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第二十四話 久しぶりの帰省

 塔の上、アーティは早速試し撃ちをしようと魔法書を開き、教わった詠唱を唱え始めた。


「偉大なる神よ、我は求め訴えん。汚れなき神の光を照らし、非力なこの身に力を与えたまえ。閉じられた魔法よ、今解放せよ!」


 左手を高く上げ、空に向けてアーティは魔法を放った。光の粒子が一点に集中し、眩い光が周囲に広がる。直後、耳を擘くほどのものすごい爆発音が響き渡り、この魔法の威力を把握する。アーティ以外の三人は唖然となっていた。


「この魔法、さっきの祭壇のある広間で発動してたらかなりやばかったんじゃないかな。確実にこの塔を破壊して、屍になってたかもね」


 そんな話を聞き、ウィルは青くなっていく。アーティは構わず話し続ける。


「あの女の計画の推測だけど、フィオナを北の塔へ幽閉する。ウィルは帰れず魔物の餌になるか、あるいは城に戻るための転移魔法に望みをかけて魔法書発動させて大爆発に巻き込まれお陀仏、だったかもしれないね。防げてほんと良かったよ」


「多分だけど、威力が凄かったのはアーティ自身の魔力の大きさも関係しているわね。あの強大な爆発魔法、魔王が使ったのを覚えているわ」


「ア、アーティが言ってた魔王より強いっていうの、あながち嘘じゃないのかも」


「だからそれ嘘じゃないよー。なーんて、魔王は見たことないけど。あ、なんだかさっきの上級爆発魔法今なら私できそうかも。魔法書なくても使えるようになった気がする」


「えっ、アーティ?」

「ま、まさかまた魔法撃つの?」


 フィオナとメーリックの言葉を聞かずにアーティは再度左手を空に向け、今度は魔法書なしでいつもの様に魔法を発動させた。


「解き放つ天の雷光一閃、大いなる轟きを、最大電撃魔法発動!」


 光球が浮かび上がると激しい稲妻が四方八方へ乱れ飛ぶ。アーティが発動した魔法は雷属性の上級魔法であった。


「あれー、なんか違ったねー。ってか森の中の魔物の数一気に減らしちゃったみたい」


 先ほど試し撃ちをした魔法とは異なるものを発動させてしまったアーティ。この魔法も、森を住処としていた魔物や魔獣たちを塔の上から撃ち倒してしまえる程、威力が強力であった。


「アーティ、今のは勇者しか使えない魔法よ。しかも上級の。どうして使えるのかしら、不思議ね」


 フィオナはびっくりしながらも、冷静に分析をする。

 

「えっ、ウソ、そうなの? 何かできちゃったんだけど。これってまずいことなのかな?」


「まずいかどうかは分からない。ただ私は、願わくばその魔法が使われる機会が来ないことを祈るわ」


 アーティの問いかけにフィオナは小声で答えた。誰も何も言えずに沈黙が流れる。


 ――そっか、もしかしたらユーフィルが使ってたんだ。魔王を倒した今、勇者のみが使えるこの魔法は必要ない。フィオナはそう言いたいんだね。


「さーって、ここでやることはもう終わったし家に帰ろうか。忘れ物ないよね。本物の転移魔法を見せてあげる。皆、私にくっついてね」


 転移魔法は自分が一度訪れた場所へ飛んで移動できる魔法である。習得には適性と高度な魔力操作能力を必要とする。使い手は今は少ないことを師匠に聞いていた。容易に使いこなせるまで移動中落下したり、違う場所へ行ったりと習得の難しさをアーティは思い出す。


 アーティは全員が自分に掴まっていることを確認すると転移魔法を発動させた。





「みんなー、着いたよー」

「ア、アーティ、ここって?」


 転移魔法の浮遊感が終わり、着地した場所は木々に囲まれた一軒家の庭先だった。


「家に帰るって言った通り、私の家だよ。城には明日行くとして、フィオナは自分ちに帰る? おばさんとしばらく会えてなかったでしょ」


「そうしようかな。うん、そうする」


「ウィルはー、フィオナがセレスと話終わるまでは聖教会へ行かない方がいいね。それまでフィオナの家にいてもらって大丈夫かな。私も後でおばさんに会いにいくから」


「そうね、じゃあ行きましょう。またね、アーティ、メーリック」


 フィオナはウィルと一緒に自宅へと歩いていった。


「メーリック泊まっていくでしょ」

「えっ、あ、いいの?」


「うん、ほんと何もないけどね。ここには私の師匠と弟が住んでるんだよ。弟はしばらく帰ってこれないけどね。さ、入って入って」


 家の鍵はここの住人の魔力でのみ開くようになっており、アーティは慣れた手つきで玄関のドアを開け中に入る。メーリックも続けて入っていく。


「お、お邪魔しまーす」


「ただいまー、師匠ー、いるー? あ、水場とか好きに使って良いからねー。メーリックの休む部屋は2階の階段上がってすぐ右の部屋になるよ。私の部屋は隣なんだ。ゆっくりしてってー。師匠ー、いないのー? 出かけてんのかなー。今お茶出すねー。座っててー」


