第七話・麻酔 後編
外は暗いが、炎の赤い光がビルの殺風景な部屋の中を照らし出している。
「ギゼンガー、お前はどうして『誘いに乗った』んだ? それほど若くして世の中に失望することなんて、あったのか?」
『ジガバチ』はギゼンガーに訊ねた。
ギゼンガーは訊ねられたので、構えを解かないままで答える。
「俺は……退屈だったからだ。『誘いに乗れ』ば刺激があるとにらんだ」
「ほう、それでそれは正解だったのかな」
「正解だった。ついに『亡霊』自らが『依頼』してまで俺を殺そうとしてくる。俺の嫌いな『退屈』はなくなった」
「そいつはよかったな、で、何人くらい殺したよ?」
さらり、と彼はギゼンガーに訊ねた。燃え広がる炎にいぶされながら、平然としたものだった。
「数えていない。興味の対象外だ」
「なら、教えようか。『蝶』の女、『スズメバチ』、『カマキリ』、『カミキリムシ』、『マイマイカブリ』、『クワガタムシ』、『ホウジャク』、『カブトムシ』、『オニヤンマ』……こいつらは覚えがあるだろ? 最低でも9人は殺してるさ、既に」
「何が言いたい」
「お前の退屈しのぎのためだけに、9人も死んだわけだが。こいつらがどういう思いで『誘いに乗った』のかなんて知りはしないだろ、お前も」
「ああ、知らないな」
ギゼンガーは口元に手をやった。空気がかなり劣化してきている。多少、普通の人間より耐えられるとはいうものの、長い間ここにはとどまれない。
「俺も知らない。だが、お前のような『退屈しのぎ』などという理由に比べれば、どんな理由でもたいしたものだったに違いない。いじめられていたことを無視し続けた学校に復讐するとか、そんな理由でもだ」
『ジガバチ』は足の先で地面を叩いた。少しいらいらしたような調子である。
「お前のやってることには、大義名分もない。正義もない。ただ暴れてるだけだ。それでいいのか、お前は」
「構わん」
即答だった。
「いつまでも、『亡霊』からの刺客をかわしきれるものではない! お前は自分の退屈しのぎのためだけに命も、これまでの人生も、全部捨てるつもりか、本当に」
「それでいい。これを続けていれば新たに名誉も手に入ることがわかっている。俺は、それでいいんだ」
「名誉?」
意外なギゼンガーの返答に、『ジガバチ』は戸惑ったらしい。だが、『名誉』という世俗的なことを喜んでいるこの目の前に立つ男が憎たらしくなるのにそう時間はかからなかった。
「名誉なんて、なんの役に立つ!」
彼はそう言った。ギゼンガーは何を言っても無駄だと思ったので黙っていた。
「世間にどれだけ認められていても、仕方がないだろう! こんなくだらない世界にいくら認められてもだ!」
「そうだな、確かにこんな世界に認められても無駄だ」
「ならばなぜそのようなものにこだわる」
「お前も声援を受けてみればわかる」
返答はなかった。『ジガバチ』は少し黙ってしまう。
戦っている理由など、ギゼンガーにとってもどうでもよいことだった。深く考えれば考えるだけ、無駄なことだと思っている。それにそのようなことは戦う相手と話し合ってみたところで仕方がない。
窓の外にちらりと燃え上がる火が見えて、消防車のサイレンが聞こえ始めた。
「死ぬのが怖くないのか」
「は?」
思わず、ギゼンガーはそんな声をあげてしまった。
「何を言ってる。壊れちまったのか」
「いや、俺たちは『亡霊』という未知のテクノロジーをもった存在が味方にいるってことで……ちょいと楽な気分でいられる。けど、お前たちは違うんだろう。わざわざそういう強大な力をもったところに逆らって、死ぬまで戦い続けようってことを選んだ。どうしてそういうことができるんだ」
