に飛び掛った。

 背中のギゼンガーに気づいた『クワガタムシ』は回転し、二本の角を彼に向けた。その角に串刺しにされる!

 大慌てでギゼンガーは羽を開いた。急ブレーキだ。なんとか押し留まり、『クワガタムシ』の眼前に着地する。『クワガタムシ』はそのまま、彼に向けた二本の角で彼に突きかかる。まるで猛牛だが、ギゼンガーは右側に飛んで回避した。

「王子様登場か?」

 『カブトムシ』は嘲笑するようにそう言った。先ほど、トイレに隠れていたギゼンガーたちを発見し、声をかけてきたのはこの男のようだった。

 その声にはこたえずに、ギゼンガーは女学生姿のスカーレットの前に立った。なんでこいつを守らなければならないんだ、という疑問は彼の中にあがったが、そうしなければならないという思いは消えなかった。

「おい、なんで偽装を解かないんだ。お前だって戦えるのだろうに」

「ごめんね、ギゼンガー。もう少しだけ頑張って」

 スカーレットに戦ってくれるように促してみても、曖昧な返事があるばかりだ。

「何か企んでるのか?」

「そうね。ギゼンガー、あなたをヒーローにしてあげる」

 今度は『カブトムシ』が突っ込んできた。身体をぐっと沈めて、角を足元に食い込ませようとしている。たぶん、そのあとは一気に角を跳ね上げて、掬い投げにするつもりなのだ。

 避けるしかない!

 ギゼンガーとスカーレットは、後ろに飛んで避けた。が、その背後には何かがいる。

「待ってた!」

 『ホウジャク』だ! もう動けるようになったのか、とギゼンガーが関心する間もなく、彼はスカーレットに襲い掛かった。それを見逃しては、いけない。地面を蹴ってギゼンガーはさらに加速した。

 彼の背後に回りこむと、まるで大木を引き抜くように、まさにスカーレットを捕らえようとしていた彼を抱えあげた。『ホウジャク』は体格が小さくて、軽かったのだ。そして僅かな間もおかずに、彼を『カブトムシ』の角に向けて叩き込んだ。

「っぷ!」

 迫っていた『カブトムシ』の角には、本体の重量とパワーが乗っていた。それは軽く『ホウジャク』の身体をつらぬき、彼の口から体液を噴出させる。

「でぇ、邪魔なッ!」

 『カブトムシ』が、角に突き刺さった『ホウジャク』に気付いて角を跳ね上げた。その勢いで『ホウジャク』は角からすっぽ抜け、空高く舞ってから地面に叩きつけられる。翅を開くような余裕はなかっただろう。すでに事切れているのかもしれない。

 角を跳ね上げた『カブトムシ』は隙だらけだ。今のうちに、一撃でも叩き込みたい。ギゼンガーは『カブトムシ』に毒針をつきこもうとした。が、横からやってきた何かによって、それは阻まれた。『クワガタムシ』か。

 二本の角でギゼンガーをがっしりと挟み込む。

「とらえたぞぉ! ハハハ!」

 『クワガタムシ』の角に挟み込まれたギゼンガーは、そのまま彼の頭上に掲げ上げられた。はさまれたのは胸元の辺りで、振り上げていた右腕に毒針をもった状態だ。この毒針を打ち込みたかったが、右腕が届く範囲に外骨格の隙間がない。

「どうした、反撃もできないか!」

「くっ」

 あとほんの僅かでも腕が長ければ、『クワガタムシ』の目に毒針が打ち込めるのに。届かないのだ。左側からはさまれたために、右腕が一番、敵の体から遠い。あとほんのわずかでいいから、リーチを伸ばす方法があれば。

「おっ」

 その間にも、『カブトムシ』はスカーレットに攻撃を仕掛けている。彼女は必死に攻撃をかわしているが、いつまでももたない。

 くそ、こうなってまでも偽装を解かないのか、奴は! 俺が、俺が助けてくれるとでも思っているのか!

