カメラ越しの攻防戦 #6
実家から戻って数日が経ったある日、ふと思った。
「……ハチ、どうやって家を出たんだろう?」
鍵は閉めていた。窓もちゃんと確認した。まさかとは思うが、くちばしでガラスを割ったとか……?
「いやいや、それはさすがにない……よね?」
だが、彼ならあり得なくもないという、妙な信頼と警戒心が胸に浮かぶ。あのときの“お留守番失敗事件”は、ただの偶然じゃない。ハチの意志が、あの日の脱走を可能にしたのだ。
「よし、次は対策しておこう。」
私はネットで評価の良いペット用カメラを購入し、玄関とリビングに設置した。スマホのアプリと連動させて、いつでも様子が確認できるように設定する。
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その日の午後、私は買い出しのためにスーパーへ出かけた。
買い物袋を手に、ベンチで一息つきながらスマホを取り出す。
「カメラ、ちゃんと動いてるかな……?」
アプリを起動し、ライブ映像を開くと——
画面いっぱいに、ハチの顔が映っていた。
無表情で、真正面からカメラをガン見している。
「うわっっっ!!!」
私は思わずスーパーのベンチで大声を上げてしまった。
数人の買い物客がこちらをチラリと見た。顔が一気に熱くなり、私は慌ててスマホを閉じ、買い物袋を握り直すと、足早にその場を立ち去った。
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帰宅後、玄関を開けると、ハチはまるで何事もなかったかのように、いつもの場所に静かに座っていた。
「……あれ、普通に戻ってるし。」
まるで「何のこと?」と言わんばかりの無表情でこちらを見てくる。だが、あのカメラ越しの迫力を私は忘れない。
「もしかして、カメラ見てたのバレてた?……いや、わざとでしょ、あれ。」
私が外出するたびに気になって仕方なくなったあの事件以来、ハチはどこか余裕を見せているようだった。
これはもしかすると、“この前のお留守番の仕返し”だったのかもしれない。
私は溜め息をひとつつきながら、心の中でつぶやいた。
「もう、あんたってば……やっぱりただ者じゃないな。」