「だから、退屈が嫌だったからだと言っただろう」
ギゼンガーの答えは同じである。彼はあまり悩まない。だが、『ジガバチ』はそれで納得しきれないらしい。
「それだけの理由で、裏切れるのか。はっきりと言ってしまえば、このようなことは緩慢な自殺だ!」
「やかましい」
顔をしかめ、ギゼンガーはこめかみの辺りに指を当てた。
「逆に訊いてやろう、お前は一体、何のために『誘いに乗った』んだ?」
「俺が?」
「そうだ、お前は何が目的で改造を受けたんだ。言ってみろ」
「何が言いたい」
『ジガバチ』は後ろで倒れているスカーレットに少しだけ目をやり、ギゼンガーに目を戻した。
「世間がくだらないと思っているからじゃないのか?」
「何を言う」
「自分を取り巻いてる環境が、少しばかりきついから、自分に合わないから、そんな理由で拗ねて、子供のように八つ当たりしようというんだろう、そうじゃないのか」
彼は答えられなかった。図星だったのかもしれない。
「もしそうだとしたら、お前が『誘いに乗った』のだって、ただのフラストレーション。俺をそうやって責めようとする資格はないんじゃないか」
「それはお前だってそうだろうが。だがな、お前はそこからさらに『俺たち』を裏切ってる。それは一体どうしてなんだ、という話なんだぞ」
「正義も、大義名分もない裏切り行為だと言って、俺を咎めようというんだな」
消防車のサイレンは近づいてきて、やがてビルの真下で止まった。放水もはじまるだろう。
「そうだ」
「あんたは世間と、この世の中を拗ねて何の罪もない人々を攻撃している。実際に攻撃しているところを見たわけではないから何とも言えないが、少なくともその計画に加担している。俺は俺に注目しない、退屈な世間が嫌いだったから、あんたたちに攻撃を加えて名誉を得る。お互い様じゃないか、これでどっちが正義だなんていう話なんてしたら、それこそ目くそ鼻くそじゃないのか」
「じゃあお前は名誉のためになら死んだっていいと思っているんだな」
「そうだな」
答えた瞬間、『ジガバチ』は恐ろしい勢いで飛び掛ってきた。
ギゼンガーはそれをとっさに後退しながら左手で防ぎ、彼の背後にまわろうとした。スカーレットを救出するためである。だが、背後をとろうとしたその行動は読まれていた。『ジガバチ』は尻を振り、麻酔針を彼に打ち込もうとしている。
それを察したギゼンガーは再びバックした。針が通り過ぎていく。
ギゼンガーと『ジガバチ』が距離をとると、同時に窓から水が飛んできた。
どうやら消防隊が放水を始めたらしい。羽が濡れるとまずいので、ギゼンガーは窓からも距離をおいた。部屋の中にはかなり燃焼ガスも溜まっているが、羽を濡らすと飛べなくなるのでまずい。鱗粉はある程度水を弾いてくれるが、消防隊の放水をまともに受けても大丈夫とは思えなかった。
「名誉を抱えて死ぬがいい!」
再び、『ジガバチ』は突撃をしかけてくる。肩からの体当たりだ。ギゼンガーは足を踏み、突撃してくる彼の肩に、自分も肩を前に出してかち合わせた。
がつ、と体重の乗った二人の肩がぶつかり合う。反動で、二人はそれぞれにはじかれた。
右肩からぶつかった『ジガバチ』は左手を振り、拳でギゼンガーをとらえようとする。しかし、ギゼンガーは左肩からぶつかったため、それに対処できない。彼の右腕は肘関節までしか再生していないのだ。
だが、ギゼンガーはよく判断して動いた。顔面に向けて繰り出されてくる『ジガバチ』の拳に対して、彼は自ら額をぶつけにかかった。頭部には外骨格はなかったが、強靭な鉢金がある。敵の左拳に頭突きでもって対抗したのだ。しかし、これは一瞬の防御には役立ったが、その後の攻撃を防ぐ手段とはならなかった。