「さらばだ!」

 『クワガタムシ』は、ギゼンガーをはさんだまま背後に倒れこんだ。自分の体重をもプラスした、強烈なスープレックスになるのは間違いない。早く、脱出しなければ!

 この際、手段は言っていられなかった。それしか思いつかない、やるしかない!

 ギゼンガーは歯を食いしばり、最後の手段を実行した。

 直後、彼はスープレックスを食らって地面に倒れこんだ。『クワガタムシ』の体重をもプラスした強烈なものだ。

 さすがの彼も、しばらく動けない。だが、こうしている間にもスカーレットが『カブトムシ』に追われていると思えば、いつまでも倒れているわけにもいかなかった。

 左手を地面について、彼は破れた表皮から漏れ出る体液を気にする余裕もなく、立ち上がった。頭部や背中の外骨格がひび割れて、液体が漏れている。何より、右手の二の腕から先が千切れていた。

 一方、スープレックスを仕掛けた『クワガタムシ』は、激痛にのたうち回っていた。明らかに毒針を食らっている。

 つまりギゼンガーは、口で自分の右腕を千切って、思い切り左側に振ったのだ。腕の伸びる支点が『肩』から『口』になったことでわずかなリーチを埋め、『クワガタムシ』の目に毒針を刺すことができたのである。

 ふらふらだったが、ギゼンガーはもう『クワガタムシ』には構わずに『カブトムシ』に向かっていく。上半身はもうボロボロだが、それでも戦わねばならない。

「まだ、まだ戦うというのか」

「ちくしょう」

 ギゼンガーは『カブトムシ』の言葉にも悪態でしか答えられなかった。

 瞬間、背後から声が湧いた。

 振り返る。

 誰だ、何の声だ?

 そこにいるのは、下校するはずの生徒達だった。そこにある声は、ギゼンガーによく聞こえる。

「うちの生徒が襲われている!」

「なんだ、あの化物は……!」

 そうか、もう生徒達がここを通る時刻なのだ。

 ギゼンガーが負けてしまえば、おそらく『カブトムシ』たちの牙は彼らにも突きたてられるだろう。

「あいつ、あいつだけは、あの蛾みたいなやつだけはあの女の子を守っている!」

「マジかよ! 相手は四人もいるんだぞ」

「大怪我してるじゃねえか!」

 ギゼンガーたちを見守る生徒達の数は、増えていく。後から後から、そこにやってくるからだ。

「バカヤロゥどもが!」

 その様子に気付いたのか、『カブトムシ』が大声をあげた。

「こいつらだって、俺と同じ化物だぞ! その女だってなぁ!」

 声を上げている『カブトムシ』の言葉を消すようにギゼンガーは彼にとび蹴りを食らわせた。体重をかけた攻撃だったが、フラフラになっているギゼンガーにできる最大の攻撃だった。

 『カブトムシ』は吹っ飛び、痛みにのたうっている『クワガタムシ』の上に落ちた。衝撃に『クワガタムシ』は呻き、ぐったりとなる。どうやら、打ち所が悪かったらしい。

「……そうだ、俺は、俺はこいつらと同じ、化物だ! こうして戦っているのも、ただの偽善だ!」

 残った左腕を開き、ギゼンガーは叫んだ。

「俺は! ギゼンガーだからな!」

 途端、左手を覆っていたギプスがひび割れた。どろり、と内側に溜まっていた粘液が落ち、中身がぬるりと出てきた。

「治ったの」

 スカーレットが小声を発した。そうだ、治ったのだ!

