スイカ割り大作戦 #10
夏の昼下がり。庭のセミが元気よく鳴きはじめると、縁側に座っていた私は、冷たい麦茶を飲みながらぼんやりとしていた。
そのとき、玄関のチャイムが鳴った。
「はーい!」
玄関を開けると、隣のおばあちゃんがニコニコ顔で立っていた。手押しカートの上には、なんとも立派なスイカが一玉。
「うちの畑でとれたんだよ。ユキちゃんとハチちゃんで、よかったら食べておくれ」
「えーっ、こんなに大きなスイカを!?ありがとうございますっ!」
おばあちゃんは「若いもんは夏にスイカが一番だよ」と笑いながら、去っていった。
私はさっそくスイカを抱えて縁側に戻り、ハチの前にどーんと置いた。
「ハチ、見て見て!スイカだよス・イ・カ!せっかくだからさ、スイカ割りしよう!」
ハチは、いつものように全くの無表情で私を見つめている。
「……あ、もしかしてスイカ知らない? いいから、スイカ割りっていう夏の行事なんだよ!」
目隠し用のタオルを引き出しから持ってきて、ハチの大きな頭にぐるぐる巻きつける。
当然ながら、ハチはその場からまったく動かない。
「……前に一歩進んで……そっちじゃないってば!」
私は一人で盛り上がりながら誘導しようとするも、ハチは1ミリも動かず、まるで置物。
「ちょっとー!ゲームにならないよぉ……!」
結局、スイカ割りの進行役は早々に断念。
棒を持った私は、目隠しもせず、普通にスイカを——
「えいっ!」
パカーンッ!
スイカが綺麗に割れると、あま〜い香りが一気に広がった。
「わぁ、真っ赤でおいしそう……!」
私は一口食べてから、割ったスイカをそのまま冷蔵庫に入れ、少し冷やすことにした。
夕方。少し涼しくなった風が吹き抜ける縁側で、冷やしたスイカをハーフカットのまま取り出す。
氷水でキンと冷えた果肉は、見ているだけで涼しくなる。
ハチは、いつの間にか私の隣に座っていた。
「ほら、ハチも食べよ。今日のスイカは特別だよ」
私はスプーンですくったスイカを差し出す。
ハチは無言のまま、ゆっくりとくちばしを伸ばし、パクリ。
「……おいしい?」
何も返ってこないけど、くちばしの動きが止まらない。どうやら気に入ったらしい。
私たちは、風鈴の音と夕風に包まれながら、夏の味をじっくりと楽しんだ。
スイカ割りは残念ながら不発だったけど。




