前世騎士だった少女04
数日後、俺、海紫、美紀の3人はここいつも笑顔なネズミの生息する遊園地ことデスニーCにきていた。
「てか何で前田までいるの?おい、神川俺は何も聞いていないぞ?」
小声で海紫が耳打ちしてくる。
「不服か?」
「いや、そういうわけではないんだけどさ…」
実はこいつの言いたいことは分かっていたりする。多分こいつ俺に惚れたな。
…自分で言ってて気色悪いぜ…
だけど俺は友達としてこいつと仲良くなりたい。
だからストッパーとして美紀も連れてきた。
告白を断った後って気まずいからな。
「んでんで、まずどっからいく?」
打って変わって美紀は大変はしゃいでいる。俺はデスニーCっていうか遊園地にくること自体初めてなのだがそんなに面白い場所なのだろうか。
「まずはタラーオブザテリーあたりでいいんじゃない?」
海紫が提案する。
「なんだよそれ。」
「面白いよ。エレベーターみたいなとこにみんなで乗って上まで上がるとヒューって落ちるの。」
「それ完璧事故じゃん!!」
「いや、わざとだから」
「まさかの確信犯!?」
「中谷さー、あんた説明下手。愛華も大丈夫だから。ただエレベーターみたいなとこに椅子があって、それに座って高い所から低い所へエレベーターが高速で移動するのを楽しむって趣向のアトラクションだし。ちゃんと意図したものだし安全だから。」
ああ、なんだそういうことか。
てか海紫のは説明になってないんじゃないか?
あ、忘れてた。こいつはバカだったんだ。ならしょうがない。
「んじゃ早速列ぼうよ。」
そう海紫が言って歩き出し、俺と美紀も後に続く。
数分歩いてすぐに目的地へはついた、が…
「なんじゃこりゃ…」
思わず俺は心の声を漏らした。
何故なら目の前にあるのはとてつもなく長い人の列。
列の先は不気味な城のような所の中に入っているようだ。
「ここに列ぶんだよ。あ~、ちょっと混んでるかな。」
「ちょっとじゃねえだろ!!てかここに列ぶのかよ!?」
「そうだよ、ここに列ばなきゃ入れないし。それとこのデスニーCが本当に混んでる時はこんなもんじゃないですよ。」
隣で美紀が困惑している俺をにやにやと見ながら説明してくれる。
こいつは現世慣れしていない俺を見るのがなぜだかは知らないが好きらしい。
だから説明する時はいつも楽しそうだ。
そのまま列の流れに従って歩くこと数十分。
ようやく列の先へたどり着いた。
「前からあと~名様どうぞー」
と切れ目を仕切っているみたいだ。
そんな時海紫が小さく、だが俺たちにはしっかり聞こえる声で呟いた。
「…今さらながらに思い出したんだけどさ、俺、高所恐怖症だわ。」
「「バカだ。」」
二人の声が重なる。
乗っていない俺でも分かる。このアトラクションは絶対高い所へいくと。
なのに一番最初にここへこようと言ったのは海紫。全く何を考えているんだか。
「悪い、マジで吐くかもしれん。」
「おいおい勘弁してくれよ?」
前で仕切っている店員さんがまた人を入れ始めた。
そして、俺たちもその流れに沿ってエレベーター内に入った。
「3席空いてんのは後ろのはしっこだけみたいだね。」
美紀はそういい、はしから3番目に座った。それをみた海紫がはしに行き、俺は二人に挟まれるような形になった。
「楽しみ~。」
右に座っている美紀はとても楽しそうだ。
「………」
対して左に座っている海紫は無言、無表情、いやこの世の全てを諦めたような顔と言った方が正しい顔で右手にエチケット袋をしっかり握ってシートベルトをつけている。
俺も美紀もつけ、エレベーター内全員がつけた時点で前のスクリーンで映像が始まった。
その間も海紫はずっとエチケット袋をお守りよりも大事そうに強く握っていた。
「では生き残ってください。」
そんなセリフとてもにエレベーターは突然動き始めた。
その瞬間
「生き残ってじゃないよっ、誰か止めろ。ひぃ…お助けを!!」
そばの壁をつよく握りながら海紫が騒ぐ。正直うるさいのだが、見ていて面白いので放っておこう。
海紫は恐怖のあまりにでてきた鼻水をふこうとポケットからちり紙をだし、鼻をかみだした。
ティッシュ2枚目をだし、一度かんだ所でそれは起きた。
上がり続けていたエレベーターはとまり、ガラス越しにデスニーCを見れるように前の扉が開いたのだ。
美紀いわく落ちる合図らしいのだが、その高い位置からの景色は誰かさんのリバースの合図にもなった。
誰かさんはかみかけのティッシュを膝に置き、エチケット袋を自分の口に押し当てた。
直後。
「うおおぉぉぉぉっ…!!」
エレベーターは落下を始め、誰かさんの胃袋の内容物は上昇を始めた。
「おおおぉぉぉ…うェぇ…!!」
「ぷぷっ、中谷カッコ悪~」
美紀が笑いはじめ、つられて俺も思わず笑う。