 ギプスを剥ぎ取ると、真新しくきれいになった左腕が出現した。傷跡ひとつまるでなく、きれいな外骨格だ。

「ぐっ」

 『カブトムシ』が起き上がってくる。

「そうか、貴様が。お前が『ギゼンガー』か、話は聞いてたぞ。俺たちの中に、裏切り者がいるってことはな!」

 鋭く、彼はギゼンガーを指差した。

「この偽善者! 始末してやるぞ、ギゼンガー!」

 『カブトムシ』が、突撃を仕掛けてくる。彼の武器である角をこちらに向けている。その角を、ギゼンガーは治ったばかりの左腕で止めた。

「むうっ! 小癪な!」

 一度傷ついて、復活を遂げた左腕は以前よりもずっと力を増していた。『カブトムシ』の角を正面から受け止めて、互角だ。

 強引な力比べだった。ギゼンガーは渾身を力を込めて、『カブトムシ』を止めている。『カブトムシ』も全身全霊をこの攻撃に傾けてくるはずだ。

「あいつ、ギゼンガーっていうのか!」

「女の子を護ってる方か?」

「ぼ、ぼろぼろだぞ、負けるんじゃないのか?!」

「偽善者だって言ってたぞ」

 ギャラリーの声が、ギゼンガーの耳に届く。

 なんと言われようとも構うものか。自分がしていることは、世間のためにやっていることではない。正義のためになんか、戦えるものか。

 俺は、俺のためにだけ戦う!

「う、うぉぉぉ!」

 踏ん張った。ギゼンガーはここを耐え切ることだけを考えた。このまま、『カブトムシ』の角を握りつぶす勢いだ。

 だが、最後には力比べに負けた。『カブトムシ』は角を振り上げ、ギゼンガーは大きく跳ね上げられた。

「オラァ、どうだ!」

 跳ね上げたギゼンガーを追って、『カブトムシ』は飛び上がった。空中でさらに追撃をいれるつもりだ。だが、その両腕の打ち下ろすような一撃は、ギゼンガーの蹴りとかち合った。足の裏でその一撃を止められた形である。

 羽を開き、素早く着地するギゼンガー。そこに踏み潰すような蹴りを見舞う『カブトムシ』。間一髪、身を引いてそれをかわし、毒針を手にする。

 そうした激戦が繰り広げられている間に、スカーレットは下校しようとする生徒たちの方向へと逃れていた。

 彼女は、わっ、と生徒達に囲まれて、大丈夫か、と心配の言葉をかけられる。スカーレットは疲労した様子を演じ、だが、気丈にこう言い放った。

「ギゼンガーが助けてくれました。彼は、必死に戦っています。彼を応援してあげてください!」

「ああ、そうか、あいつはやっぱり正義のヒーローなんだな!」

「なんだっていい! 俺たちを助けてくれるんだ!」

 生徒達ははっきりと、『敵』と『味方』を区別した。そして何よりも、その場から逃げ出さずにギゼンガーを応援してくれというスカーレットの言葉が、聞き入れられたのだ。

「がんばれよ、ギゼンガー!」

「ギゼンガー、負けるなよ!」

 片腕となったギゼンガーのこころは、この言葉を聞いてゆらめいた。なにか、こころの奥がうずくのだ。

 『スズメバチ』と戦ったとき以上の、高ぶりを感じる。

「いい気に、なるな!」

 『カブトムシ』は角を大きく振り回した。大層な威力に、ギゼンガーは下がってそれを回避する。が、その瞬間に『カブトムシ』は踏み切って、思い切った体当たりを仕掛けてきた。当然だが、角からの突撃である。

 ギゼンガーは一瞬の判断で、前蹴りを繰り出した。突き出すような蹴りで、足の裏と『カブトムシ』の角をかち合わせる。だが、敵もその一瞬で角の角度をずらした。結果、ギゼンガーの足は跳ね除けられて、彼の腹部に角が吸い込まれていく。角で腹を突かれるのはかなりまずい。大急ぎで左手を伸ばし、なんとか角を押しとどめた。

「くそ!」

 角を振り、再び『カブトムシ』は下がった。攻めきれない苛立ちがあるようだ。

 だが、相手が一歩なりとも退いた、この今こそがチャンス。ギゼンガーはそうにらみ、一気に接近した。体中の外骨格に入った亀裂から体液が噴出すが気にしている余裕などない。

