表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/51

新生活(後編)一部削除

俺がここに来る事になったとある噂、それは廃村となった村でかつて食人文化があったというものだ。

かつて、村では日照りによる影響で食べ物を得られない期間があった。

食うに困った村人達は周辺の村や町に助けを求めたが、それは他の場所でも同じ。

村人達は自分でなんとかしなければならず、出来る限りの手を尽くした。

暑さに強い作物の育成や干し肉の作成等、少しでも長く生きるために出来る事はやったのだ。

だが、日照りの前には無意味だった。

村人達は藁にも縋る思いで神にお願いするが、日照りが止む事はなく。

飢餓感に苦しんだ村人達は耐えかね、ついに禁忌を犯す。

初めての食人は日照りによる死者を喰らった事から始まった。

空腹感がある中で食べた人の味とはいったい、どれ程の美味であったか。

当時を知らない俺では想像もつかない味であろう。

人というのは一度罪を犯してしまえば、罪悪感が軽減する傾向にある。

吹っ切れると表現した方が良いだろう。

それが同時に多数、それも仲間達と一緒だったのならその罪悪感は一瞬で無くなった筈だ。

罪を、禁忌を犯した村人達は亡くなった者から食べ、時たま訪れる旅人さえ喰らい始めたという。

気付けば農村として栄えた村は、人を喰らい続ける内に血に濡れた村へと変わり果てた。

もはや人とさえ呼べなくなった村人達は、国が差し向けた軍によりその生涯を終えたという。

平成までいた村人達はその後に住み着いただけであり、過去の村人達と関係のない者達であったそうだ。

その話からなぜ神社へと来る事に至ったか、それは―――


「――っと、ここが一番下か」


考え事をしている内に一番下へと辿り着く。

そこは奥に向かって一直線に伸びた通路と、その途中に幾つもの部屋が存在する地下室であった。

おどろおどろしい場所かと予想していたが、そんな雰囲気ではない。

薄暗い地下と言った感じで、それ以上でもそれ以下でもない。

拍子抜けしてしまうが、こういう地下にはお宝が眠っているのが相場というもの。

開かない金庫しかり、埋蔵金しかり、誰も見たことが探したことがないというのは可能性の塊だ。

トレジャーハンターとして興奮しない訳がない。

意気揚々と地下を進んで行く。

歩きながら改めて便利だと、獣人の体に感嘆する。

明かり一つないというのに俺の目はハッキリと周囲の様子を把握できた。

やや薄暗いとはいえ、昼と差程変わらずに見えるというのはそれだけで凄い。

お陰で手が塞がる事もなく、自由に探索が出来る。

ただ、この便利さに慣れるのは怖いと思う。

人では出来ない事が出来てしまうこの肉体に慣れてしまえば、本当の意味で人では無くなる気がするからだ。

もはや人ではないが、せめて心だけでも人でありたいと願う。


(たとえそれが虚しい抵抗だとしても、な)


決意を新たにしたタイミングで最初の部屋へと辿り着く。

部屋の入り口に扉はなく、外から中の様子が伺えた。

パッと見た感じ、木製の棚があるだけで何も無い部屋と言った感じだ。

物がある訳でも、埃がある訳でもないただの部屋。

地下室にある事を除けば、普通の部屋なのだ。

だが、おかしい。

ここに来る前、地下へと続く扉には開けられた形跡がなかった。

初めて開けた際にはガタついて中々開けなかったのを覚えている。

少なくともここ数年は誰も入っていない筈だ。

では、何故綺麗なのか。

まるでこの空間だけ時が止まったような不気味さがあった。

早く戻った方が良いのではないか、そう考えたタイミングで――


「ひっ!」


ガタッと何処からか音が聞こえて来る。

思わず悲鳴を上げ、音のした方へと視線を向けた。

だが、そこには暗い闇が広がるばかりで音の正体は不明。

言い知れぬ恐怖が体を襲う。

トレジャーハンターなどと言ってられる状況じゃない。

今すぐ逃げるべきだ。

なのに、逃げる事は、体を動かす事が出来ない。

行かなければという強い衝動に心が侵食される。

明らかにおかしい状況に、今になってようやっと来るべきではなかったと気付く。


(あの時の二の舞じゃないか!)


母様と初めて会った時の事を思い出す。

状況はその時に酷似し、しかし、それ以上に不気味だった。

脳に囁き掛ける声が聞こえて来るのだ。


――腹が空いた


―――飯の匂いだ


――――食べたい


そんな声が音が鳴ってからずっと聞こえて来る。

頭がおかしくなりそうだ。

助けて欲しい、誰かお願い、と助けを求める。

助けてくれるのなら誰でも良かった。

だが、何故だろう。

真っ先に思い浮かべたのは母様の姿だった。


(助けて、母様……!)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