左拳がはじかれたと見るや、『ジガバチ』は右手でギゼンガーの首元をつかみにかかる。
つかまれたら麻酔針で刺される。
しかしギゼンガーも神経に作用し、激痛を与える毒針をもっている。左手に握りこんだその毒針を、自分の首もとをつかもうとする敵の右腕に突きこもうとした。
ぶちっ、と相手の表皮を裂く音が聞こえる。うまく外骨格の間を抜けて、毒針は刺さった。
刺さったことを確認し、ギゼンガーは素早く飛びのく。『ジガバチ』もほとんど同時に麻酔針を振るっていたからだ。なんとか麻酔針を回避することに成功した。
「ぐわぁ!」
神経を直接焼かれるような激痛に苦悶の声をあげるのは『ジガバチ』である。
途端、どたどたどたと階下から足音が聞こえた。消防隊が登ってくるのだろう。中に人がいれば救助するのが彼らの仕事なのだから。
「ごほっ」
しかし、ギゼンガーもただではすんでいない。燃焼ガスの中には一酸化炭素もかなり含まれているのだ。彼も呼吸している以上、酸素を必要とする。視界が狭くなりつつあった。
「くそぉ! 畜生、畜生、畜生!」
『ジガバチ』は叫び声を上げ、毒針を打ち込まれた右腕を自ら切断した。いや、切断したというよりは力任せに自分の腕を引っこ抜いてしまったと表現するほうが適切かもしれない。
肩関節からきれいに抜けた『ジガバチ』の右腕は、赤黒い液体を吐きながら床に捨てられた。びちゃりと床に溜まった水をはねる。
足音が階段を上ってきた。
やがて防火服を着込んだ消防隊が、そこに姿を見せる。が、間の悪いことにギゼンガーは階段から離れていた。今、彼らに最も近い存在は『ジガバチ』だった。
「ギゼンガー、やってくれたな!」
彼は消防隊など気にもしていない。痛みのために気がついていないのかもしれない。
サイレンの音が耳障りだ。
赤い光が目につく。煙のにおいが邪魔だ。
『ジガバチ』は腕を突き出し、ギゼンガーに向けた。
「お前、畜生、『蛾』のくせにやってくれやがる!」
再び襲い掛かってこようとした『ジガバチ』であるが、その彼に消防士が声をかけた。
「おい君、落ち着け! 火がまわっているんだぞ、非難しなさい!」
ギゼンガーは触覚を消防士に向け、彼らがそう言っていることを把握したが、恐らく『ジガバチ』には聞こえていないだろう。
「ええ、邪魔だ、どけっ!」
『ジガバチ』は左腕を振り回し、消防士たちを吹き飛ばした。普段からそうとうに鍛えこんでいるであろう消防士をたやすく吹き飛ばすパワーが彼にはある。
「ごほっ」
ギゼンガーは吹き飛ばされる彼らを見ても哀れとは思わなかったが、折角現れた見物人が死ぬのは惜しいと思った。そこで彼らに一時退去するように言いたかったのだが、燃焼ガスが彼を咳き込ませようとしていたために声を発することができなかった。
「そりゃあ、この偽善者! これでもくらいな!」
消防士の一人を『ジガバチ』は抱え込み、彼に麻酔針を打ち込んだ。
「あっ」
当然であるが、彼は動けなくなる。『ジガバチ』の麻酔は後で目を覚まさせることなど考えられていないので非常に強力だ。その動けなくなった消防士を、まるで藁巻きのようにギゼンガー向けて投げつけてくる。
できれば避けたいところだが、避けてしまうと受身も取れない彼は顔面や頭から床、壁に叩きつけられる。と言って、ギゼンガーは彼を受け止められるのか。受け止めている隙を狙って『ジガバチ』が麻酔針を打ち込もうとしてくることは明白だ。
しかし、それでもなぜか彼を避けることができなかった。