 退いた『カブトムシ』の顔面に、強烈なとび蹴りを打ち当てた。角を上げ、彼はよろめく。その角を、ギゼンガーは掴み取った。パワーアップした左腕の力で握りこみ、一気に振り上げた。

「おおおーっ!」

「逆転だ! ギゼンガーっ、やっちまえー!」

 生徒達も一気に盛り上がった。彼らの中では、正義の逆転勝ちが決まろうというところなのだろう。

「ば、ばかな!」

 角だけをつかみ、振り上げた。結果、『カブトムシ』の身体は浮き上がり、今まさに叩きつけられようとしている。

「おおおおおおおお!」

 ギゼンガーも、この一撃に渾身のパワーを込めている。

「ビートル・スタンプ!」

 強烈な一撃が、『カブトムシ』に打ち込まれた。背中から地面に振り下ろされたその一撃は、『カブトムシ』の重量もあって、舗装された校門前の道を半壊させる。同時に、そこにいた『オニヤンマ』の体の一部をも抉り取り、彼にも止めを刺す結果となっている。

「ぐはっ!」

 背中の外骨格を完全に砕かれ、『カブトムシ』は起き上がる気力を失った。ぴくぴくと痙攣し、全く戦闘意欲は感じられなくなっている。

 しかし、一方のギゼンガーも限界だった。体液を失いすぎている。おまけに右腕は欠損状態だ。彼は地面に膝と左手をつき、荒い息を整えている。もう戦えまい。

「お、終ったのか? ギゼンガー!」

 生徒達の一人が、全員を倒し終わったギゼンガーに声をかける。しかし、彼はその声に気付いてはいたが、答えることができなかった。消耗しきっている。

 無事に家まで帰ることができるのだろうか?

 それさえもギゼンガーは心配だった。ぼろぼろの彼のそばに、ふと、何者かが降り立った。ちらりと見上げてみると、いつの間にか偽装を解いて、『ハナビラカマキリ』の姿となったスカーレットがそこにいた。

「お疲れ様、ギゼンガー。これであなたはまぎれもなく、正義のヒーロー」

「くだらないことを、企んだものだな。最初から全部お前の計画だったんじゃないだろうな」

「誤解ね。思いついたのは、私が襲われてから。でもね、あなたが身を挺して私を救ってくれたことは変わりないんだよ。ありがとう」

「クッ」

 スカーレットに礼を言われるとは思っていなかったので、ギゼンガーは苦笑しかけた。

「今日は、私が家まで送ってあげる。ほんのお礼だよ」

「ああ」

 それくらいはしてもらいたい。ギゼンガーは、素直にスカーレットに抱かれた。振り返ってみると、生徒達がこの様子をじっと見詰めている。

「仲間なのか、あの白いカマキリは」

「だ、大丈夫そうじゃない? なんとなくだけど」

 仕方がなかった。ギゼンガーはなんとか左手を持ち上げると、彼らに向かって親指を立てて見せた。

 途端、彼らの声は一気に安堵の息と歓声に変わった。

「おーっ! よかった、よかった!」

「ギゼンガー! ありがとう、ありがとう」

 そんな声を聞きながら、スカーレットは羽を広げた。地面を蹴って空を飛ぶ。

 電信柱の上に立って、校門のあたりを振り返ってみると、まだ生徒達はこちらを見ていた。少しは自分も戦えばよかっただろうか、などということを、ついついスカーレットは考えてしまう。

 ギゼンガーはよそごとを考えているスカーレットの横顔を眺めていたが、結局その真意を汲むことはできない。右腕を食いちぎったことを早々と後悔しつつも、彼は白いカマキリの腕に抱かれている。

 ふたりは、それぞれに思い悩みながら、久しぶりに訪れた学校を後にした。

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