ああ、これが『今』を精一杯楽しんでるってことかと実感させられる。
海紫の膝の上のティシュも笑っているかのように空中で舞った。
一度下に落ちたエレベーターは一旦止まる。
すると空中を舞っていたティシュは勢いを失い、下に落ちてきた。そして、その真下にいたのは俺。
「うおおぉぉぉぉっ…!!」
楽しかった『今』は一転。必死に避けようと体を前後左右へくねらせた。がしかし、鼻をかんだティシュは頭の上に…
「ぎゃーっ…!!」
エレベーターはまたしても上昇を始める。
するとその拍子に揺れたティシュは頭からおち、運悪く「ふぁさり」と後ろえりに入った。
バカな男子と女子な男子の声が響く
「「うおおぉぉぉぉっ…!!」」
美紀は何が起こったのか分からず「え?え?」とこちらをみてくるが関係ない。
俺たちは叫び続ける。
「「シートベルトを外してくれえっ!!」…うェぇ…」
ひどい目にあった…
タラーオブザテリーの感想で初めにでるのはその言葉だ。
途中撮られた写真なんか一人はゲロ吐いてるし一人は後ろえりに手を伸ばして必死こいてるしで酷い有り様だった。
「次はどこ行く~?」
現在元気なのは美紀だけだ。
「叫びすぎた…とりあえず何か飲み物が欲しいな。」
「俺は休憩所に…」
「自販機ならあそこにあるよ~。」
海紫を完全にスルーして美紀は近くの自動販売機を指さす。
ゆるりゆるりと3人はそこへ移動し、各自飲み物を買う。
俺が買ったのはただのお茶。
喉が渇いたときは一番適しているのはやはりお茶だろう。
「っぐ、んぐ、んぐ…ぷはぁ…」
生き返るな~!緑茶は東洋の作り出した最高の品だな。
「んで、結局次はどこいくの~?」
「俺は休憩所に…」
「俺はこのジェットコースターに乗ってみたいな。」
「うへぇ…高いとこはもう勘弁…」
「じゃあ決定だね!」
やめてーと海紫は懇願しるが俺も美紀も一致団結しそこら辺は無視。
しばらくして俺たちはジェットコースターにたどり着いた。
「ここはこのデスニーC内一番の落下する高さと速さを誇ります。」
そのまま列び、少しするとそんなアナウンスが聴こえた。
アナウンスを聴いた途端、海紫は顔を青くして列からでようとしたがしっかりと襟をつかみ列に列ばせる。
おいおい、客寄せのアナウンスが客を追い出そうとしてますよ。
やがて順番は近づいてくる。
「嫌だなー。乗りたくないなー。吐きたくないなー。」
海紫はずっと異議を唱えているが俺たち二人にはことごとく無視される。
「乗って何の得があるんだよー。胃が洗浄されるだけだよー。」
「可愛い可愛い愛華ちゃんと手がつなげるっ!!」
おいおい、美紀。あまり不吉なことを言わないでくれ。俺は男だ。
「な、バカなこといってんじゃねーよ!!付き合ってもいない女子にそんなことできるわけないだろ!!」
いいぞ海紫そのまま押し切ってしまえ!
「でも、本当は好きなんでしょー?」
お前はなんなんだっ!?
ストッパーの役割を全くはたしていないぞ!?むしろアクセルになってるから!!
「…っ!?は、こんな奴好きじゃねえし!?まず俺の好みじゃねえよ!!」
なんかそれもそれでムカつく言い方だな。俺は男だけど体ははっきり言って美少女だぞ。
…いけない、俺は何を言っているんだか…
「えー?こんなに可愛い子なのに?興味0はありえないでしょ。」
「興味0だから。全然可愛くないから!!」
プチッ。
俺が可愛くない?当たり前だ。俺は男。可愛いなんて言われたくもない。
だがなぜか頭にきちまったな。
「ちょっ、中谷!あんた冗談でも女の子の前で…」
「良いだろう!上等だ中谷!!お前が俺を可愛いと思えるようにしてやる。」
そのまま俺は海紫の左手を両手で握る。
なめるなよ、伊達に16年間この体とつき合ってはいないからな。
「さっ、行こっ。海紫っ!!」
「なっ!?」
焦ってる、焦ってる。
ざまぁみたかバーカ。
「あ、その…おぅ…」
バカは俺だったーッ!!
何自分からアクセル踏んでんだよ、俺。
危ねえ…もう少しでアクセルとブレーキを踏み間違えて衝突するとこだった…ふぅ…
「おやおや?お熱いね~二人とも。そんな君たちには前の二席を譲ってあげようっ!!」
みると仕切り用のロープを外されて中に入った客たちは思い思いの席に腰を下ろしていたのだが一番前(しかもこのジェットコースターは一組二席ずつだ)が空いていた。
ズドォーンッッッ!!
完全衝突。例えるならギリギリでブレーキを踏んだドライバーの隣の助手席から足を伸ばしてアクセルを踏まれた感じ。
もはやただの衝突ではなく、衝突したあと爆発まで起こり跡形もなくなってしまったような感じだ。
前田美紀ぃぃィィッッ!!
俺は加害者の名前を心のなかで持てる限りの憎しみと悪意を込めて叫び続けた。