ギゼンガーは飛んでくる消防士を左手一本でなんとか受け止める。衝撃に、背後に倒れこんでしまうが、仕方がなかった。麻酔針を打たれてまったく動けない消防士を救ったのはいいが、この隙を突いて、『ジガバチ』は襲い掛かってくるはずだった。
周囲を見回す。
しかし、『ジガバチ』はやってこない。起き上がってみると、『ジガバチ』は突っ立ったまま、自分の背後を首だけ振り返って見ていた。その目は驚愕の表情である。
彼が動けないのも道理だった。彼は、その腹部を刺されていたのである。
「動けたのか」
『ジガバチ』を刺したのは、スカーレットだった。
麻酔針を刺されて動けないはずのスカーレットが立ち上がり、鋭い右のカマで『ジガバチ』をつらぬいたのだった。だが、彼女も麻酔に抵抗して動くのに必死らしく、疲労困憊した様子が見てとれる。
「くそおおっ、お前ごときに!」
左手を振るって、スカーレットを叩き飛ばす。その一撃で、白いカマキリは吹き飛んで壁に激突、消防士たちの気絶体の上に折り重なる。
しかし『ジガバチ』の動きは見るからに悪くなっていた。かなり弱っているようだ。
「ギゼンガー!」
それでも彼は勝負をあきらめない。ギゼンガーに向けて、歩いてくる。ふらふらだった。
しかし、あと数歩というところまで歩いた途端、彼は目を見開き、足を踏みなおし、地を蹴った。
「しねぇ!」
最期の力を振り絞った攻撃だということは、ギゼンガーにもよくわかった。『ジガバチ』は自分に残された最後の力を奇襲に使うことにしたのだ。突然の速度変化についていけない相手をこれで仕留めれば相打ちとなるだろう。
だが、残念ながらその最期の攻撃も元気なときの攻撃に比べればかなり鈍いものであり、簡単にカウンターをとることができる。ギゼンガーは、全く最後まで油断しなかったのだ。
ただ彼は全力でこたえた。
飛び掛る彼を身体を開いてかわし、その後頭部を左手でつかみこんだ。そして彼の突進の勢いにプラスし、彼の顔面を力いっぱい壁に向かって押し込んだ。
「フェイス・スタンプ!」
強烈な火花が散って、砕けたのは『ジガバチ』か、壁か。衝撃に小さなビルは震えた。コンクリートの壁が半壊し、『ジガバチ』の顔面はそこへ埋め込まれる。
ギゼンガーが手を離すと同時に、敵の身体はずるずると重力にひかれて崩れ落ちていった。放水によってできた水溜りに、彼は沈んでいく。
「ああ、ああ、あんた、何者なんだ」
背後から小さな声が聞こえる。
どうやら意識を保った消防士がいたらしい。
「俺はギゼンガー。別に正義の味方じゃない」
彼の問いに答えながら、ギゼンガーはスカーレットの身体を探した。消防士の体の上に倒れたことが幸いしたか、あまり深い傷は負っていないらしく、まだ意識もあるようだった。
「一体なんなんだ、あのバケモノみたいなやつは。ここで何があったんだ?!」
ギゼンガーは答えられなかった。スカーレットを抱えあげて、早々にそこを立ち去りたかった。しかし、その質問に気付いたスカーレットはギゼンガーに抱かれながらもそれに答える。
「彼は、正義のヒーロー。目の前にああいう悪の改造人間がいたら、きっと立ち向かってくれる」
「おい」
勝手に正義のヒーローにされて、ギゼンガーは眉を寄せる。しかし、スカーレットがそのくらいの抗議でやめてくれるはずもなかった。
「事実だよ。消防士さん、このギゼンガーはみんなを救ってくれる、ヒーローだよ。……邪険にしないであげて、応援してあげて」
このカマキリの口を塞ぐのは無理だと思ったギゼンガーは、これ以上余計なことを言われる前に立ち去ることにした。窓から入ってくる水を慎重に見て、できるだけ羽を濡らさないようにして夜空に飛び立つ。