 師匠のサーブルを探しながら台所でお湯を沸かし始めるアーティ。メーリックは荷物を置き、お茶の準備を手伝う。


「えー、師匠旅に出てるのー!?」


 アーティは自分とサーブルの予定が書かれてある壁にかけられた伝言板を見て声をあげた。


「もー、師匠に相談したいこといっぱいあるのになー。あ、でも出かけた日にちから逆算すると、帰ってくるのは後三日後くらいかー。しょーがない、待つことにしますかね」


「ア、アーティ、お茶入れたよー」

「わわっ、お客様にお茶入れさせるなんて、ごめーん。今いくねー」


 メーリックはテーブルへお茶を持っていき、椅子に腰掛けた。何もないと言っていたが写真が飾られていたり、可愛らしい小物が置いてある。家具の素材や色味も落ち着ける空間を作り出している。


「お茶ありがとねー。これお茶請け。美味しいから食べて食べて。うちの食料庫は師匠が時止めの魔法使ってるから味とかは大丈夫だよ」


 アーティは焼き菓子やチョコレートを乗せた皿をメーリックに進める。メーリックはチョコレートを口に入れると美味しさで満たされていった。


「はー、あったかいお茶美味しー。次の旅にはお気に入りの茶葉持って行こーっと。」


「ア、アーティまたどこか旅に行くの? 次の旅って?」


「あー、うん。ちょっと魔王城までね。すぐにではないけど」

「ええっ!? ま、魔王城!? な、何しに行くの!?」


 驚いているメーリックにアーティは話す。魔王城へは勇者である弟を迎えに行くことを。その旅には親友である聖女のフィオナも一緒ということも伝える。


「その前に片付けとかなきゃいけない問題があるんだよねー。だから明日はフィオナと城に行くよ。メーリックはこれからどうするの?」


 メーリックはアーティからの問いに俯いてしまう。だが、両手で持っているカップをぎゅっと握りしめると、顔を上げてアーティを見る。


「じ、自分もアーティたちの旅に同行させてもらえないかな?」


「危険な旅だよ。今までよりも、ずっと。そもそも魔王城へ行くのは自分の身内のことだからなんだし。何か旅に出る目的があるの?」


「じ、実は上級職を目指しているの! 今は全然まだまだ能力もレベルも満たしてないけど、いろんな経験を積んで、レベルをもっと上げる必要があるんだ。そ、それと単純に仲間と旅がしてみたいって思って……。だ、駄目かなこんな理由じゃ?」


 耳まで真っ赤になりながらもメーリックは自分の思いを話した。理由を聞き、アーティは身を乗り出し目を輝かせる。


「いいと思うよ! 仲間と旅したいってメーリックも思ってたんだね! 私もなんだよ! それなら行こう行こう! やっぱり一回は仲間と共に旅に出るってことしてみないとねー」


「ほ、ほんとにいいの?」


「もちろん! メーリックの夢も応援するよー!」


 良かったーっとホッとしたメーリックはカップのお茶をぐいっと一気に飲み干す。仲間と旅をするということが純粋に嬉しくて上機嫌なアーティだった。





 お茶の後順番に湯浴みをした二人は、今後の予定を伝える為フィオナの家に向かっていた。辺りは日が暮れ始め薄暗くなっている。


 アーティの予定として、師匠と話をしたいので魔王城へは師匠が帰ってきてからとなった。出発は4日後。その前に明日フィオナと城へ出向き騎士団長ワイアット、大司祭セレスへ話を聞きに行く。

 メーリックは出発日までに一旦住居へ戻り旅に出る為、諸々の準備をしてくるとのこと。これまで北区の教会の貸家に住んでおり、北の傭兵団へ通って仕事をしていた。旅に出る前に各所へ挨拶まわりをしてくるらしい。北の傭兵団へも改めて挨拶に行くがアーティも一緒にどうかと誘うも、別日に行くと言われる。


 アーティ宅から歩いて数分のフィオナの自宅ではドアの前に来ると美味しそうな匂いがしてきた。ノックをするとフィオナが出てくる。湯浴み後のようで顔が火照っており髪も少ししっとりしていた。


「あ、いらっしゃい。待ってたわ。二人とも夕ご飯食べてってね。おかーさーん、アーティたち来たよー」


 アーティはフィオナに手土産の焼き菓子を渡す。家の中に招かれるとテーブルの上には豪勢な料理が並んでいた。ウィルが食器を運ぶ手伝いをしている。フィオナ母は奥から出てくると娘に会えたことでアーティに何度もお礼を言ってきた。


 その後はフィオナ母が作った美味しい夕食を頂き、アーティはフィオナへ今後の予定を伝え、明日城へ行く約束をしメーリックと自宅へ戻っていった。

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