二人分の体重を空に浮かすのはしんどい。
地上から追跡される心配もあったので、ギゼンガーは適当なビルの屋上にひとまず降りて羽を休めた。
スカーレットはまだ体の自由がもどらないらしく、ギゼンガーになされるがままだった。しかし、本物の女学生ならともかく、カマキリ一匹を自由に出来たところでどうにもしようがない。
「お前も言いたい放題言ってくれるもんだな」
ギゼンガーは足を崩して座り、隣に寝転がっているスカーレットにそう言った。が、いつもの減らず口は帰ってこず、神妙な口調で彼女はこう答えた。
「ギゼンガー、あれは、私も覚悟したからそう言ったんだよ」
「覚悟?」
妙な言葉を使うスカーレットに、問い返してしまう。
「私、あなたのことを見てきたけれど。昼間に出かけてあのハチと戦って、結局負けたんだけど。それでもう、死んだなって思ったんだよ」
「あぁ」
スカーレットも戦ったのに、相手にかすり傷も与えられなかったのだろうか。いや、それなりに戦ったが、敵は傷の回復を夜まで待っていたのかもしれない。ギゼンガーはそう思うことにした。
「でも、死んでなかったね私」
「おめでとう。『ジガバチ』でよかったな、あれは麻酔針だしな」
「違う!」
大きな声をだされて、ギゼンガーは驚いた。スカーレットを見やると、真剣な表情でこちらを見上げている。
「ギゼンガー、あなたが助けに来てくれたから」
「助けに、ねぇ」
「どうして私を助けてくれたの、敵だって言ってたのに」
そう言われても、特に理由はなかった。ただ、なんとなく仲間意識がはたらいた。帰ってこないので心配になった。
色々と返答は考え付いたが、そのどれもが違うような気がする。嘘は言いたくないのでギゼンガーはこう返答した。
「よくわからないが、お前のことが心配になったから探しに出た……それだけだ」
「私のこと、仲間だって思ってくれたの」
「多分な」
ずるずると腕を引き摺り、スカーレットは上体を起こした。無理をしている。
「ギゼンガー」
「どうした」
「私も、裏切る。あなたと一緒に戦おうと思う」
「覚悟って、それのことか」
スカーレットは頷いて答えた。レッドアイの言う、破滅への道に足を入れることになる。
「どうしてそういう気持ちになったんだ?」
「たぶん、あなたが誰かに拉致されてしまったら、私、助けに行くと思う。ギゼンガー、私があそこで倒れたまま、目を開いて、そこにあなたが見えたとき、どんな気持ちになったかわかるかな」
「わからん」
ギゼンガーは思いつめたような質問を、ばっさりと切って捨てた。しかし、スカーレットの情熱は冷めない。
「私を心配して、助けに来てくれるような人。生まれて初めて知ったんだよ」
「俺は王子様じゃない。退屈が嫌いなだけで世間を壊そうとしたただのおかしい奴だ」
スカーレットはギゼンガーの隣に座っている格好だった。その目はギゼンガーを見つめている。
「ギゼンガー、握手しない」
「握手?」
少々突飛な提案に、戸惑う。
「ともに戦おう、っていう握手。それと、友情のね」
「わかった」
ギゼンガーは左手を差し出した。スカーレットは最初右手を出していたが、慌てて左手にかえる。その握手はぎこちなかったが、堅いものだった。
「よろしく……私の最初の友達」
一瞬、スカーレットがどうして『誘いに乗った』のか気になった。
だが、いつかは話してくれるだろうと思ったので、ギゼンガーはそれを訊くのはやめた。握手はほどけず、まだ握られたままである。
月明かりが蛾とカマキリの奇妙な友情をうつしだしていた。




